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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第一章 『旅立ち』編
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第四話 リックVSソラ

「リック、次俺と模擬戦しないか?」


 ソラが勝負を仕掛けてきた。おれの答えは決まっている。


「いいよ。どこで戦う?」

「近くの森の中でやろうぜ」

「良いのか?おれが得意な場所だぞ」

「最近は俺が連勝中だからな。お前が得意な場所でも勝てるんじゃねえかなって」

「舐められたもんだな、返り討ちにしてやる」


 どうもソラは少し調子に乗っているようだ。ここらで勝っておかないとな。おれとソラが森に行くことをみんなに伝えると、みんなもおれたちの勝負は気になるようで、6人全員で森に行くことになった。


「どっちが勝つと思う?」

「兄さんが勝つに決まっています。森の中なら正面から戦う必要はありませんから」

シエル(シーちゃん)は相変わらずだね。でも、最近ソラ君すごく強くなってるよ」

「僕もソラが勝つと思うな。さっき二人掛かりで戦ったのに全然歯が立たなかったから」


 どうやら後ろでは勝敗予想が行われているようだ。

 ……ソラの勝ち予想が多いようだな。ソラも友達の会話を聞いていたようで、隣にいるおれに話しかけてくる。


「どうやら、俺の勝ち予想が多いみたいだぜ」

「おれは下剋上が好きなんで逆に燃えてきたね。支援魔法使いはソロでも戦えるってところを見せてやる」


 支援魔法使いの戦い方の基本はパーティー戦闘を想定している。だから、今回見せるつもりの支援魔法使いの戦い方はかなりおれのアレンジがかなり入った支援魔法使いとしては邪道なものだ。支援魔法使いになると決めたのは今朝だが、元々興味はあったので、支援魔法使いであった母さんにどのような戦い方をするのかは聞いていた。

 母さんも元探索者であり、父さんと同じパーティーの時期もあったらしい。母さんの最高到達階層は29層だ。

 つまり、母さんは途中でパーティーを抜けた訳だが、別に仲が悪くなったとかそういうことではなかったらしい。30層のボスが支援魔法使いと非常に相性が悪いため、母さん自身が実力不足を感じ、自らパーティーから抜けたそうだ。

 ダンジョン攻略自体は何人でもできるが、ボス部屋に入れるのは5人だけであるので、足手まといを入れる余裕はないのだ。

 ダンジョン攻略では人数が限られることもあり、個人戦闘力も必要になってくる。しかも話を聞く限りそれは下層に進むにつれて顕著になっているように思える。父さんもはっきりとは口にしていないが、母さんをパーティーから外した原因は結局のところ、個人戦闘力が低いからであるように思える。

 だから、支援魔法使いになると決めた後も、最低限ソロ戦闘もできるようにしておくつもりなのだ。その戦い方が今のソラ相手にどこまで通用するのか試してやる!



「場所は此処でいいか?」

「良いぞ」


 森に入って少ししたところでおれはそう言った。周囲は木に囲われていて、木々の間から太陽の光が入ってくる。この森は町からそこまで離れていないので、魔物が現れるということもないだろう。今は秋なので足元には落ち葉も多く、そうでなくても木が邪魔で全力で走ることは難しいだろう。

 障害物が多く見通しが悪い環境はダンジョンにもある。そのような場所でも動けるようにということで父さんに連れてきてもらって以来、たまにここで訓練をすることもある。

 ここなら色々なもの利用できそうだ。


「ルールはいつも通り、魔法はありで、木剣で一撃入れるか、降参させるかで勝ちでいいな?」

「おう、開始の合図はシーちゃん、頼むな」

「分かりました」


 魔法を当てたら勝ちにしないのは、判定が難しいからと、火属性の魔法などを使った場合、おれの回復魔法で完治できない可能性があるからだ。

 判定が難しいというのは例えば水属性の魔法を使った場合、水滴が当たっただけで一撃を入れるとするかなどの判断が難しいという意味である。


 おれは脚を中心に無属性の身体強化魔法を発動させ、開始の合図を待つ。十メートルほど離れたところで木剣を構えるソラは身体全体に身体強化をしていることが何となく分かる。ソラはおれほど魔力操作が上手くないので、部分的な身体強化はあまりできない。ただ、魔力量がおれよりも多いので、そのハンデはあまり考えない方が良いだろう。


「では、スタート」


 シエルの開始の合図が聞こえると同時にソラから距離を取る。ソラはおれが向かってこないことに少し意表を突かれたようだったが、すぐに気を取り直して距離を詰めてくる。支援魔法使いにとって十メートルの距離は短すぎる。この世界の人間は十歳の子供であっても、50メートルを5秒以内で走ることは珍しくない。ソラはこの世界でも優秀な部類なので、既に前世の陸上選手以上のスピードを持っている。だからこそ、魔法を使うにはまず距離を取る必要があったのだ。

 少し距離が開いたところですぐさま魔力にイメージを乗せ、魔法を発動させる。


「【地面壁(グランドウォール)】」


 土属性初級魔法【地面壁(グランドウォール)】でおれとソラの間の地面をいくつかの箇所で隆起させる。といっても高さは10センチほどだ。そして、わざと落ち葉が多い場所に誘導したため段差があるのが分かりづらい状態になっている。


「うおっと」

「今だ!【送風(センドウインド)】」


 ソラがおれの目論見通り、段差に引っかかったところで、次に風属性初級魔法【送風センドウインド】を上から放ち、木の葉と共にソラを襲う。下に気を取られたところで、上から魔法を放ち、視界を奪いに行く。

 そして、おれ自身も一転してソラとの距離を詰めに掛かる。前回の森での模擬戦でも使用した必勝パターンだ。

 しかし……


「【風嵐ウインドストーム】」


 ソラは自身を中心に強風を発生させ、周囲の木の葉はおろかおれの【送風センドウインド】をも吹き飛ばしてしまった。

 それを見ておれは足を止める。

 おいおい、【風嵐ウインドストーム】は中級魔法だろ……いつの間に使えるようになったんだよ。


「二度も同じ手は食らわねえぜ。リック!」

「これで勝ったと思うなよ」


 おれは近くにあった大木の裏側に周り、ソラの視界から外れようとする。ソラが再び距離を詰めてくるが、その隙に再び足元に今度は水属性初級魔法魔法【(フリージング)(ウォーター)】を放ち、地面の一部を凍らせる。

 しかし、さすがに警戒していたようだ。おれが魔法で凍らせた地面を見て引き返し、大木の反対側から回り込もうとする。

 おれはその瞬間、跳び上がり、木の枝に登る。

 ソラは足元に注意を向けていてまだ木の上にいるおれに気づいていないようだ。その隙におれはソラに奇襲をかけるべく木の上を移動する。そして、飛び降りようとしたところでソラがおれの位置に気づく。だがこの角度ならいける。

 そのまま飛び降りると同時に魔法を発動させる。


「うおおおおお【発光(フラッシュ)】」

「なっ!」


 ソラは丁度、リックを見つけ、見上げたところだったので、もろに光を浴びてしまい、とっさに目を閉じてしまう。それはソラにとって致命的な隙となる。

 だが、着地してから木刀で斬りかかってもその時にはもうソラは体制を立て直すだろう。だからおれは飛び降りながら木刀をソラに向かって投げる。

 これが当たらなかったら武器を失ってしまったおれはもう負けだろう。

(当たってくれ)

 そう願いながら投げた木刀は――


「いてっ」


 見事にソラの頭に直撃した。着地を決めた後、おれはソラに近づいて勝利宣言をする。


「おれの勝ちだな。ソラ」

「いや、投げるとかありかよ」

「一撃は一撃だ。もし真剣なら死んでただろ?」

「まあ、そうか。勝てると思ったのになあ。っていうか最後の【発光(フラッシュ)】ってなんだよ。あんな魔法初めて見たぞ」

「あれは聖属性初級魔法【癒しの光(ヒーリングライト)】の光が強くなるよう調整した魔法だ。一応、回復魔法だから失明とかの心配はないはずだぜ。それより、お前が中級魔法を使ったことの方が驚きだよ」

「かなり練習したからな。けど、魔法の改変も十分すげえだろ」


 おれとリックが互いを称え合っていると、他のみんなも集まって感想を述べあった。友達の一人がおれの戦い方を「ちょっとずるくない?」と言っていたが、気にしない。勝負は勝てばよかろうなのだ。


 その後はみんなで魔法の見せ合いなどをして楽しんだ。特に、シエルは先ほどおれとソラが見せた魔法を完全にコピーしてしまってみんなを驚かせていた。それを見ておれとソラは互いに慰め合ったりもした。

 シエル、天才過ぎない……?

 

 日が暮れそうになったところで街に戻り、みんなと解散した。最後はシエルに持っていかれたような気がしたが、久しぶりに模擬戦でソラに勝つことができた。

 今日はいい一日だった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定がしっかり練られていて、読みごたえがありました(^^) 面白かったです!
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