第十四話 フォルとクラウ
「いやいや、何で王族と同室なんだよ!?」
「そんなこと僕に言われても……」
王族ってずっと王宮で暮らしてるもんじゃないのか?というか、アストロ学園ってダンジョン攻略する人のための学校だろ?何で王族が命の危険のあるダンジョン攻略をするんだよ。こんなこと、フォル君に言っても仕方のないことだが、つい言ってしまいそうになる。
それにしても、なるほどな。
同室になってしまったのはもう仕方のないことだから、せめて部屋は別が良いということか。
案外気さくでいいやつという可能性もあるが、王族……というか貴族の常識なんておれは知らないしな。
家名があることからしてジャックという人も貴族だろうし、この二人が同部屋の方が良いだろう。うん。
「うん、じゃあ同部屋としてこれからよろしく!」
「お、切り替え早いね」
まあこいつもいきなり驚かせようとしてきたあたり、かなりのいたずら好きっぽいが、話しやすいし、悪いやつではなさそうだしな。
「それにしてもお前、王族が入ってくるかもしれないのに驚かせようとしたのか?すごい神経してるな」
「いや、それはさすがにないって分かってたよ。王族……というより貴族の人が入室するのは基本的に入学式後だしね。この時期に入寮するのは僕らみたいな田舎者だけってことさ。一応、誰かが君のことをリックって呼んでるのが聞こえたしね」
そこはさすがに確認していたのか。
貴族の人が入室するのが入学式以降ってことは、この部屋はおれたち以外貴族だから一週間位は二人で使うってことか。
「それよりこれからどうするんだ?おれは友達と後で会う約束してるんだけど」
「その友達ってアストロ学園生?」
「うん、そうだけどそれがどうしたの?」
「僕にもこの寮に一緒に来た友達がいるんだ。その友達と一緒に夜ご飯食べる予定だったから君たち二人も一緒にどうかな?」
フォル君にも一緒に入学した友達がいたのか。
学園の知り合いが増えることは良いことだし、ぜひ会ってみたいな。
おれという例外もいるが、基本的にこの学園に入学する生徒は才能がある人ばかりなので、将来のPTメンバー候補にもなるし。
「良いよ。どこ集合なの?」
「食堂。もうすぐ待ち合わせ時間だから一緒に行こう!」
「分かった」
●
その後、ソラと合流し、少し歩いたところにあるアストロ学園生向けの食堂で適当にしゃべりながらフォル君の友達を待っていた。
食堂はそこそこにぎわっているようで、周りからはおいしそうなにおいが漂っていた。
「あー、うまそうな匂いだなぁ」
「ごめんねソラ君。もうすぐ来ると思うから」
「いやいや、ソラ!お前探索者ギルドの食堂でも結構食ってただろ!」
「あれ?探索者ギルドでお昼食べたってことはダンジョンに入ったの?」
「ああ、それは……」
フォル君はかなりコミュ力が高いようで、ソラともすぐに打ち解け、三人で話はかなり盛り上がっていた。
しかし、周りの食事のにおいにつられてそろそろソラの興味が本格的に食事に移りだした時、待ち人が現れた。
「遅れてごめーん。……ってあれ?知らない人が二人いる?」
「また遅刻かよ。もうここは村じゃないんだから遅刻はしないようにって言ったはず……」
「もうそれはいいから!それより、あの二人は誰?」
現れた人物は小柄なフォル君と同じくらいの身長の人物で、髪は銀髪のショートカットであった。また、顔立ちは中性的で、男子か女子かわからない位である。
フォル君と気安く話しているのを見ると、たしかに幼馴染なんだなと分かる。
「あ、おれはリック。フォル君とはルームメイトになったんだよ」
「俺はソラ。リックの親友兼ライバルだ」
「リッキーにソーくんだね。ボクはクラウだよ。よろしくね!」
リッキーにソーくん!?
初対面でいきなりすごいあだ名をつけてきたな。
というか、おれもソラも元々名前短いんだからあだ名で呼ぶ意味ないだろ……。
「お前はまた変なあだ名を付けて……」
「別にいいじゃん!二人もそう思うよね!ね?」
初対面でいきなり圧が強いな。
こういうところは二人で似てるなと思った。
「おれは呼び方なんて何でもいいけど……」
「俺も全然かまわないぜ!」
「ほら、二人もこう言ってるし!」
「はぁ。二人が良いなら別にいいけど」
フォル君は説得を諦めたようだが、気になることを言っていたな。
ちょっと聞いてみよう。
「ねえ、あだ名を付けるのがまたって聞こえたんだけど、もしかしてフォル君のあだ名もあるの?」
「もちろんだよ!フォルはフォルみんだよ!」
「「ぶふっ」」
おれとソラは思わず笑ってしまった。
だが、意外と合っているかもしれない。
フォル君は顔立ちが整っているし、体格も小柄で細身だから女装したら可愛い感じになりそうだ。
「あ、笑った。っていうかそのあだ名はもうやめてくれよ……。いい加減恥ずかしいんだけど」
「良いじゃないかフォルみんで!おれもフォルみんって呼ぼうかなあ」
「絶対やめてよ!そんな呼び方するのはクーだけで十分だよ……」
まあ、フォルみんって呼ばれる方も恥ずかしいが、呼ぶ方も結構恥ずかしくなりそうだから実際には呼ばないかな。
だけど二人きりの時はまたそう呼んでからかうのもいいかもしれない。
「じゃあ、クラウ君も来たことだし、食券買いに行こうか」
「おう、そうしようぜ!」
「ちょっと待って!」
うん?ソラはおれの意見に同調してくれたが、クラウ君に呼び止められた。
「どうしたの?まだおなか空いてない?」
「いや、そうじゃなくて……」
「クーは一応女の子だから君付けは止めといたほうがいいんじゃない?」
クラウが言いにくそうにしているところをフォル君が補足してくれた。
というか、え?
クラウって女子だったの?
「あのー、ごめんね。一人称ボクだったから男だと思ってた」
「えーと、別に気にしなくていいよ」
「そうそう、気にする必要ないよ。というか、中身ほとんど男だし。全然女子っぽさないし!」
「そこまで言うのはひどくない?」
「でも村にいた時から女子より男子の友達の方が多かったでしょ?」
「だって話あんまり合わなかったんだもん!それよりフォルみんたちと模擬戦する方が好きだったし」
ソラと同じ戦闘好きの人なのかな?
とにかく、あまり気にしてなさそうでよかった。
「リックは観察力がねえなあ。グラントさんにも観察力は大事だって言われてただろ?俺は分かってたけどな!」
絶対気づいてなかったな、こいつ。
もし気づいてたら真っ先に指摘してくるタイプだし、何よりこうやって念押ししてくるのは気づいていなかった時の反応だ。
それにしても、ボクっ娘か……まさか現実で見ることになるとは思わなかった。さすが、異世界だな!
そんな一幕もあったが、食事が終わるころにはかなり打ち解けられたと思う。そして、全員が食べ終わり解散になりそうなところで、こんな提案をクラウさんからされた。
「ねえ、リッキーとソーくんってさ、組めば結構強いんだよね?」
「おう、俺たち二人が組めば最強と言っても過言ではないな」
「いや、過言だろ!けど、同世代の人にそう簡単に負けるつもりはないよ」
「なら、模擬戦しよ!二対二でさ!」
「よっしゃ、やろうぜ!」
あ、やっぱりそうなるのね。
うん。何となくクラウさんの性格を知ったときからこうなるような気はしてた。
横を見るとフォル君もおれと同じような表情になっていた。
だが、やる気はありそうだ。
まあ、おれも二人の強さは気になるし、ひと勝負、やってやりますか!




