第三十一話 属性魔法
昼休憩を挟んで今から本日最後の授業『魔法学』の時間だ。
おれにとってはメインイベントと言っても良いだろう。
だって、魔法に関する授業だぜ?
これぞ、ファンタジーって感じだよなあ。
っていうか、武道学も教養学もやったことは走り込みと歴史の授業だったしなぁ……。今度こそ、ファンタジーらしい楽しそうな授業を頼むって感じの授業であったが。
始まった授業内容は属性魔法についてのものだった。それは別にいいんだが……
……
知ってる。
……
知ってる。
……
知ってるんだよ!!
既に知っていることについて話される授業程、つまらないものはないと思う。
いや、分かるよ?一回目の授業だし、常識になっているような属性相性や、初級、中級、上級の区分の仕方、下級、中級、上級の区分の基準とかを説明しなきゃならないのはさ。
まあ、初級と下級の違いは最近フォル君に聞いて知ったんだけど。
おさらいをするとこんな感じだ。
すべての人間が扱える属性は四属性ある。
それが火属性、水属性、風属性、土属性の四つだ。この四属性は基本四属性と呼ばれる。それに加え、一部の人間のみが扱う聖属性、人間以外の魔物が扱う属性魔法を纏めて魔属性と呼ぶ。聖属性は基本的に回復魔法を指していて、魔属性は色々ありすぎて一言では言えないって感じだな。ああ、一応属性が付与されていない状態の魔法を無属性魔法と呼んだりもする。身体強化魔法や支援魔法はこれに分類されている。
そして、基本四属性には相性がある。水属性は火属性に強く、火属性は風属性に強く、風属性は土属性に強く、土属性は水属性に強い。これは単純に火がついているところに水をかけたら消えるとかいう自然法則を越えて作用する。
例えば、自然発火して燃えている物と人間の属性魔法によって燃えている物とでは水属性魔法での相殺しやすさが変わるということだ。無論、属性魔法同士の方が相殺しやすい。
多分、火属性魔法で起こる火や、水属性魔法で生成できる水は自然界のものとはつくりが異なるんだと思う。だって、【火球】に【水球】をぶつけると、何もなかったかのように消えてしまうんだから。本当だったら、煙がでたり、ボシュって音が鳴ったりするはずなのにね。
あ、込められてる魔力量によっては【水球】で【火球】を相殺できなかったりもする。だから、とんでもない魔力量を持ったものならリアル「これは上級魔法ではない。初級魔法のただの【火球】だ」的なこともできたりする。というか、実際にされた。あれは、びびった。【火球】を撃ってきたときに普通に【水球】で撃ち落とそうとしたら、シューとか音を立てて威力は減衰したものの、まだこっちに向かってきてたんだもの。あれは、反則。
シエルめ……。
また、これはフォル君から聞いた受け売りになるけれど、初級と下級の違いは基準による。初級魔法は制御が簡単な魔法のこと、下級魔法は威力が低い魔法のことを言う。
初級魔法と中級魔法の違いは相性の悪い――土属性魔法に対する風属性魔法のような関係の中で決められている。具体的に言うと、全く同じ魔力量による魔法であると仮定して、風属性下級魔法である【突風】を防ぎきれるものが土属性中級魔法となるわけだ。上級魔法も同じで相性の悪い属性の中級以上の魔法を相殺できる魔法が上級魔法となるわけだ。
こんな感じの話を先生は実演を交えながら丁寧に教えてくれた。
「では皆さん、基本四属性魔法のそれぞれ一番基礎となる魔法は何か分かりますか?」
これも、知ってる。
火属性は【火球】、水属性は【水球】、風属性は【操風】、土属性は【地面壁】だな。風属性の【繰風】は操る規模や環境によって制御難度が上がるから【送風】が一番の基礎魔法だと言う人もいるが、魔力消費量の関係から【繰風】を基礎とすることが多い。
あとは、まあ【送風】はなぜか風属性に適性がある人でも魔力消費量が減らないというのも理由の一つかな。ただでさえ風属性魔法は威力が低いものが多くて魔力を多めに込めなければならないことが多いってのに。
「そうですね。【火球】、【水球】、【繰風】、【地面壁】がそれぞれの属性の基礎となります。では、それぞれの属性の魔法のコンセプトは何か分かりますか?」
コンセプト?
何だ、それは知らないぞ?
コンセプトってたしかその根本にある概念とか考え方って意味だよな。そんなのあるのか?あるから質問してるんだろうけど。
う~ん、分からん。
おれが悩んでいると、レナード君が手を挙げて答えた。
「火属性は『破壊』、水属性は『生成』、風属性は『操作』、土属性は『変形』だな。それぞれの基礎となる魔法のことを考えればそんなところだろう」
ふむふむなるほど、納得できる話ではあるな。
「はい、そうです。属性魔法はそれらのコンセプトから外れれば外れるほど、魔力消費量が大きくなり、逆にその属性に適性があればそのコンセプトの能力を伸ばしやすくなると私は考えています」
なら、おれは恐らく水属性に適性があるから『生成』能力を伸ばせば良いということになるが……具体的には何をすれば良いのか想像がつかないなあ。
ちょっと聞いてみるか。
「先生、おれは多分水属性に適性があると思うんですけど、生成を伸ばすって具体的に何をすれば良いんですか?水魔法を使っていたらほとんどの場面で水は生成することになると思うんですけど」
「ああ、少し勘違いしている生徒がいるようですね」
勘違い?どこを勘違いしているのだろうか?
「それぞれの属性のコンセプトはその属性の話に限りません。例えば水属性の『生成』に適性があるならば、火属性魔法の【火球】の生成や、土属性魔法の【土壁】の生成にも適性があることになります」
「そ、そんなこと聞いたことがありませんわ」
キャルが驚きの声を上げる。
「そうでしょうね。証拠が不十分なのでまだ仮説に過ぎませんし。ですが、もうすぐ証明されることになると思いますよ。すでに水属性、風属性、土属性はその奥義まで習得している者がいますからね。あとは火属性……アイナさんあたりがその奥義にまで達することができればこの仮説も証明されるのでしょうが」
そんな話は初めて聞いたな。
そして、水属性の奥義をすでに誰かが習得済みということはもしかして――
「もしかして、水王である先生はその奥義が使えるんですか?」
「はい、使えますよ。今日は最後にそれをお見せしようと思っています」
それを聞いてクラスメイトの間で少しだけ「おお」と歓声が上がった。
「ああ、奥義と言ってもそんな派手なものではないのであまり期待しないでくださいね」
まあ水魔法は地味なものが多いからしょうがないかな、などと思っていると、その奥義は予想以上に意外で、衝撃的なものだった。
「いきますよ、水魔法・奥義【生成】」
そう言って先生が作り出したのは――もう一人の先生だった。
分身と言ったら分かりやすいだろうか。
とても水属性魔法で作ったとは思えないほど精密に、少なくとも見た目上は作られていた。
いや、ちょっと待て。
これが水属性魔法だというのならば。
水属性は水から変化したものという前提自体が崩れないか?
人間が想像できることは、人間が必ず実現できる。
そんな言葉が自然と思い出された。多分前世の記憶で、誰か偉い人が言った言葉だったと思う。
前世でその言葉を聞いた時はそんなわけないだろ、などと考えていたと思うが。
魔法が現実に存在するこの異世界ならばどうだろうか。
また、それと同時に魔法は自分の想像力次第というファンタジー小説の半ば常識となっていることも思い出した。
魔法は――自由。
これまでもおれは魔法改変など割と自由に魔法を扱っている方だと思っていたが。
もっともっと魔法は自由に使えるものなのかもしれない。
そう考えると何だがワクワクしてきて、無性に楽しくなってくるのであった。
読んでいただきありがとうございます。
これで第三章は終了です。三章だけで八カ月もかけてしまい、申し訳ありませんでした。
そんな中でもブックマーク、いいねを付けてくださる方もおり、とても嬉しかったです。
四章は年明けからになると思いますが、引き続き読んでいただければ嬉しいです。




