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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第一章 『旅立ち』編
4/50

第三話 希望ロール

 ダンジョン適性診断があった次の日。


 昨日は気絶して半日近く眠っていたせいで、夜はあまり眠れなかった。

 そのせいであまり気分は良くないが、そろそろ7時になるので、ソラとシエルと共に早朝訓練の時間である。

 まだ少し寝ぼけた頭のままシエルを起こしに行く。

 昨日は一緒に寝てしまったが、さすがに普段は別々で寝ている。

 だが、起こしに行ったところ、シエルはすでに起きていたようだ。


「おはよう、シエル」

「おはようございます、兄さん」


 顔を洗って目を覚ました後、トレーニング用の服に着替えて、シエルと共にいつもの集合場所でソラと合流する。

 いつもは父さんも一緒なのだが、今日は衛兵の仕事として町の外に見回りに行ってしまった。


 異世界のお約束に漏れず、外には魔物が棲んでいる。

 もちろん、普通の動物もいて、体内に魔石を持っているのが魔物、持っていないのが動物という分類だ。

 基本的に、魔物の方が魔力による身体強化や魔法を使う個体もいるため、動物よりも強い。

 ちなみに、外見上は分からないが、人間も右胸のあたりに魔石を持っているらしい。つまり、この世界では人間も魔物と人類されるのである。

 おれも前世の記憶を持たなければ、魔物であるということに違和感を持たなかったと思う。魔石という魔力供給器官なしでは魔法は使えないというのはこの世界では常識なんだよな。異世界間のカルチャーショックというやつだろう。

 カルチャーショックといえば、異世界の設定としてありがちな『空気中に魔力が存在する』ということがないこともそうだろう。

 だから、魔物が急に出現することもないし、動物が魔物に変異することも基本的にはない。動物と魔物は完全に別個体なのだ。

 前世の世界の異世界常識との違いはまだまだあるが、一日は24時間で気候も日本とほぼ変わらない。その点は助かった。

 

 話を戻すと、魔物は急に出現することはないが、住処を移すことはある。そのような魔物が町に入ってこないか確かめるための見回りってことだ。

 まあ、父さんはかなり強いので、見回りついでに魔物を倒して、魔石を持って帰ってくることも多いんだけどな。

 ダンジョンが出現して以来、魔石の供給量は一気に増えたが、魔道具の発展により消費量も増えたため、需要はむしろ増えた。

 ダンジョンの魔物は倒すと魔石を残して消えるため、魔石をはぎ取る手間がいらないのが良いと評判だ。

 それは、素材が取れないという意味でもあるのだが、魔物の素材は動物と変わらないため、手に入れる苦労に合わないので、魔石目的以外で魔物と戦いに行く者はほとんどいない。


 そんな前世の空想の異世界と本物の異世界の違いについて考えていると、ソラに声を掛けられた。


「そういえば、お前のダンジョン適性の結果はどうだったんだ?」

「あれ?父さんに聞いてなかったのか?」

「アストロ学園入学の推薦をもらえるって聞いただけだな。お前を家まで運んだ後、それだけ言ってすぐに仕事に戻っちまったし」

「そうだっかのか。じゃあ、見せてやる」


 そう言ってポケットに入れていた紙を取り出す。

 元々見せるつもりではあったので、ポケットに入れておいたのだ。


【名前】  リック

【体力】  D

【魔力】  C

【攻撃力】 E

【防御力】 C

【素早さ】 B

【知力】  B

【運】   D

【総合】  C

【備考】  前世持ち。


 ソラの適性に比べると大分見劣りするが、これでも平均以上ではある。プロの探索者でもこれ位の適性の者はいるので、落ち込むレベルではない。


「お前は備考に余計なこと書かれてなかったんだな」

「あれはソラの方がおかしいんだろ。……まあ、あんまり気にすんな」


 やっぱり『なんちゃって勇者』って書かれてたこと気にしてたんだな。気にしない方がおかしいが。

 大体、【備考】は空欄の場合がほとんどなのだ。父さんも総合適性はBランクだが、備考欄には何も書かれていなかったと言っていた。


「知力と素早さのランクが高いみたいだが、希望ロールはどうするんだ?」

「ああ、おれは支援魔法使いになるつもりだ」

「支援魔法使い?支援魔法使いってダンジョン攻略には不要って言われてなかったか?」

「そうだけど、おれは必須だって思うし、適性が低い以上、他の人と同じことをやってたら勝てないだろ」


 正直なところ、それ以外のロールも考えたが、ダンジョン適性診断の結果を見てからはこれしかないって思った。

 魔力操作は得意だが、攻撃力がEランクだと魔導士は厳しいし、素早さはあっても、体力・防御力は高くないので、軽戦士にも向いていない。

 そもそも、おれは前世から支援系のロールが好きだった。RPGゲームなんかでは大体ヒーラーを選んでいたし、読んでいたラノベなんかでも支援系のロールの人間が活躍するものが多かった。

 だから、不人気ロールだとしても支援魔法使いになることに不満は一切ない。

 それに、ダンジョン攻略において支援魔法使いは不要ではないと思っている。

 父さんからの話とダンジョンについての本を軽く読んだだけだが、聞く限りでは魔力操作次第で支援魔法使いでもダンジョンで十分に活躍できる。

 何も全員にそう考えてもらう必要はないが、将来パーティーメンバーとして共にダンジョン攻略するつもりのソラにはそのことを納得してくれなければいけない。

 さて、どう説明したら良いのか……


 まだ納得がいかなそうなソラにどう説明したらよいか悩んでいると、シエルが口を挟んできた。


「私は、兄さんは支援魔法使いが合っていると思いますよ。いつも目が見えない私を完璧に支援してくれていますし」


 いや、言うほど完璧ではないと思うのだが。最近は自分でも確かにマシになったとは思うが、まだまだ母さんの方が上手い。

 だが、シエルがおれのことをここまで評価してくれたことは素直に嬉しい。


「いやいや、おれは反対してた訳じゃねえぞ。ただ、お前なら適性が低くても他のロールで活躍できるだろって思っただけで」

「そうだったのか。まあ、おれの言い方も悪かったな。おれは支援魔法使いになりたいからなるんだ。別に他のロールの適性がなかったから嫌々やるわけじゃない」

「なら、最初から誰も反対する人はいなかったってことですか」


 シエルがそう言って話を締めくくる。


「ところでソラの希望ロールは何なんだ?」

「おれはもちろん魔法戦士だ。勇者だからな」


 ソラは魔法戦士になるつもりらしい。予想通りだけどな。物語の中の勇者が魔法戦士だったからな。

 魔法戦士は人気が高いが、実際にできる人は少ないことで有名だ。

 少なくとも魔法と近接戦闘の両方の才能がなければできないし、才能があっても器用貧乏に終わる可能性が高い。

 だから、大概の人はどちらか一つに絞った方が良いという。

 だが、おれとしてはソラの場合、せっかく両方の適性があるのだから挑戦してみるのがいいと思う。

 本人もやる気だからな。

 適性だけでなく、本人の意思もロール決めには重要だとおれは思うからな。


「そうか。おれはなんちゃって勇者でもしっかりと支援してやるから安心しろ」

「それを言うなって」


 ソラが笑いながらそう答える。

 その後、軽く準備運動をしてから訓練に入る。

 といっても、今日は父さんがいないので、軽くランニングと木剣の素振り、魔力操作の練習をするくらいだが。

 おれは支援魔法使いになると決めたので、今日から木剣の素振りの時間を減らし、魔力操作の練習を多めにする。

 シエルは魔力操作の練習のみだ。



 それが終わった後、ソラと別れ、シエルと共に家に帰って母さんが作ってくれた朝食を食べる。

 その後、教会に行き、今日はこの国の歴史について学んだりした。

 おれは文字の書き方や計算を今はほぼ完璧にできるので、飛び級の扱いを受けている。

 この国では15歳以上で成人とみなされるので、周りは全員13~15歳で、おれはこの中では最年少だ。

 この間、ソラは同年代の勉強中で、シエルは家で母さんの手伝いをしている。



 昼からは再びシエルとソラと合流し、子供たちと共に遊ぶ。

 遊ぶといってもこの世界では魔物という脅威がそばにあるからか、戦闘系の遊びが多い。

 それは女子も同様だ。

 しかも、ほとんどの人は無意識に魔力による身体強化を使うので、前世と比べ、身体能力のレベルが高い。

 そんな中、やはりソラの実力は頭一つ抜けている。見たところ、今も同年代の友達二人を相手に完勝したようだ。

 勝負が終わった後、ソラがこちらに向かって歩いてくる。


「リック、次、俺と模擬戦しないか?」


 ソラが勝負を仕掛けてきた。


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