第十九話 入学式
今日はついに入学式の日だ。
この日が、初めておれたちの学年の生徒全員集まる日となる。
今、おれたち4人はアストロ学園の講堂に集まり、式が始まる時間を待っているところだ。4人とはもちろん、おれ、ソラ、フォル君、クラウさんのことだ。
「本当にいろんな服装の人がいるな。フォル君の言う通りだったね」
おれは周りの人を見ながらそう言う。
前世での式のイメージが先行して、こういった式典ではもっとみんなちゃんとした服装をしてくると思っていたのだが……出席者の服装は見事にバラバラだった。
式典らしくしっかりとした服装の者もいれば、おれたちのような完全に私服の者がいたり、今からダンジョンに入るのかと思ってしまうような戦闘服の者がいたり、それ、本当に服か?と思えるようなぼろい服装で出席している者もいたりした。
本当に身分問わず才能があればだれでも入学できるという学校なのだろう。
まあ、だれでもと言っても見た限り全員ヒト種で、ファンタジー好きなおれからすればエルフやドワーフ、魔族といった異世界種族が見られないというのは残念なポイントだが。
「そうでしょ。だから、気にする必要ないって言ったんだよ。式なんて言ってるけど完全に名ばかりだから」
たしかにこの雰囲気ならばどんな服装でも問題なかっただろう。でも、これまでの不安は何だったんだという気持ちもある。服装自由とは書いてあったけどさ。ちょっとモヤモヤするなあ。
「なあ、何で戦いに行くような服のやつがいるんだ?もしかしてこの後戦いがあったりするのか?」
ソラが少し期待するような態度でフォル君に質問をする。
「いや、それはないと思うよ。だけど、入学式のあと、クラス発表があってそのあとすぐに仮PTの結成があるからね。その際に自分の装備を見せたいってことじゃない?単純に見せびらかしたいだけかもしれないけど」
「戦いはないのか。そりゃ残念だ」
クラス発表かぁ~。ルームメイトは一年の時はほぼ同じクラスになるらしいからフォル君はほぼ確定らしいけど、ソラとクラウさんも同じクラスだと良いなあ。
「そうだ!もし同じクラスになったらこの4人で仮PT組もうよ。みんな強かったし!」
「それ良いな!そうしようぜ」
クラウさんの提案にソラが賛同する。
ちなみに、あの後行った個人での模擬戦では総当たりの結果、おれ3敗、ソラ1勝2敗、クラウさん2勝1敗、フォル君3勝であった。
なので、個人での強さ的にはフォル君>クラウさん>ソラ>おれという感じなのだろう。個人の力では完全に負けていたのに、よく最初のタッグ戦に勝てたものだ。
まあ、クラウさんとソラの戦いではソラが魔法なしで戦っていたので、魔法ありだとどうなっていたか分からないが。
「まあ、同じクラスになれたら、な」
そんなことを話しているとステージの上に誰かが出てきた。
出てきた人物は40代くらいの男性で、丸縁のメガネをかけた人物であった。どうでもいいことだけど、この世界にメガネがあったのか。この世界で見るのは初めてだな。
その人物の登場により、徐々に騒がしかった雰囲気が静かになっていった。
そのタイミングを見計らってその人物は話し始めた。
「こんにちは、生徒諸君。私はアストロ学園、学園長のレイモンドだ。知っての通りここに集められた者は皆、才能があると証明された者たちだ。そんなお前たちが才能の無い他校の生徒や野良の探索者に負けるなどということは許されないと心に留めておけ。この学園はこの国で最もダンジョン攻略に必要な環境を揃えていると断言できる。思う存分利用したまえ。では、生徒諸君の活躍を期待している。以上だ」
そう言って学園長らしい人物はさっさと舞台から去ってしまった。
その様子に生徒たちはあっけにとられたような感じになっている。
正直、おれも同じ気持ちだ。
こういう校長や学園長といった人の話は無駄に長くなる傾向があるような気がするので、そうならなかったのは良かったが、入学式で生徒に対して歓迎の言葉も述べず、あれだけ尊大な言い方をしてすぐに去ってしまうとは思わなんだ。
「はは、変わらないなあ、あの人も」
隣ではフォル君がそう言って少し笑っていた。
「変わらない、ってあの人のこと知ってるの?」
「うん、僕は前世でもアストロ学園の生徒だったからね。その時もあの人が学園長であんな挨拶をしていたからよく覚えているよ」
「へー、そうだったんだ」
まあ、あんな挨拶をされたら嫌でも記憶に残るわな。
「それに、徹底した能力主義者かつ合理主義者であることでも有名だよ。先代の方針をさらに強化させた感じだね。さっきの演説を聞く限り、その方針もあんまり変わってなさそうだ。昔はちゃんとした式典も行っていたみたいだけどあの学園長がそのようなものはダンジョン攻略には不要ってことでこんな感じになっちゃったみたい」
「すごく癖のある人物っぽいね。おれ、適性Cランクだし、ちょっと不安になってきた」
「個人よりも学園自体の評価を気にする人だから、多分個人で関わることの少ない人物だと思うけどね」
小声でフォル君とそんなことを話していると、また誰かが出てきた。
「これにて入学式は終了です。退出の際は自身のサイズに合わせた制服をワンセットお持ち帰りください。なお、講堂を出てすぐの場所にある掲示板にてクラス発表の用紙が貼られています。また、午後1時からそれぞれの教室にてHRが始まります。それまでにお集まりください。それでは、順に退出をお願いします」
あ、本当に終わった。
めちゃくちゃ短かったな。というか、集合時間までまだ3時間近くあるんだけど。
……まあ、とりあえずクラス分けを見に行くか。
●
クラス分けについて書かれている掲示板の前の人だかりがまばらになってきたところで、おれたちもそれを見に行った。
「お、俺は一組だ。でも、おまえらの名前はなさそうだな」
「あ!あったよ。ボクは四組みたい。フォルみんとリッキーの名前も四組のところにあるよ!」
「あー、じゃあソラだけ別のクラスになっちまった感じかあ」
残念。全員が同じクラスではなかったか。
まあ、そううまくはいかないよな。
一応、自分の名前を確認しに行く。
四組の名簿を見るとすぐに自分の名前は見つかった
『出席番号36番;リック 性別:男 ダンジョン適性:C』
……なぜか名簿欄には名前と共にダンジョン適性が併記されていた。見たところ、ダンジョン適性がCランク以下なのは四組ではおれとフォル君だけなのですごく目立っている。
何で名簿欄にダンジョン適性を載せるんだ?どう考えても不要だろ!!
「なあ、何で名簿欄にダンジョン適性が載ってるんだ?書いてある意味がないと思うんだけど」
「それは、この後の仮PT結成に活かせってことだと思うよ。多分、適性が高い人同士でPTを組んでほしいんじゃないかな。こっちにはダンジョン適性の詳細も書いてあるし」
フォル君がそう言うので、おれもそっちを見に行ってみる。
あ、本当だ。【備考】も併せて全部書いてある。
そういえば、ソラの【備考】はどんな風に書かれてあるんだろう。もしかしてそのまま『なんっちゃって勇者』って書かれてあるのかな?
ソラの名前も探してみるとそれもすぐに見つかった。【備考】は書かれてある人自体が少ないから見つけやすいな。
そして、ソラの【備考】欄を見てみると、そこには『勇者候補』とだけ書かれていた。
大分オブラートな表現になっているなあ、と思って感心しているとフォル君が声を掛けてきた。
「これからどうする?僕は教室に行くつもりだけど」
「教室に行ってなにかあるの?やることなさそうなんだけど」
「いや、教室に行けば仮PTのメンバー先に決めとこうって人がいるはずだから退屈はしないと思うよ」
「あ、本当だ。下にそう書いてあるね」
「じゃあ、俺も教室に行こうかな。どんな奴がいるのか見てみたいし」
そんな訳でそれぞれ教室に行くことが決まった。
さて、どんな人がクラスメイトになっているのかな。
少し中途半端ですが登場人物も増えてきたので、ここで二章は終了です。
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