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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第四章 『クラス別対抗戦』編
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第四十話 対人戦闘訓練②

久々の更新です。

 先生による初めての特別授業の日から一週間が過ぎた。

 つまり、対抗戦まであと2週間ということである。

 マーレさんに支援魔法を教える方については今のところ順調に進んでいる。この分だと対抗戦までには普通に支援魔法使いとして戦力になってくれるだろう。フォル君やクラウさんとも合わせてみたところ、特にクラウさんとの相性が良いらしく、基本的にクラウさんの支援はマーレさんに任せることになりそうだ。

 おれも掛けてもらってみて分かったのだが、マーレさんの支援魔法は無色透明でやりやすいのだ。

 いや、これ意味わかんねえな。

 基本的に支援魔法に限らずすべての魔法にはそれぞれの色がある、と思っている。当然、物理的な色のことじゃなく、イメージ的なものだ。

 例えば支援魔法の一つである『素早さ上昇(クイック)』であれば、対象者の素早さが上がるわけだが、それは個々によってイメージが少しずつ異なる。素早さが上がると言えば、足が速くなるとほとんどの人がイメージするが、それが瞬発的なことなのか、継続的なものなのかでイメージが変わる。同じ「足が速くなる」にしてもそれが一歩一歩を大きくするのか、脚の回転を早くするのかなど人によって違う。それらのイメージの違いをパーティーメンバーの間で共有し、どちらかのイメージに合わせるなりして魔法の支援効率を上げるのが普通なのだが、マーレさんの場合は初めから支援効率がそれなりに高いのだ。

 理由は色々と推測できるが、多分、マーレさん自身があまり身体強化を使ってこなかったからだと思う。この世界の人はほぼ全員が無意識も含めて身体強化の魔法を自身に使っており、特に戦闘経験のある者は身体強化を上手く使い、下手をすれば常時発動しているような人もいるのだが、それは同時に身体強化魔法を自分に合わせた形に変えて使っているということである。それが意識的なものであればまだいいのだが、無意識なものであると、相手にとって支援魔法が意味のないものになってしまうことが多い。マーレさんは自身への身体強化は不得手であるが、それは恐らく、自身への強化のイメージを具体的にできておらず、漠然としているからなんだと思う。それが支援魔法の効果の高さを生み出しているのだろうから、何がプラスに働くのか分からないものだ。


 そんなことを考えていると、チャイムが鳴ったようで先生が一度集合の合図をかける。


「さて、今日からは今までとは違ったことをやってもらおうと思います」


 おっ!やっとか。

 正直、これまでの授業内容はおれにはあまり必要の無いものだったからな。

 早く次に移らないかなと思っていたんだ。


「ここでルールの確認をしておきましょう。本番は4対4のPT戦ですが、4人全員が倒されたら終了ではなく、あらかじめ決めておいた代表者の魔力体が消滅させられれば終了です」


 そうだったな。4人全員が魔力体になるわけではないのはやはり生身での戦いが大事であるという考えからかな。実際、やっぱり生身での戦闘と魔力体での戦闘は感覚が少し違うし。おれはまだましな方だが、フォル君やマーレさんは魔力体の方は変な感じがすると言っていたし。

 リーダーだけ魔力体になるのは安全性の問題からだろうけど。


「そして、来週には実際に見てもらうことになると思いますが、会場はかなり広く、複雑です」


 あー、広いのか。だとしたら思っていたよりも長期の消耗戦になりやすいのか?多分、魔力総量おれたちのPTは少ない方だからできれば避けたいけど。


「そうなると、どういう状況が発生しやすいか分かりますか?」

「長期戦になりやすいってことですか?」

「それもありますが……ではもう少し具体的に想像してみましょう。もし、リック君が代表者をやるとして、試合開始直後どういった行動を取りますか?」


 そりゃあ、自分がやられないことが最優先になるからまずは距離を取って……ってそういうことか。


「会場が広いと、PTが分断されやすいってことですね」

「そうです。狭い範囲の中で4人が固まって動くPT場合もあると思いますが、今回のルール上、代表者以外に殺傷性のある攻撃は禁止のため、攻撃側が圧倒的に有利です」


 たしかに、攻撃側は全力で攻撃できるのに、守備側は手加減しなきゃいけないんだから有利に決まってるわな。

 だとすると――


「なので、攻撃側はいかに代表者を素早く仕留められるか、守備側はいかに時間を稼げるか、が基本的に重要になります。と言うことで、皆さんにはこれから2対1もしくは3対1をやってもらいます」


 最初は攻撃側の練習ってことか。

 レナード君なんかは逆に倒したりもしちゃいそうだけど。

 おれの場合は逃げ回るだけになりそうだな~。

 いや、どうせなら()()試してみるか。



「で、相手お前らかよ」


 自分の魔力を9割注入した魔力体を生成し、訓練室に戻って来たのだが、おれの相手はこのサイン君とティック君の2人のようだ。


「何だよ、俺らじゃ不足かよ」

「いや、別に?ちょうどいい気もするし」

「何が?」

「お前、地味にいつも偉そうだよな……」


 ティック君が何か言っているが放っておこう。


「えーと、広さはこれくらいで良いか?」

「ああ」

「うん、いいよ」


 他の人を巻き込まない程度の位置まで移動し、適当に印をつけて範囲を指定した。そんなに広くはないが、動き回るには十分だろう。これでも前世の体育館くらいの広さはあるしな。ダンジョンのおかげとはいえよくこんな広い訓練室を造れたものだ。


「よし、じゃあおれがスタートって言ったら攻撃してきていいぞ」


 おれがそう言うと、2人はそれぞれの武器である愛剣を構える。

 今回はおれ自身が魔力体ということもあり、2人とも実戦用の武器なので迫力がある。

 まあ、そうはいっても2人の剣は特殊な物ではないので、こんなものにビビってもいられないのだが。


「いくぞ、スタート!」


 合図と同時に2人は一直線にこちらに向かってくるが――


「【発光フラッシュ】」

「「うわっ!!」」


 おれが発生させた2つの光に2人は思わず動きを止めてしまう。

 よし、第一段階は成功。

 普通に距離を取ろうとしてもスピードはあちらが上だし、そもそも敵に対して背を向けるなんてことができるわけがないからな。

 その一瞬の間にできるだけ距離を取り、もう一つの魔法を発動させる。


「【ミスト】」


 水属性改変魔法【霧】。空気中の水分量を増やし、さらに適度に冷やすことで霧を発生させることに成功したのだが――


「向こうだ。今度は挟み撃ちで行くぞ」

「うん」


 視界が戻った二人にすぐに見つかってしまった。

 まあ、これくらいの濃度の霧だと相手がちょっと見えにくくなるくらいで、姿を隠すには至らないよな。

 っていうか、今回はさっきと違って範囲を広めに発動させたからな。

 これだと『霧』っていうより『もや』に近い気がする。

 視界を悪くするのが目的なら火魔法で煙でも発生させた方が良さそうだな。


 ともあれ、今度は二手に分かれて来ているので、先ほどのように【発光】による足止めはもうできないだろう。あれは不意打ち+目の前で発動させることができたからこそ効いたんだろうからな。おれの発動速度が上がってるってのもあるんだろうけど。

 剣の間合いに入ってしまうとかなりどうしようもないので、できるだけ2人を同時に視界に入れられる位置を確保しながら魔法を発動させる。

 狙うは近い方のティック君!


「【水弾ウォーターショット】」

「甘いぜ」


 おれは下がりながら【水弾】を放ち時間を稼ごうとするが、ほとんど勢いを弱めることなく避けられてしまう。

 一応、避けられにくいように足下狙ったり、速度重視で撃ったりしてるんだけどな。

 それに、サイン君にも回り込まれようとしているのでいよいよピンチだ。


 と、そこでサイン君が何かに気付いたようにこれまでよりもさらに大回りに移動し、おれの後ろに回り込もうとする。

 ちっ、気づきやがったか。

 実は挟撃してくることを読んであの辺り一帯には【凍水フリージングウォーター】を発動させていたのだがばれてしまったようだ。

 こうなったら正面のティック君を躱して反対側に回り込むしかないな。


「ふっ」


 おれは方向転換してティック君の方に向かって行く。

 ティック君の武器は両手剣。

 一度でも逆を取ればいけるはずだ。


「来い!」


 ティック君も勢いを殺さずそのままの勢いでおれを斬ろうとする。

 ラッキーだな。

 待ち構えられた方が躱しにくくて嫌だった。


 おれは斬られにくいようできるだけ体勢を低くし、体重移動で相手を躱そうと試みる。

 右に行くと見せて……左!


 よしっ、躱し――と思った瞬間、身体に衝撃が走った。

 最期にティック君と顔が合うと、してやったりという表情をされた。


「くそ」


 まさか斬撃を()()()()()なんてな。

 それが致命傷となり、おれの魔力体は消滅した。


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