表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第一章 『旅立ち』編
3/50

第二話 前世持ち

PV数を見たら本当に読んでくださる人がいました。嬉しいものですね。

思ったよりパソコンで読んでいる人が多かったのは意外だったなあ……

 目が覚めた時には自分の家の布団の中で眠っていた。どのくらいの時間がたったのだろうか。

 ん?横に何か温かい感触があるな。隣で誰かが寝ているようだ。こんなことをする奴なんて一人しかいないんだが。

 気持ち良く寝ているようなので、起こさずに起きようとするが、逆に掴まれてしまった。

 

「……シエル、実は起きてるよな」

「バレましたか。さすがは兄さんです」


 何がさすがなのか分からないが、とりあえず起きてくれたようだ。シエルはおれと二つ違いの妹で、今は十歳だ。そして、生まれつき目が見えないという障がいがある。

 しかし、その影響か魔力には敏感で、知り合いならばどこに誰がいるのか分かるらしい。おれも魔力には敏感な方だが、シエルには敵わない。

 また、魔力を周囲に展開してやれば、ある程度の広さの空間すらも視力なしで把握してしまう。

 このことが分かった時の父さんと母さんの喜びようと言ったらなかった。どうやら両親はシエルをこのように産んでしまったのは自分たちのせいだ、とかなり責任を感じていたらしい。

 なんにせよ、普通に生活できるようになりそうだと安心したのも(つか)の間、驚くべき事実が発覚した。

 シエルいわく、家族以外が発した魔力では周りの空間の把握まではできないという。特に、自分の魔力では目の前に建物があってもわからないらしい。

 しかも、父さんは体外での魔力コントロールがとても苦手であるため、実質的には、おれか母さんのどちらかが常にシエルのそばにいなければならなくなった。

 不幸中の幸いと言うべきか、おれも母さんも体外での魔力コントロールが上手かったため、今のところ大きな問題にはなっていない。

 もちろん、成長するにつれてシエル自身で空間把握ができるようになるかもしれない。だが、今のままでいいとは家族の誰も思っていない。その解決策の一つがダンジョン攻略なのだが……いや、可能性の低い話だ。今はおいておこう。


 とにかく、おれはシエルのために魔力を放出させる。おれもだいぶスムーズに魔力を操作できるようになったものだ。


「そういえば、いつもどうやってこの部屋まで来てるんだ?今日は母さんと一緒に来たのかもしれないが、たまに母さんがいない時にも来ることがあるだろう?」

「それは当然、この家のどこからでもこの部屋に来れるよう、歩幅と歩数をすべて記憶しているからに決まっているでしょう」


 いや、全然決まってないし、歩幅と歩数をすべて暗記するなんて手段を普通はできないと思うのだが。しかも、この家は父さんがダンジョンで得たお金のほとんどを使って建てた家なので、二階もあるし、かなり広い方なんだけどなぁ。

我が妹ながら、将来が末恐ろしいな。


「そんなことより、なぜ兄さんは倒れたんですか?心配したんですよ」

「ん?あれ?なんで倒れたんだっけ?」


 えーと、確かステカメで撮られたあと急に頭が痛くなって倒れたんだよな。ああ……そういえばあの時、誰かの記憶が頭に入ってきたんだよな。

 18歳くらいまでの記憶で、しかもこの世界とは違ういわゆる異世界の人物の記憶っぽい。なにせ魔法やダンジョンについての記憶がその人物には一切なかったからな。

 いや、その人物が読んでいた漫画や小説などの創作物の中にはよく出てきたが。でも、完全に他人という気はあまりしないんだよな。もう一人の自分という表現が一番近いだろうか。

 それはさておき、問題はそのことをシエルに話すのかどうかだ。

 他人の記憶を持っていると知られたら気味悪がられたりしないだろうか。そもそもこんな話を信じてもらえるだろうか。

 迷っていると、シエルから再び声を掛けられた。


「心当たりがあるんですよね?できれば私に話してほしいです。どんなことがあっても私が兄さんを嫌いになることはありませんから」

「そっか。ありがとう」


 そう言って、安心させるようにシエルの頭を撫でる。相変わらずおれの心を読むのが上手いやつだ。恐らくおれが懸念していることまで察したのだろう。どうやらおれにポーカーフェイスの才能はないようだ。

 これは全て話すしかないだろう。話さない選択肢を採ってシエルとの関係がギクシャクするのも嫌だしな。


 そういうわけで、今日の流れをすべてシエルに説明した。もちろん、その誰かが異世界人かもしれないということも含めてだ。

 シエルは黙っておれの話すことを聞いてくれていたが、おれが話し終えると、おもむろに口を開いた。


「そうでしたか。よくわかりました」

「えっ、こんな話を信じてくれるのか?」

「当然でしょう。兄さんはこの状況で私に嘘を吐くはずがないですから。それに、もしかしたらお父さんはこうなることを予想していたのかもしれませんよ。異世界人の記憶を持っていることまで予想していたのかは分かりませんが」

「そうなのか?どうしてそう思ったんだ?」

「そもそもお父さんの性格的に仕事を放り出してまで、わざわざ兄さんたちの適性診断を見に行ったということが納得できません。普段なら後で結果を聞けばいいというでしょう。それに、ステカメで撮られた後、直ぐに支えた人物とはお父さんのことでしょう。そんな行動をとっさにできる人はそう多くはいませんから」


 言われてみれば、確かにそんな気がするな。なら、そんなに気負う必要はないのか?

 やはり、シエルに話して正解だったな。おれだけじゃ絶対に気づかずに、余計な心配をしていたかもしれないしな。妹に助けられる兄というのは、少々かっこ悪い気がするが。

 その分、シエルが困っていた時にはしっかり助けることにしよう。


「なら、何であんなことが起こったのかまず父さんに聞いてみるとするか」

「それがいいでしょう。もうすぐお父さんも帰ってくる時間ですし。それと、話してくれてありがとうございました」

「お礼を言うのはこっちの方だろ」



 父さんが帰った後、家族四人で夕食となったので、早速おれが気絶した原因について尋ねてみた。


「父さんはおれが気絶した原因って知ってるの?」

「ああ、すまん。まだ言ってなかったな。気絶した原因はステカメの副作用みたいなものだ」


 ステカメの副作用?ステカメに副作用なんてあったのか。ステカメは薬じゃないんだがな。まあ、意味は伝わるしそれはいいか。


「副作用があるなんて聞いてなかったんだけど」

「まあ、めったにあることじゃないからな。ステカメの機能を詳しく説明すると、その人物の魂の状態からダンジョン適性を調べているらしい。その時に前世持ちの人間の魂の場合、前世の記憶を刺激される場合がある。そうなった場合、前世の記憶が一気に頭に入ってくるから、急に頭が痛くなって、気絶してしまうんだとよ。後遺症は何もないから安心しろ」


 あの記憶は前世のおれの記憶だったのか。通りで他人の気がしなかったわけだ。後遺症が何もないというのは、良かったな。前世の記憶によると、二重人格になったり、自我を失ったりすることもあるそうだからな。(漫画情報)


「でもおれ、十八歳くらいまでの記憶しか無かったよ?」

「そうなのか。まあ、記憶の一部しか思い出せない場合もあるって聞いたからな。だが、喜べ。お前もアストロ学園への推薦をもらったぞ」

「え、おれ総合適性Bランク以上だったの⁉」

「いや、総合適性はCランクだったが、前世持ちはCランク以下でも推薦をもらえるんだ。十八歳までの記憶しかないなら覚えていないかもしれないが、魂が転生できるのはダンジョンで死んだ者だけだ。つまり、探索者としての知識や技術を身体が覚えている場合が多いということで例外として推薦がもらえるんだ」


 やった!おれもソラと一緒にアストロ学園に入学できる!


 ん?魂が転生できるのは『ダンジョンで死んだ者』だけ?

 前世ではダンジョン攻略の経験がないどころかダンジョンすらなかった。

 持っている記憶より後に、ダンジョンが急遽発見されて、探索者になっただとか、異世界転移してダンジョン攻略していたという可能性もなくはないが、普通あり得ないだろ。

 つまり、おれの身体には探索者としての知識や技術もない可能性が高いってことだ。


 だとしたら、おれの前世がダンジョンのない世界の異世界人だということがばれたら推薦を取り消されるんじゃないのか?

 これはやばいな。


 おれは素早くシエルの口に、魔力に敏感なシエル以外はわからないレベルの魔力を送り、黙っておくようにメッセージを送る。

 シエルが小さく頷いたのを横目で見て、話題の転換を図る。


「それは良かった。それより、シエルが言ってたんだけど父さんはおれが前世持ちかもしれないって予想していたの?」


 あえてシエルのことを口に出すことで、おれがシエルに魔力を送ったことがばれたとしても、口止めをしたことがばれないようにする二重のカモフラージュ。

 これで多分大丈夫……なはず!

 そんな心配をよそに父さんは気にした様子もなく、おれの質問に答えてくれた。


「リックは大分前世持ちの人物の特徴を持っていたからなぁ。小さい頃から泣くことが少なかったし、文字を書くことや計算を覚えるのも周りに比べて早かった。それに、性格も妙に大人びていたしな」


 そういえばそうだったな。

 つまり、ヒントはたくさんあったと。

 いや、その説明だと現時点でおれ以上に大人びていて、文字を覚えることも計算も速いシエルは何者になるんだよ。ループ能力者で人生二周以上してますってか?

 まあ、たとえシエルの前世が何者でも、おれはシエルがそうしてくれたように受け入れるつもりだけどな。




 その後は母さんも交えて、学園生活への準備について話し合った。

 そんなわけで、おれは前世持ちでありながら、前世は異世界人ということを隠して生きていくことを決めた。


前世持ちといってもその記憶の一部を知識として『知った』感じですので、精神年齢はプラス2~3歳のイメージです。主人公が大人びているのは本人の性格が大きいです。前世持ちでもベースは子供ですのでもっと子供っぽい人はいます。

また、ステカメは前世持ちに対して副作用があるというだけで、それはきっかけに過ぎず、前世持ちの人間は元から父さんが言ったような傾向を持っています。リックがステカメを見て既視感を覚えたのもそれが前世のカメラに似ていたからです。

分かりにくいと思ったので、補足しておきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ