第十六話 作戦会議
春休みもうすぐ終わるのに全然ストーリー進んでない気がする…。
こんなペースで書いていつ完結するんだろうとか考えている今日この頃です。
「おっ、ここが空いてるみたいだね。ここにしようか」
「俺たちはどこでもいいぜ」
フォル君が選んだのは第三訓練室と書かれた部屋であった。
訓練室は現在10室あるらしく、それぞれの部屋で環境が変わるらしい。
もっとも、おれとソラは訓練室に来ることが初めてであるので、ソラがどこでもいいと言ったのはどの環境が有利なのか分からないというのが大きいであろうが。
「この部屋はボクたちも使ったことがないからどんな環境なのか楽しみだね!早速入ろう」
そう言ってクラウさんが第三訓練室の扉を開けた。
中に入るとそこはもう部屋ではなくダンジョンの中といった感じであった。壁は洞窟のようになっており、なぜか少し発光していた。明かりはそれだけであるので、全体的に薄暗く、不気味な感じがした。広さはそれなりにあり、距離を取って戦うことができる程度には広い。しかし、障害物はないので、距離を取って戦うならば工夫が必要だろう。
「暗い部屋だなー。ま、見えないほどじゃないからいいか」
「そうだね。10階層のボス部屋に似てるかな?それじゃあ、いつ始める?僕は準備万端だよ」
「ボクもだよ」
「!!あ、ちょっと待って。その前に作戦会議してもいい?」
戦闘態勢に入っていたフォル君やクラウさんには悪いが、おれはそのように申し出る。
「作戦会議?面白そうじゃん!ボクたちもやろう!」
「まあ、エリアボス戦の前は作戦会議をするのが普通だからね。そうしようか。僕たちは向こうでするから、リック君たちはあっちを使うと良いよ」
「ありがとう。そうするよ」
そう言って二人とは離れ、ソラと共に部屋の端に移動する。
「それで、何で作戦会議の時間なんか作ったんだ?いつもはすぐに始めてただろ?」
「それは個人戦の話だろ……。っていうかあのまま始めてたらおれたちは多分負けてたぞ?」
「そんなに強いのか?あいつら。ダンジョン適性は俺たちと同じくらいだっただろ?」
「強いぞ。多分、近接戦ならクラウさんはお前と同じくらい強いし、フォル君はおれとお前の2人掛かりでやっと互角なレベルだと思う」
「まじかよ」
「まじだ。さっき一瞬見せた身体強化の魔法の質は、父さんと同じくらいだったからな」
もちろん、身体強化の質で全てが決まるわけではない。父さんには剣技もあるし、ダンジョン適性も父さんの方が上なので、おそらくフォル君が父さんよりも強いということはないだろう。しかし、一瞬の身体能力でおれたちがフォル君を上回ることはないだろう。
つまり、勝つには何かしらの作戦が必要だ。
「なら、単純に俺とお前で攻撃魔法を中・遠距離から放って近づかせず勝てばいいんじゃないか?二人とも近距離用の武器だし」
二人の武器はそれぞれ、フォル君が短剣と小盾、クラウさんが短剣二本であった。一方でこちらはおれが短剣三本、ソラが長剣なので魔法なしにしても間合いはこちらが上だ。
「お前からその提案が出るとは思わなかったよ。てっきり正々堂々正面から勝負したいと言うのかと思ってた」
「相手の苦手分野を突くのは戦いの基本だってグラントさんも言ってたしな。なのに、それをしないのは手加減してるのと一緒だろ?手加減して負けるのは一番カッコ悪い」
相手の苦手な部分を突かずに勝負するのは手加減してるのと一緒……か。ソラらしい考え方だな。だからおれが多少卑怯な勝ち方をした時も素直に負けを認めていたのか。その考えに至らなかった自分が悪いと考えて。
「じゃあ、距離を取って戦うのが基本だとしてそれだけであの二人に勝てると思うか?」
「相手の一人はグラントさん並みの身体強化能力を持ってるんだろ?……かなり厳しいんじゃないか?」
「おれもそう思う。だからこの部屋の環境を利用した作戦を考えた」
「もしかして【発光】作戦か?」
「大正解!」
ソラも大分おれの考えに似てくるようになったな。
おれの戦い方は少し卑怯なところがあるので、勇者を目指すソラがおれの戦い方に染まってしまうことには思うところがないわけではない。まあ、おれの作戦をすぐに理解してくれるという意味では嬉しいことではあるのだが。
それはともかく、【発光】作戦は、以前ソラとの模擬戦でも使ったことがある作戦だ。光により相手の視界を奪い、その隙に倒すというシンプルな作戦である。だが、シンプルであるが故に使いやすいし、特にこのような暗い環境では効果はより期待できる。
それに、今のおれはロハスさんとの訓練により目が見えなくても魔力を感じることにより、敵味方の位置がある程度分かる。
だから、以前よりは攻撃の確実性も上がっているだろう。
「【発光】のタイミングは……でいいか?」
「おお!それなら確実に不意を突けそうだな」
「でも、不発になった時のために自分を中心に【風嵐】は発動させておいてくれ。それなら、やられることはないだろうから」
「おう、わかった」
ブラックウルフ戦の反省はしっかり生かさないとな。特に、おれは予想外のことが起こると動きが止まる癖があるみたいだし。
いずれは直さなければならないだろうが、今は失敗時のことも予想していくことで対処する!
それに、何となくだがフォル君には効かない気がする。まだ体内の魔力操作しか見ていないが、かなりの精度であったし前世持ちらしいから魔力によって相手の位置を把握する技術を持っていても不思議ではない。
「あとはいつも通りだ。足下には気を付けろよ!」
「おう!勝つぞ!」
●
※フォル視点
「ねえ、ボクがソラ君と戦っても良い?」
「いいけど、これは2対2だよ。リック君は支援魔法使いみたいだし、支援ありのソラ君と戦うのは厳しいんじゃない?」
「それはフォルみんがなんとか妨害してよ!できるでしょ?」
できるかできないかで言えば多分できるとは思うけど、それではコンビ戦の意味がなくない?とは思った。
けどまあ、クーはチーム戦自体がほぼ初めてだからそんな作戦でも仕方ないのかもしれない。二人で魔物と戦ったことはあるが、それぞれが個人の力で勝ったっていう戦いばかりだったからなぁ。強い魔物がいるような場所にはまだ行かないようにしていたし。
そう考えると、クーの作戦も悪くはないかもしれない。リック君たちは連携慣れしてそうだし、個人個人で戦った方が勝率高いかな。
「分かったよ。けど、ソラ君は魔法戦士みたいだし、遠距離から攻撃魔法を放たれたらどうするの?」
ソラ君は真っ向勝負が好きそうだからリック君に支援を任せて突っ込んでくる可能性もあるけど、現実的にはこの可能性の方が高いと思う。僕もクラウも魔力量が少ないことは向こうも知ってるしね。
「そりゃもちろん、避ける!避けながら接近するに決まってるじゃん!」
「範囲攻撃されたらどうするんだよ」
「範囲攻撃?何それ?まあ、避けられるでしょ!」
駄目だ。会話にならない。僕たちの村には強い魔導士の人がいなかったから想像できないんだ。
「よし、分かった。もしソラ君かリック君もしくはその両方が遠距離から魔法を放とうとしてきたらクラウはできるだけ僕の近くに移動して。全部相殺してみせるから!」
「わかった!そのあとに接近したらいいんだね」
普通なら少し無理のある作戦だが、防御に徹すれば何とかなるだろう。
前世で僕は魔導士だったからね。魔力操作には自信があるし、適性も防御力は高い方だから相殺だけなら二人分の魔法でもいけるはず。
「そうだね。あと、接近したら細かい傷を作って魔力切れを狙うといいかもしれないよ。今回は魔力5割の勝負だし」
「分かった!」
「ま、作戦はこんなもんで良いでしょ。あとは臨機応変にって感じで。フォローは任せて!」
「任せた!」
こんな感じで僕たちの作戦会議は終わった。リック君たちも作戦会議が終わっていそうな雰囲気であったので、声を掛けてみる。
「リック君、そろそろ始める?」
「そうだね。そうしよう!」
元気な返事が返ってきたので、最後にルールの確認をする。
「最後に、ルールの最終確認をするよ。相手の二人が降参を宣言するか、二人共の魔力体が消滅させた方が勝ちってことで。魔力体は痛覚などの感覚は大分弱めに設定されてるから、痛みもほとんどないよ。つまり、相手を殺すつもりで攻撃しても良いって感じでやろうか。それで問題ない?」
「おう!」
「ああ」
「いいよ」
「じゃあ、模擬戦開始!」
僕の掛け声で模擬戦は始まった。




