fortune eyes witch
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「魔女、この世界の人間が憧れとする存在」
「時に幸運を運び、人々を幸せにする」
「けれど1人前の魔女だなんて夢のまた夢」
「あなたが魔法学校に通うことはできません」
その日、その時、一国の要である王宮内にて告げられた。
「どうして……?!」
相手が王女だなんて関係ない、姉妹なのだから。
そんなことを思いながら、第二王女であるセリアは姉であり第一王女であるカランに吐き捨てた。
「魔女はそう簡単になれるものじゃないからよ」
「だからって私が魔女になったらいけない理由になってない!」
「それはっ……」
「出てく!」
「ちょっと、また話が……ぅっ、」
振り向きもせず、セリアは大きな扉を勢いよく開けて走り去っていく。まだ言葉を交わし始めて1分も経ってない。
一体どこに行くのかなんて分からない、そんな妹を追いかけようと1歩足を出した瞬間に胸に痛みを感じうずくまるカラン。
「セリア……」
絞り出た妹を呼ぶ声は勿論伝わることなく、広い城内にカランの倒れ込む音とともに誰にも聞こえることなく反響した。
姉のカランは魔女であった。
それはそれは妹のセリアにとって憧れの一人前の魔女だった。
小さい頃は毎日魔法を見せる度にはしゃぐ妹の姿に、カランもうれしくなっていた。
セリアはそんな姉の姿をみて自分も姉のような魔女になりたい、そう思って魔女学校へと通おうというのだ。
魔法を使える魔女になるだけなら、誰も止めやしない、そう思ったセリアは急いで姉のカランに伝えに行った。
母でも父でもない、1番親しい存在の姉に。
その結果、予想だにしない返答が来たのだ、姉は魔女になった。なのにどうして自分はなってはいけないのか、何も分からない。
勿論カランも考えもなく止めた訳では無い、当たり前だ。なにか思い当たることがあって止めたのだが、しっかりとした理由を言う前にセリアはその場を出ていった。
カランは胸を抑えながら何とか立ち上がり、小さなため息をひとつ。
どうせセリアは衛兵の目に止まって城内に戻される、その時に話せばいい、その時のためにも今は自分の身を心配しなければならない。
その後に面と向かって事実を告げなければいけない。
"セリアが魔法を使うことが出来ない"という事を──