loose drawing room
これまでと違ってすこし騒がしい感じになりました。
文字数(空白・改行含まない):2259字
手紙の来た日の翌日、王城にある応接間にて6名の人間が談話をしていた。
狭くないその応接間の中心に堂々と置かれているテーブル。それを全方位から囲むように、シールイアの国王、女王、第一王女、第二王女、そして魔法学校長とその付き添いの計6名である。
最高位の王族と国随一と名高い魔法学校の長の話し合いである、カランとセリアは緊張の糸を切らしてはいけないような堅苦しいものを想像していた。
「娘さんをうちの学校に入学させるっていう話だけど」
「あぁ、突然のドデカイ申し出になったからな。王女を途中入学させてくれなんて、絶対顔を合わせて話がしたいと来ると察していたからな」
「王女を入学することについてびびってるわけじゃなくてウチが言いたいのはその護衛の数だよ!!なんだよ15って?!」
「不満でも?」
「ねーけど!ねーけど何があってこの数になってんだ!ってかこんだけ送り込ませようとして城の警備甘くなって大丈夫か?」
「護衛が多ければその分安心できるであろうに、その上全員女性だ。しっかり配慮しているぞ」
「学校側の配慮はドブにでも蹴り捨てたんか?!?!」
ここは国を治める王族の地、シールイア城の応接間。
そこで行われているはシールイアの王と国随一と名のある魔法学校の長の話し合いである。
カランとセリアは目を点にしてその様子を呆然と眺めていた。
想像していたものとは程遠いどころの話では無い、雲泥の差である。王である父が身内以外でここまで言葉を崩すところなど、今まで見たことはなかった。
対している魔法学校の長の方もなかなかである。一言目を発した瞬間カランは、王族に対しなんて礼儀のなってない愚か者なのだ。と思ってしまった。
しかしそんなカランの思いを一瞬で破壊した父にも驚かされた。
そんな予想外の現状に空いた口が塞がらない愛娘2人を微笑ましい表情で眺めている人物、シールイアの女王は、後ろの方に良い姿勢で待機している使用人に「来て」の合図である手招きをした。
「絵画職人を呼んできて」
「承知しました」
そばに来た使用人は女王の合図に、姿勢を低くし、耳打ちをされる。
言われた命令に対し、疑問の有無を言わずしてその者は静かに応接間から姿を消した。
そばでこのようなやり取りがあったのも一向に構うことなく、王と学校長の対話は続いた。
「娘さんの見守り役なら学校側からも出すし時たま学校長であるウチもチラチラ見てやるからせめてそっちの護衛役を少なくしてくれ」
「そうだな…やはり15人で同じ人間をずっと見張り続けてしまうと、少し不自然がられてしまうか……」
「そうだけど…!そうだけど!!!長期休み明けでもないなんでもない日に突然教員15人と生徒一人が来ましたなんてどう考えてもその時点で怪しまれるだろうが!!」
「別の弱小学校を潰してそこから流れてきたと説明すればだろう?」
「お前のその発言、ほんとにこの国治めてる王様か?!今のをシールイア国民が聞いたらどうすんだよ。ってか自分の親がこんな腐った発言してて娘さんふたりはかわいそうだなまじで」
「安心するんだ、この応接間は絶対的な防御を有するタズムディフェル結界を張っている」
「ウチの作った魔法技術が腐った発言してる王の威厳を守るために利用されてるなんて考えてもなかったよ」
「まあとりあえず、護衛の人数は5人でどうだ」
話をそらすように、王は護衛人数についての交渉をしはじめた。
かわらずカランとセリアは放心状態。
壁際には先程まで居なかった者がひとり色筆を走らせている。
「5人か……まあ入ってくる時期を2回くらいに分ければ少しは怪しまれずに済むか。それとして希望としてはいつぐらいに入学させるつもり?」
「それは本人に直接聞かないと分からんな」
「聞いてなかったんだ」
「ただ「魔法学校に通いたい」と言ってきただけだからな。あとの話は全部任せてた」
「あ?」
「さてさて。本人に入学希望日を聞きたいところなんだけど…」
目の前で不穏な表情をしている人物からさっさと顔の向きを背けるように王はちらりと視線を横に向ける。
そこには必死に色筆を大きな色紙に走らせている絵画職人と、それを横で見ながらなにか指定しているらしい女王の姿が見えた。
「じゃ菓子でも頂くか…。…お、美味えなこの焼き菓子、やっぱ城の調理師ってのは伊達にならんな。学校のもなかなかだけど」
「たしか今出されてる焼き菓子はカランとセリアが調理師に教えて貰いながら作ったと言ってた気がするな」
言いながら王も1枚手に取り丸ごと口の中に放り込み堪能する。
「まじかよ?!だったら将来の婿になる奴は幸せもんだな!」
「結婚かぁ……」
「んだよ、可愛い可愛い愛娘に見合う男なんてこの世に居ないみたいな顔で天井見上げて。気持ち悪いぞ」
「時代は変わるものだ。王族でも同性婚というものを実行していいのでは」
「…お前、娘の意見も聞かずに「結婚相手は女性の方だ」とか頭沸いてんだろ、ってか跡継ぎどうすんだよ」
「女同士でも子供ができるような魔法あったりしない?」
「あぁーる……わけない、ぞ?」
『ある』と言いかけた(言った)のを必死に誤魔化す学校長。
今の話を聞いて本気でこの旧友を心配した学校長なりの配慮である。もしここで『ある』と言ってしまえば本当に同性婚を王族で初めて成して跡継ぎすら誕生してしまうかもしれない。
親バカのような存在であるこの王が愛娘の意見も聞かずに強制的に婿を用意し結婚させるようなことはないと思うが、念には念をということで、ひとつ嘘をついた。
「そうか、残念だ」
「まじで国民全員から殴られろ」
女同士男同士で子供を作る魔法
と言ってますが要は性を転換すれば良いだけです。
基本的にこの世界に存在する魔法という文明は割となんでもできるものにしていくつもりです。
そういえば王やら女王やら学校長やらの名前どうしましょう?