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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第四章 『クラス別対抗戦』編
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第四十一話 呪術士、イラリー

遅れてすいません。

「いやー、斬撃を飛ばされるなんて思わなかったよ」

「正直言って成功するかはまだ半々なんだけどな」


 魔力体から生身になって戻って来たおれに向かって少し得意げにティック君はそう言った。

 斬撃を飛ばすのは難しい。

 基本的には剣を極めれば誰でもできると言われているが、おれは風魔法の応用だと思っている。しかし、それがあまり賛同されないのは、斬撃を飛ばすのは魔法の得手、不得手とほとんど関連がないことと、風属性の要素を斬撃はほとんど持っていないからだ。

 例えば、斬撃とほとんど同じ効果を示す【風刃ウインドカッター】であれば、火属性魔法の【火盾ファイヤーシールド】などで防ぎやすくなるのだが、斬撃だとそれがない。他にも魔法の効果を打ち消してしまう【消去イレイズ】に反応しないなど、斬撃を風属性魔法と呼ぶには不利な要素が多い。それでも、本人の魔力量自体は減少しているようなので、魔法と関係があることは確かなのだが。

 そんなわけで、斬撃は身体強化のような無属性魔法ということになっている。

 無属性魔法にしては威力がありすぎるのだが。

 その分習得難度は高いけれど。

 たしかソラもまだマスターしていなかったはずだ。ソラは風魔法が得意なので必要があまりないと言えばないのだが。

 おれ?できるわけないじゃん。燃費良いから使えるなら使いたいけどさ。優先順位低いよねって話。


「それでもすごいよ。剣士が遠距離攻撃してきたらめちゃめんどくさいからね。そういえばティック君のパーティーってリーダー役は誰がやるの?」

「イラリーだな」

「えっ、そうなんだ。ちょっと意外」


 てっきりティック君がやるのかと思ってた。

 いやまあよく考えると、ティック君がリーダー役なら今回の戦闘訓練で攻撃役をやるわけがないんだけど。


「僕はティックで良いと思うんだけどね。実際、パーティーリーダー的なことはティックがやってるし」

「ばっか野郎。おれは攻撃が好きなんだよ!守りは……まぁ、ちょっと苦手だからな。今回のルール上、イラリーがリーダー役の方がいいだろ」


 おお……!

 ティック君がなんか論理的っぽいこと言ってる!?


「お前、感心してるようにみせてばかにしてるだろ……」

「あれ?ばれた……?」


 まあ、実際のところ両手剣は防御しにくいからその判断は正解だと思うけど。

 それでも、シャド君から昔の話を聞く限りではこういう時は絶対にリーダー役を譲らない性格だと思ってたんだけどな。

 つまり、イラリーさんはティック君がリーダー役を譲ってもいいと思えるくらいの実力者……?


「ねえ、イラリーさんってどんな人なの?おれ、あんまり喋ったことないからよく知らないんだけど」

「それなら、直接会ってきたらどうだ?むこうも丁度終わったみたいだし」


 そう言われてティック君が見ている方に視線を向けると、たしかにイラリーさんらしき人とシャド君が魔力体から生身になって訓練室に戻ってくるところであった。


「おーい、イラリー、シャド、こっち来いよ」


 ティック君がそう呼びかけると、2人はこっちに来てくれるようだ。


「いや、お前らは来なくてよかったんだよ?」


 2人と一緒になぜか、と言うほどでもないが、シャド君とイラリーさんと一緒に戦っていたのであろうフォル君、クラウさん、マーレさんの3人も付いてきた。


「仲間外れにすんなよ。情報共有は大事だろ」

「仲間外れはおれの方じゃないか?ほら、そっちにパーティーメンバー3人いるんだし」

「ああ言えばこう言うお前……」

「おい、何のためにこいつら呼んだんだよ!」


 フォル君とじゃれ合っていると、ティック君にそんなことを言われてしまった。

 まったく、本題を忘れてしまうところだったじゃないか。

 フォル君のせいで。


「ごめんごめん。それで、イラリーさんってどんなことができるの?『呪術士』だっていうのは知ってるけど」

「いか…も。私は…術士だ。き……何…たい…だ?」

「えっ、何て言ったの?」


 声が小さい上に顔をほとんど覆うマスクをしているせいでほとんど聞き取れない。

 っていうか、不気味な雰囲気を持ってるなぁ。

 オーラがあるよ、オーラが。


「行けっ、シャド!」

「おうよっ!」


 ティック君が突然そんな声を上げると……ってシャド君、どっから出てきたの!?

 シャド君はいつの間にかイラリーさんの背後に回ると一瞬でマスクをはぎ取ってしまった。


「ああっ!?何をする!」


 イラリーさんは今までの小さな声は何だったんだというくらいの大きな声で驚き、慌ててシャド君からマスクを取り返そうとしている。

 ……何コレ。


「イラリーは『呪術師』として相手の精神状態を操る魔法が使えるみたいでな。それで、その魔法は相手の精神状態が悪ければ悪いほど効果がでやすいらしいんだ。だから少しでも不気味に思われる格好をしてるんだ」

「へー、そうなんだ」


 おれからしたらコスプレ衣装の印象が強くて不気味さはあまり感じないのだが。

 まあ、前世基準でいうとこの世界の貴族衣装の方がコスプレ感あって物珍しさがあるんだけど。


「というのは建前でただの恥ずかしがり屋だな、あいつは。素は面白いやつだぞ」


 ほんとに何だソレ。

 結局、どんな人なの?

 とか考えていると追いかけられていたシャド君がおれの背後に隠れようとする。

 いや、隠れようとするというよりは盾にするといった方が正しいか。

 まあ何にせよおれの背後にシャド君が来たということは、当然イラリーさんも追いかけてくるわけで。


 そうすると、不意に目が合ってしまう。

 今まではいつも顔を覆い隠すようなマスクをしていたし、あまり正面から見るということもなかったから気付かなかったが、意外にも顔立ちは整っている。だが、それ以上に印象に残ったのは驚くほどの肌の白さでそれは自然なものとは思えずむしろ――


「ふっ。ば、ばれてしまっては仕方ない。我に何の用だ!!!」


 ……いや、何の用だと言われても。

 こっちは君の豹変ぶりについていけてないんだけど。

 一人称も私から我に変わってる気がするし。

 おれの困惑ぶりを感じ取ってくれたのであろうティック君が助け舟を出してくれる。


「お前の呪術魔法に興味があるらしいぞ。見せてやったらどうだ?」

「ほう!!我の呪術に興味があるのか!ぜひ見せてやろう!」


 あれ、恥ずかしがりの設定どこ行った?圧がすごいんだけど。見せてくれるんなら見せてほしいけど。


「ああ……じゃあ、よろしく」

「よし、血をよこせ!」

「!?」


 な、何で?


「おい、ちゃんと説明してやれ。呪術に使うんだろ?」

「そうだ、だからよこせ!」


 いや、ティック君それほとんど説明になってないからね。

 なに満足しちゃってんだよ。おれは理解してないぞ。


「リッキー、とりあえず渡してみたら?」

「そうだよ、リックは回復魔法も使えるんだし良いじゃん」


 イラリーさんやティック君に続いてクラウさんやフォル君までそんなことを言ってくる。

 えぇ~。

 だいぶ克服したとはいえ痛いのは嫌いなんだけどなぁ。


「ど、どのくらい?」

「そうだなあ。どれが良い?」


 そう言ってイラリーさんは大小形状様々な針をポケットから取り出す。

 えっ、何でそんなもんがポケットからいっぱい出てくるの?

 しかも全部新品じゃなくて使い古しているように見えるのは何故……?

 怖い。


「と、とりあえず一番小さいのでお願いします……」

「えー。これとか良さそうじゃない?」


 そう言ってイラリーさんがおすすめしてきたのは針なのに、いや、あれはもう針と呼ぶのか怪しい持ち手以外すべての場所に鋭利な先端が付いたものだった。

 いかにも痛そう……というかあんなもの初めて見たぞ。

 もしかして自作か?


「何そのいかにも痛そうなの……それって自作?」

「ううん、パパとママが作ってくれたんだ」


 はい、両親も頭おかしいやつ決定~。

 こんなもん、娘に与えんな!

 いや、そういえばおれの父さんも嬉々として短剣とかシエルにプレゼントしようとしてたな。

 ……一緒か?


「だから、これにしない?」


 はっ!

 そんなことはどうでもいいんだ。

 何とかして止めさせないと。


「さ、最初なんだしこれにしようよ。うん、それがいいって。うんうん」

「ま、それもそうだよな。そっちにしてやれよ」

「しょうがないなあ。じゃ、いくよ」


 ティック君、フォローありがとう……ってぇ!!!


「ちょ、ちょっと待って!自分で、自分でやるからぁ!!」

「慌てすぎでしょ」


 フォル君からそんな突っ込みが飛んでくるが知ったことじゃない。

 無意味に痛い思いをする趣味はないのだ、おれは。


 その後何とか自分のタイミングでやると説得し、軽く自分の手を刺した。

 その血が少量であることにイラリーさんは少し不満顔だったが、そこは押し切った。


「で、どうするの?」

「そのままでいいよ。呪術【操血マニピュレートブラット】」


 イラリーさんが魔法を唱えるとおれの血がイラリーさんの手のひらに吸い込まれていく。


「よし。呪術【混乱コンフュージョン】」


 魔法が発動された途端、おれの体の中の魔力が干渉されているような感覚に陥る。

 いや、『ような』ではなく実際にイラリーさんの呪術の影響で干渉されているのだろう。

 その影響か、頭がボーっとし始める。

 だが、残った理性、というか本能?で魔力の干渉を無理やり跳ね除ける。


「あっ、治った」


 そうすると、頭がクリアーに戻り、嫌な感覚も無くなった。


「ちっ、抵抗すんなよ」

「抵抗したつもりはないんだけどね。あれが呪術か」


 うん、あれくらいなら来ると分かっていれば基本的におれはどうとでもなりそうだ。血を吸い込むっていう発動条件もあるみたいだし。

 だけど、タイミングによっては致命傷にもなるから注意は必要だな。


「今回は血の量が少なかったからだからな!我の呪術がこんなもんだと思うなよ!」


 おれの反応を不満に思ったのかイラリーさんがそんなことを言ってくる。

 でもそうか、流す血の量が吸い込んだ量か分からないけど、それによって呪術の効果も変わってくるのか。

 よしよし、情報ゲット。

 同じクラスとはいえ、もしかしたらティックPTとも対抗戦のトーナメントで当たるかもしれないからな。

 事前に対策できるのはありがたい。


「あっ、さすがに言わないと不公平だと思うから言うけど、お前が察した通り呪術の発動条件は相手の血を取り込むことなんだけどさ。一回取り込んだら次はいつでも発動できるから」

「えっ……」


 は、嵌められた!?



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