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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第四章 『クラス別対抗戦』編
38/50

第三十三話 ハーフ族の扱い

※レイン先生視点


 対抗戦のメンバーを発表した後、選ばれた人以外は解散ということにしました。

 生徒の中にメンバー選考に関して明らかに不満そうな生徒はいませんでした。学園での戦闘試験での成績が低かったティックPTとリックPTを選んだことに対して不満が出るかもしれないとは思っていましたが……杞憂に終わってよかったですね。

 リック君が派手に喜んでくれたからというのもあるかもしれません。

 もしかして狙ってやったのでしょうか?前世持ちですのでどちらもあり得るといったところですね。


 少しすると選ばれた16人以外、教室内にはいなくなりました。

 さて、ある意味ここからが本番ですね。


「皆さんは対人戦の訓練をするつもりはありますか?」

「もちろんです!」


 レナード王子だけは即答してくれましたが、他の生徒は迷っているというより戸惑っているという感じだった。

 ああ、理由を説明していませんでしたね。

 結論から先に言って相手を混乱させてしまうのは私の悪い癖です。


「すいません。先に理由を説明しますね。皆さんはこの学園が何のために存在しているかを知っていますか?」

「優秀な探索者を育てるため……ですわよね」


 キャルロット様……さんがそう答えてくれる。


「そうです。ですのでこの学園のカリキュラムは基本的に知能が低い対魔物を想定して作られています」

「カリキュラムなんてあったのか……」


 リックのそんなつぶやきが聞こえましたが、無視しておきます。

 確かに私はお世辞にもカリキュラム通りに授業をやっているとはいえませんからね。

 授業の本質自体は捉えているつもりですが。


「しかし、この対抗戦は完全な対人戦です。対人戦は対魔物とはまた違った技術を求められることがあります。そのような技術を身に着ける気はありますか?ということです。ちなみにそこでの授業は学園の成績とは全く関係ないものとなります。どうしますか?」

「もちろん、参加します」

「王子には聞いていません」

「そ、そんな!?」


 レナード王子は勝手にショックを受けていますが、今は放っておきましょう。

 これでも、付き合いは長い方なので。


 少し話し合いの時間を設けた後、最初に結論を出したのは意外にもリックPTでした。


「先生、おれたちもその授業に参加させてください。元々、対人戦もおれたちは多くやってましたし、対人戦の技術もダンジョンで無駄にはならないと思うので」


 そう言って快諾してくれました。

 すると、その流れに乗ったのかティックPT、キャルロットPTも全員参加してくれることになりました。

 残るはレナードPTですが……王子は完全にいじけちゃってますね。もう直接聞いてしまいましょう。なぜかレナードPTは話し合いも最初から行っていないようですし。


「最後になりましたが、あなたたちはどうしますか?正直に言うとあなたたちには本線だけでも出て欲しいくらいですが……」

「もちろん、私たちも参加しますよ。私たちは基本、王子様の方針に従うと決めていますので」


 それが当然であるかのように彼女はそう言った。他のPTメンバーにもそれに不満はなさそうだった。

 こちらとしては助かりますが……いささか自主性に欠けやしませんかね。都合がいいので今回はスルーしておきますが。


「では、全員参加ということでいいですね。この特別授業は明日の一時間目の授業の時から始めます。その時間までに戦闘服に着替えて第一訓練室に来てください」


 私はそう言って、今日のところは終わりということにしました。

 明日から忙しくなりそうですね。



 教室から職員室に戻る途中、珍しい人に会いました。


「カンティルさん、お久しぶりです」

「おお、レインか。もうすっかり先生やってるじゃねえか」

「いえいえまだまだですよ」


 会ったのは『土王』の称号を持つ探索者、カンティルさんでした。

 カンティルさんは同じ四大魔導士の称号を持つ以外にも共通点があり、私が子供のころからの知り合いということもあり、お互い気安い関係です。


「カンティルさんはどうして学園に?」

「ああ、ちょっと頼まれごとをされててなぁ……引き受けるか迷ってんだ。そうだ、せっかくだから先生になったお前にも相談してみるか。今夜空いてるか?」


 そう言われ、今夜カンティルさん行きつけの酒場で相談とやらをされることになりました。

 それにしても、カンティルさんから相談ですか。

 珍しいこと……というより初めてかもしれませんね。あの人は周りに相談なんてめったにしない人でしたから。全て自分でやって何でもこなしてしまう人ですからね。私が唯一尊敬している人でもあります。

 そんな人から相談なんて言われたら悪い気どころか、何だか認められたような気がしてうれしい気持ちです。

 相談内容が気になるところではありますが、できるだけお力になれるようにしましょうかね。



 そして夜、仕事が終わった後例の酒場に行くとすでにカンティルさんはそこにいました。


「お待たせしてすいません」

「いやいや、お仕事ご苦労さん。ま、まず一杯飲もうや」

「はい」


 そう言って適当に料理などを注文してもらう。

 私が注文しても良いのですが、この体格ですからね。お店の人は何度か来ているので事情を知っていますが、周りの客の目もあります。

 別に法律などで禁止されているわけではないですが、あまり子供にお酒は良くないということで不必要に止められてしまうかもしれませんからね。


「ふー。久しぶりにお酒を飲みましたね」

「ドワーフの癖に普段酒飲まねえっても珍しいもんだよな」

「分かってて言ってますよね?私もお酒は好きですが、なかなか周りの目もあって買えないんですよ」

「はは、悪い悪い」

「それに、カンティルさんもエルフなのにお酒飲んでて良いんですか?」

「俺はハーフだから良いんだよ」

「それを言ったら私もハーフなんですが」


 そうやって軽口をたたき合いながら、二人で笑い合う。

 こうやって誰かと穏やかな時間を過ごすのは久しぶりだ。

 カンティルさんとのもう一つの共通点はお互いが人間族とのハーフであることだ。

 私は人間族と小人族ドワーフのハーフ、カンティルさんは人間族と森人族エルフのハーフだ。だから同じ境遇の者同士、よく気が合う。


 通常、ハーフ族は忌み嫌われる。

 それは、ハーフ族自体が少数かつ生まれにくいということもあるが、一番は宗教の影響だ。今は人間、ドワーフ、エルフのどの種族もダンジョンを神または神聖な場所とした宗教が多数派を占めている。特にエルフはその影響が強く、ハーフ族は根絶やしにすべきという過激派も一定数いる。一方で人間はそもそも無宗教の人も多く、アース教(人間ダンジョンを神聖な場所とする宗教)の人間でもその信仰にいい加減な者も多い。なので、ほとんどのハーフ族は人間領のどこかに住んでいる。


 そもそもなぜ宗教関係者にハーフ族が嫌われているのかと言うと、理由は色々ありますが、一番の理由はダンジョンに入れないから、です。

 いえ、入れないというのは語弊がありますね。

 正確に言うとダンジョン内では身体が重くなり、魔法がほとんど使えなるのです。そう、丁度シールリングを着けているような状態に。


 それを見て、やれ私たちは神に嫌われているのだの、穢れた種族だのとよく言ってくれるものです。

 まったく、馬鹿馬鹿しい。


 おっと、少し不満が募り過ぎましたかね。

 せっかくの楽しい時間です。

 切り替えていきましょう。


「それで、相談とは一体何のことですか?ダンジョン内のことなら私はあまり相談に乗れませんよ?」


 カンティルPTは最近、ダンジョンに潜りっぱなしなのにもかかわらず、あまり成果が出ていないと聞いています。相談内容はそのことかと思っていたのですが――


「いや、そっちはようやく上手くいきだしてきた頃だ。やっと身体がダンジョン内の環境に慣れだしてきたからな。まあ、それでも外での実力の半分は出せるようになってきたってところだが……半年後くらいには60階層にも挑めるくらいには来たぜ」


 ようやく攻略の目途が立ったというところなのだろうか。

 それと同時に、やはりハーフ族のダンジョン攻略は厳しいことを思い知らされる。

 これでもカンティルさんはハーフ族であると同時に勇者候補でもありますので、ハーフ族のデメリットはかなり軽減されているはずなのですが。


「相談ってのは二年後の話だ。俺に先生やってみないかって提案されててな。どうしたもんかと思って、お前にも相談してみようかなってなったってわけだ」

「二年後……もしかしてアリーシャ王女ですか?」

「正解だ」


 ハーフ族のもう一つの特徴として、魔力量が強大で魔法制御力が高いというものがある。また、エルフの種族的特徴として義理堅く、忠誠心が高いというものがある。これはハーフエルフにも通じる特徴であるため、この王国では特に王族の護衛として重宝されてきた。

 私もハーフ族繋がりでレナード王子の護衛に就いていた時期がある。


「そうですね。この学園は評判通り実力主義を貫いているので、ハーフ族にとってはかなり良い環境だと思います。私もかなり自由にさせてもらっていますしね。生徒も優秀な者が多いですし、なかなか教えがいがありますよ」

「ほーう、ずいぶん気に入ってるみたいじゃねえか」

「そうですね。……あ、二年後と言えば面白い話を生徒から聞きましたよ」


 私はせっかくなのでリックから聞いたあの話を話してみることにしました。


少し中途半端ですが、長くなってきたのでここで区切ります。

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