第十八話 勘違いと魔法の階級分け
「ねえ、これどうやって戻るの?」
模擬戦が終わり、魔力体を消そうとしたのだが、どうやったらいいのか分からなかった。
魔力体を出している間、生身の方は魔力を使えない状態になるので、少し不安だったのだ。
まさか無理やり破壊するしかないのだろうか?
「ああ、それならこっちに来て」
「おいおい、そう言って攻撃するつもりじゃないだろうな?消滅させるしか方法がないんなら自分でやるぞ?」
「そんなことしないって!僕を何だと思ってるのさ」
「いたずら好きな人?」
「それは否定しないけど、今はしないよ。ほら、やり方を教えるよ。まずは本体と魔力体の右手同士で握手してみて」
「こう?」
フォル君の言う通りに右手同士で握手をする形を取る。
何か自分同士で握手をするって違和感があるな。
「そうそう。そのあと、魔力体の方から本体の方に魔力を流す感じでやってみて」
言われた通りにやってみると、すぐに魔力体は消滅してしまった。
そして、生身の方に魔力体の時の記憶が流れ込んでくる。ステカメで撮られた時に前世の記憶を思い出した感じに似ているな。
あの時とは量が桁違いだが。
「あれ?少しだけど魔力が回復してる?」
「そうだよ、魔力体に残っていた魔力は本体の方に帰ってくるみたい。他人だと魔力の受け渡しはできないけど、魔力体と本体だったら魔力の受け渡しができるんだよ。どちらも自分の魔力だからかな?」
「へー、そうなんだ」
まあ、今回の場合魔力体の方に魔力がほとんど残っていなかったので、回復量は微々たるものであったが。
「そういえば、最後どんな形で相討ちになったんだ?」
「あ、それボクも気になる!フォルみんが負けることってあまりないからね」
おれに続いてクラウさんも説明を求める。
「お!聞きたいか。なら説明してやる。まずフォルに近づいた時、リックなら絶対下から魔法で不意打ちを仕掛けると思って跳び上がったんだ」
「ああ、急に跳びあがったことには驚いたよ。そのあと、地面が凍ったことにもね。不思議だったんだけど、どうやってあの場所に魔法を発動させたの?」
「おれは足先からでも魔力操作できるんだ。そういう装備もしてるしね。だからあの時は足下から地面を通して魔法を発動させたんだよ」
「へえ~。たしかにそれは不意打ちには便利だね。僕も今度やってみようかな」
「フォル君ならすぐできるようになると思うよ。僕より魔力操作上手だったし」
「ねえ、それよりその後どうなったの?」
おっと。話が脱線してしまったな。クラウさんの言う通り、話を戻そう。
「そのあとは単純だよ。凍った地面に滑ってバランスを崩した僕を跳びあがった勢いのまま一刀両断したってだけさ」
「ちょっとずらされたけどな。そのせいで消滅まで時間が出来て俺もやられちまったってわけだ」
「何とか一矢報いたかったからね。それにしても、今回は本当連携力で負けたって感じだったな~」
「今度は個人戦もやろうぜ!」
「あ、いいね!明日にでもやろうよ、ソラ君!」
「おう、絶対やろう」
どうやら、明日もここへ来ることになりそうだな。このメンバーでそれぞれが個人戦をやると、おれが全敗しそうなんだが。
「ま、今日のところはみんな魔力も少なくなっていることだし、自分の部屋に戻ろうか」
フォル君のそんな言葉をきっかけに、おれたちはまた明日会う約束をして解散した。
●
その日の夜、おれは寝る前に家から持ってきた本を取り出し、読むことにした。リビングで本を読む体勢を整え、本を読もうとしたところでフォル君に声を掛けられた。
「本、読むんだ?どんな本を読むの?」
「魔法に関する本が多いかな?今は『面白い魔法の使い方辞典』って本を読んでる」
この世界でも前世の世界ほどではないが、平民でも娯楽本を持っていることが珍しくない程度には本は普及している。
「へー、どんなことが書いてあるの?」
フォル君も少しこの本に興味を持ったようだ。
「水魔法でカラフルな色の光を発生させる方法とか煙を出す方法、火魔法で白い炎や青い炎を出す方法とかだね」
カラフルな色の光は「虹」、水魔法で出る煙は「霧」のことだ。
この本は化学を魔法で再現する方法が結構載っていたりする。別に現代兵器を再現しようとかそんなつもりはないが。
そもそもおれに現代兵器の仕組みについての知識なんてほとんどないしな。そんな半端な知識なら魔法を使った方がよっぽど強い。
なんなら「虹」や「霧」の仕組みもこの本で初めて知ったし。火が青くなったり白くなったりすることはさすがに知ってたけどな。
「それらはどうやってできるの?」
「カラフルな色の光を作るには、太陽を背にして細かい水の粒を多く発生させるイメージ、水魔法で煙を作るには、水蒸気を発生させてそれを冷やすイメージ、白い炎や青い炎は通常の火魔法を発動する時よりも多く魔力を溜めて温度を上げるイメージでできるみたいだよ。あ、魔力を溜める代わりに風魔法で空気を集めても良いみたいだね。調整が難しいらしいけど」
「うわぁ……結構どれも難しそうだね。水蒸気を冷やすとかイメージできる気がしないよ」
たしかに水蒸気とか目に見えないものをイメージするのはとても難しいんだよな。イメージだけじゃなく水蒸気はただの「水」からかなり離れているから魔力操作の部分でも難しいのだが。基本四属性の魔法はそれぞれ定型の火・水・風・土があり、そこから変化を加えれば加えるほど比例的に難易度は増すからな。
「おれが使っているのを見てイメージさえつかめばフォル君ならすぐできると思うけどね。三重魔法できるくらいだし魔力操作はお手の物でしょ?」
「あれ?たしかに三重魔法はできるけどそれをリック君に言ったことあったっけ?」
「え?模擬戦の時に【土盾】と【火球】二発を同時に使ってたでしょ?」
「それだと二重魔法ってことになるはずだよ。同種の魔法を二発同時に発動させるのは違う魔法を発動させるよりずっと簡単だからね」
たしかにそれはそうかもしれない。同種の魔法だとイメージはそのままでいいし、あとは魔力操作するだけだけらな。これまでは複数人に支援魔法を掛けることはなかったから(ソラ以外の友達は魔物との戦いを許可されなかったし、シエルや父さんは支援魔法を必要としなかったため)試したことなかったな。
これは盲点だった。
「そうだったんだ。でもフォル君は三重魔法できるんだよね?何で模擬戦の時使わなかったの?」
「戦闘時に使えるのは二重魔法までかな~。それも初級魔法だけしか今は使っていないね」
「それは魔力操作が難しくなるから?でも初級魔法でも【火盾】とか難しくない?風属性攻撃魔法防ぐのに使えるからよく使うんだけど魔力操作が難しいんだよ。何かコツとかない?」
「ちょっと待って。【火盾】は中級魔法だよ。何か勘違いしてない?」
「え、でも魔法書には下級魔法のページに書いてあった気がするんだけど……」
「下級魔法と初級魔法は全然違うよ!!」
あれ?そうなの?
完全に一緒だと思ってたんだけど。
「いい?まず、魔法は魔力操作の難易度やイメージの難しさで初級・中級・上級に分けられているんだ。【火盾】なんかは、イメージは簡単だけど火で防御できるように魔力操作することは難しいから、中級に分類される。中級制御魔法といったりもするね」
「ふむふむ」
「次に、威力や耐久力、効果範囲によって下級・中級・上級に攻撃魔法と防御魔法は分かれているんだ。【火盾】は耐久力もそんなにないし、効果範囲も狭いから下級防御魔法ってことになる」
「なるほど。ややこしい!」
どうしてどちらも中級、上級って名前にしたんだ!
いや、だからって高級とか神級とかにされても分かりにくかっただろうけどさ。
「どっちで呼ぶのが主流なの?」
「う~ん。何となくだけど制御魔法の方を略すことの方が多いかな。でも、攻撃魔法は下級・中級・上級で呼ぶことが多いと思う。だから、攻撃魔法以外は制御魔法の方の分類を使えばいいんじゃないかな?」
「じゃあ、そうするよ」
「まあ、階級分けを気にする人もそんなにいないと思うけどね。一応、学園の魔法の授業でそういう風に習うと思うけど、使い手によって変わってくるものだし」
そういうものか。
まあ、階級分けについて詳しいことは学園の授業でも学ぶみたいだし、その時にでも知ればいいだろう。
それにしても、今日は新たに知ることが多かったな。
学園生活も楽しみだ。
魔法については後でまとめたものを書きます。




