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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第一章 『旅立ち』編
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第七話 旅立ちの日

 今日はついに王都に向けて出発する日だ。この部屋で寝るのも今日で最後になるのだろうか。いや、片道一週間程度だから普通に帰ってくることもあるか。

 朝食を食べた後、最後に持って行く荷物の確認をする。この世界にはマジックバックがあるので、旅が大荷物で困るということは少ない。マジックバックの中は異空間になっていて、時間の流れが止まっているので、食料も好きなだけ入れられる。また、取り出す時に注意は必要だが、嵩張かさばることはなく重さもない。マジックバックはダンジョン産のみなので、高価ではあるが、今では旅の必需品である。

 もっとも、おれの家の場合は父さんも母さんも自分で手に入れたマジックバックがあるので、購入する必要はなかったわけだが。


よし、荷物の確認終了。


「父さん、荷物の確認終わったよ」

「よし、じゃあ父さんが最終確認するから外で母さんたちと待っててくれ」


 王都へ行く時には護衛役として父さんも付いてくる。衛兵の仕事の一つに王都へ行く商人の護衛もあるので、それに合わせてもらった形だ。ちなみに、母さんとシエルはこの町に残るので、付いてくるのは馬車が出る駅までだ。そこでソラとも合流する予定である。


「あ、兄さん。出発できそうですか?」

「いや、父さんがもう一度最終確認するってさ」

「相変わらず親子そろって心配性ですね」

「父さんはともかくおれもか?自分ではそんなつもりあまりないんだけど」

「無自覚ですか?一昨日はソラさんの分まで旅の準備の手伝いをしていましたし、今もお母さんがいるのに私のために魔力操作しているでしょう」

「そう言われれば確かに」


 あれ?おれって心配性なのか?もしかしてかまい過ぎてウザがられたりしてる?


「ああ、別に魔力操作を止めなくてもいいですよ。それに正直言って今ではお母さんより兄さんの方が魔力操作上手ですから」


 良かった。少なくともシエルにはウザがられてはいなかったようだ。


「そっか。それよりシエルは一体何を持っているんだ?」

「それはまだ秘密です。ソラさんの分も一緒に渡す予定ですからそれまで待っていてください」


 何やらわからないが、ソラの分まであるらしい。ということはお守り的な何かかな?まあ、秘密にしたいようだし余計な詮索はしないでおくか。


「すまん、待たせた。それじゃあ行くか」


 父さんの最終確認も終わったようなので、馬車駅までおれたちは歩き始めた。



「よっ、おはよう」

「おはよう」

「おはようございます」


 馬車駅に着くと、既にソラの親子がいた。待たせてしまったようだ。駅の時計を見る限り、集合時間には間に合っていたようだが。

 そして自然と親と子供に分かれて会話し始めた。


「昨日何してたと思う?」


 ソラがそんなことを言ってきた。よほど良いことがあったのだろうか。その顔は早く話の内容を聞かせたくてたまらないといった感じだった。


「知らねーよ」

「少しは考えろって」

「じゃあ、武器屋に行ってたとか?」


 とりあえず、昨日おれがやっていたことを候補として出す。


「おお!?大正解。昨日は武器屋でミスリル合金の剣を買ってもらったんだぜ。後でお前にも見せてやるよ」


 この世界には前世にもあった金属に加えて魔力を通しやすい魔法金属というものがある。魔法金属は魔力を通したり、魔石を埋め込むことによって耐久力が上がったり、魔法を付与することができたりする。魔法金属は価値が高い順にオリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネ、ミスリルがある。とはいえ魔法金属自体が希少なので、一番価値が低いミスリルでさえかなり高価だったりする。


 しかし、価値が高い順に武器としての価値が高いかと言われると実はそうではなかったりする。オリハルコンはそもそも硬すぎて人間では加工ができない素材であるし、アダマンタイトは重い。

 そのため、アダマンタイトの武器を使うのは素早さを必要としない上位探索者の重戦士くらいしかいない。反対にミスリルは軽量性に優れ、素早さを必要とするロールの者にはミスリルは大人気だ。

 ヒヒイロカネはアダマンタイトとミスリルの中間の性質である。入手方法は主に全てダンジョンであるが、ミスリルだけは鉱山で得られることもある。


「兄さん、ソラさん、渡したい物があるのですがいいですか?」

「ん?何だ、渡したい物って?」

「あ!家を出る時言ってたやつか」

「はい、そうです。これをどうぞ」


 シエルが渡してきたそれは……寄せ書きであった。

 教会などで特に仲が良かった友達がおれたちにメッセージを書いてくれている。

 それにしてもこの世界にも寄せ書きって文化があったんだな。そういえば前世でも部活の後輩から貰ってたっけ。地味に嬉しいよな、こういうの。

 自分が書く側に回ると面倒くさく感じてしまうが。


「ありがとう、シエル。みんなにもお礼言っといてくれ」

「ああ、俺も頼む」

「わかりました。伝えておきます」


 その後は何が書かれてあったかで少し盛り上がり、もうそろそろ出発する雰囲気になってきたところでシエルが声をかけてきた。


「兄さん、最後に伝えたいことがあるのですがいいですか?」

「?良いよ」

「あ、じゃあ俺先に向こう行っとくわ」


 ソラが気を利かせて二人きりにしてくれた。そしてそのまま父さんたちと合流したようだ。


「それで、伝えたいことって何だ?」

「その前に兄さんは私のことをどう思っていますか?」

「どうって……ええと、シエルはおれよりもしっかりしてるし、頼りになる妹だと思ってるよ」


 シエルのことをどう思っているのか、か。どうしてこのタイミングでそんなことを聞いてくるのかは分からないが、前世のことも未だにシエルにしか話していないし、頼りにしているというのは間違いないと思う。

 だが、その答えはお気に召さなかったようで少し不満そうな顔になった。


「そういうことではなく……言い方を変えましょう。私のこと好きですか?」

「もちろん好きだよ。多分この世の誰よりも好きだよ」


 ……あれ?もしかしてものすごく恥ずかしい上に、めっちゃ誤解を招く言い方をしたのでは!?

 ええと……とにかく弁解しないと。


「今のはちょっと違くてな、いや好きなのは合ってるんだけど……おれ、前世でも好きとか言ったことなくてちょっと言い方を間違ったというか……」

「前世で好きな人はいなかったんですか?」

「ストレートにそう思う人はいなかったかなぁ。忘れてるだけかもしれないけど」

「そうですか。でも前世ではアストロ学園のような学校に通っていたんでしょう?出会いが多かったりするんじゃないんですか?」

「いや、そもそもプライベートなことを話す女子すらいた記憶がないなぁ。だから、アストロ学園でも同じようなものだと思うよ」

「そうなんですか。……なら焦らなくてもいいですかね。ソラさんと一緒にいればソラさんの方がモテるでしょうし」


 最後何か言ったような気がするが……なんとなく聞かない方が良さそうな気がするから聞かないでおくか。


「では、ダンジョン攻略のため、学園生活がんばってきてください。伝えたいことはそれだけです」

「ああ、頑張るよ」


 そう話を締めくくっておれたちも父さんたちに合流した。


「別れの挨拶は済んだみたいだな。じゃあ、行くか」

「うん」「ああ」

「「いってきます」」

「「「いってらっしゃい」」」


 さあ、いざ行かん、王都へ。


これで第一章は終わりです。

楽しんでいただけたでしょうか。

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