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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第四章 『クラス別対抗戦』編
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第四十三話 ポーション口移し事件

 何だあの変身。魔力の質が極端に変化していた。そんなことがあり得るのか。というか、あの姿は角、翼、爪、肌色、どこを見ても本に書かれていた魔人族の特徴そのままだった。彼女は魔人族なのだろうか。魔人族に変身能力があるだなんて聞いたことがなかったのだが。魔人族は魔力操作に優れ、魔力量も人間族に比べて多いと書いてあった。その特徴にも彼女は十分に当てはまっている。じゃあやっぱり彼女は魔人族なのか?


「あ、あの……」


 仮に本当に彼女が魔人族なのだとして、あの移動はいったいどういうことなんだ。おれには上から俯瞰しているにもかかわらず、彼女が一瞬消えたようにしか見えなかった。もちろん、目に対して魔力強化していたわけでもないので視認できないスピードで移動したという可能性もなくはないが、相手の意識を一切そらさずにそのようなことをなしたということは少なくともスピードは父さん以上ということになる。そんなことがあり得るのか?あり得るのならどうやって対応する?違うのだとしたら他にどういう可能性がある?


「ちょ、ちょっと……」


 ああいう超スピードまたは瞬間移動系の相手をする時は視線などから移動先を予想して対応するっていうのが定番だけど……異世界でもその定番が通じるのだろうか。大体、この世界の人間は超スピードに認識が追い付かないってこと、ほとんどないもんなぁ……。でも、賢さというか、勉強面では全体的にレベルが低いように感じるので、脳が単純に高性能ってわけでもなさそうだけど。いや、普通に戦闘特化の身体ってだけか?サ〇ヤ人みたいに。それなら、あいつも搦め手に弱い可能性は十分にあるか。サンプルが少なすぎるけど、今回は単純に相手の背後に移動していたわけだし。それなら、設置系の魔法を利用して――


「ふ、ふみゅう……」


 あ、あれ、どうしたアスト!?


 って、あ!

 アストのやつ、共有魔法発動させっぱなしじゃん!!


「お、おい、大丈夫かアスト!?」


 倒れこむアストをおれが片手で支えるような形となる。

 やばっ、重っ、身体強化!


 幸い、咄嗟に身体強化魔法を使ったことでおれまで一緒に倒れるということにはならなかったが、アストはどうやら意識を失ってしまったようだ。


「あーあー、魔力欠乏症じゃん。何したの?」

「それが、ずっとおれと共有魔法使いっぱなしだったみたいで……」


 フォル君の言う通り、アストの魔力の流れは一時的に止まっており、顔色も悪く、身体は膠着状態に陥っていた。

 明らかに魔力欠乏症の症状だ。

 

「なるほど、いつもの悪い癖でリックが思考に没頭しちゃって、それが全部アストの方にも流れたと。まー、魔力もまだ弱々しいけどもう流れ出してるし、ポーション飲めばすぐ治るでしょ。休憩室にポーション売ってたはずだし行ってきたら?」

「そうだな。行ってくる」


 すぐさま方針を決め、おれはアストを両手で抱え休憩室へと向かった。



 フォル君の軽い反応を見ても分かる通り、一時的な魔力欠乏症は単体ではそんなに重い病気じゃない。

 戦闘後にはよくある症状だし、さっきフォル君が言ったポーションなどを飲まなくても半日程度で自然回復することがほとんどだ。

 

 だが、今回のように急激に魔力を減らして魔力欠乏症になった場合は体内の魔力循環などがおかしくなる場合がある。最悪の場合、魔法を使えなくなることもあるんだとか。

 まあ、それは珍しい例だとしても早めに正常な状態に戻した方が良いのは間違いない。

 というわけで、魔力回復ポーション(下級)を買ってきたんだけど……。


「飲ませてください」

「いや、必要ないでしょ……」


 アストがそんなわがままを言ってきた。

 休憩室に向かっている段階で意識を取り戻していたアストだったが、体のだるけはまだ残っていみたいなのでそのまま運んだのだ。

 普通に受け答えができる様子から見て、わざわざポーションを飲ませてやる必要は全くないのだが……。


「もしもの時のためです」

「悪いけど、経験済みだから」

「……ソラとですか」

「ぐっ……」


 やばい、嫌な記憶が……。

 父さんもアストと同じ言い分でおれとソラにポーションの口移しの練習をさせたことがあったのだ。

 上級ポーションなんかだと、今回のように気絶した状態からでも飲めばある程度魔法も使える状態まで瞬時に回復するので、特に後衛気味のおれには必要な練習であることはたしかなのである。

 ただ、そっちの気のないおれからしたら苦痛の時間でしかなかったのだが、ソラの方は妙に楽しんでいたし、あの野郎はやたら下手だったのでやたらやり直しをくらった。

 マジで思い出したくない。


「……それは可哀そうに。わ、私でよければ口直ししますか……?」

「ぐあああああああ!?」


 おれが人目をはばからず叫んだせいで一瞬注目を集めてしまう。

 何でもないというジェスチャーをしつつ、若干小声になりながら話を再開する。


「……ごめん。その話はなしで」

「は、はい。そうですね……」


 何かを察してくれたのか、蒸し返すことなくアストもポーションをちびちびと飲み始める。

 本当は一気に飲んだ方が良いのだが、緊急時でもないのでよしとする。

 良薬は口に苦しとはいうが、異世界でもそんなところで同じじゃなくてもいいのにと思う。


 それにしても『口直し』か……。

 あれから大分時間も経ったかと思うが、未だにトラウマは健在らしい。


 ポーション口移し事件には実は続きがあったのだ。

 あの頃にはもうシエルも父さんとの訓練に参加している時期だったので、思っていたよりも時間がかかったこともあり、来るなと言っていたにも関わらずこちらに来てしまったのだ。

 そして嫌がるおれにキスだなんだと言って無駄に盛り上がるソラとの会話を変な感じでシエルは聞いてしまったのだろう。

 ものすごい威力の攻撃魔法がソラに向かって飛んできていた。

 というか、あの威力だと近くにいたおれも巻き添えを食らっていたと思う。


 幸い、その魔法は父さんが防いでくれだが、それだけでは終わらなかった。

 多種多様な攻撃魔法がおれたちに向かって降りかかり、それを次々と父さんが防いでいくのをただ見ていることしかできなかった。

 魔法の威力もそうだが、何よりオーラが半端なかったのだ。

 相手を呪い殺すという雰囲気、空気、イメージという目に見えない何かにおれたちは完全に吞まれてしまったのだ。

 あの時ほど恐怖を覚えたことはこれまでにない。「兄さん、私と口直ししましょう?」とうわごとのように口にするシエルのセリフも。

 あの時のシエルを超えるオーラを放つやつは、魔物を含めても後にも先にも存在しない。

 動けないおれたちに代わって何とか父さんが取り押さえてくれたが、父さんも「あれは間違いなく母さんの血だな」と苦笑しながら言っていた。

 え、母さんってあんな怖いことあるの?

 

 その後、おれとソラが組んでのシエルとの模擬戦で、ソラが見事に囮役をこなして勝てた時はこいつはマジで勇者だなと思ったものだ。

 ……シエルの魔法、地味に殺意高かった気もするし。

 そういえば、父さんもそれに気づいたのか、シエルに模擬戦での魔法使用を禁じたのもその時だったなぁ、と遠い目をしながらポーションを半分程度飲み、残りを一気に飲み干すかこのままゆっくり飲むか迷っていそうなアストに気分転換がてら話しかける。


「そういえば、アストは魔族について何か知っているのか?」


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