第十三話 入寮とルームメイト達
アイナさんは元々父さんのPTの魔導士であったらしい。
そして、父さんのPTが解散した後も探索者を続け、今では『火王』の称号を持つほどの実力者となった。『火王』とは魔導士に与えられる称号の一つで、王国一の火魔法の使い手であることを示している。
髪が赤色であったので、火魔法が得意なのかなと予想はしていたが、まさか国一番のレベルであるとは思わなかった。
髪の色はその人物の得意属性を示す傾向がある。火魔法が得意なら赤色、水魔法なら青、土魔法なら茶色、風魔法なら緑色、聖属性魔法なら白色に近くなると言われている。しかし、おれの黒髪のように何の得意属性も示さない色や、ソラのように風魔法が得意であるにもかかわらず、髪の色は茶色に近いなど、例外が多くあくまで傾向に過ぎない。
まあ、ソラの場合は土魔法も苦手というわけではないため、これから伸びる可能性はあるが。
話を戻すと、アイナさんはその見た目通り火魔法が得意であったというわけだ。しかも戦闘スタイルはおれとは真逆で、火力でごり押しするタイプらしい。戦闘シーンはさぞ派手になることだろう。
そんなアイナさんの話で驚くべき事実が発覚した。何と、1か月ほど前に彼女のPTがついに60階層のエリアボスを倒したらしい。
アイナさんによると、そのエリアボスは悪魔であったらしい。素早い飛行能力と実体のない体に変化する能力、持っている鎌で傷つけられると魔法やポーションによる回復ができなくなる能力に手こずっていたらしい。特に、魔法やポーションによる回復ができなくなるというのはかなり厄介らしく、多くのPTが挑むことを尻込みするという状況が続いていたそうだ。
しかし、アイナさんのPTではその悪魔の機動力を遠距離からうまく奪い、最後は火属性上級魔法【極大爆炎】で一気に敵を消滅させてしまったらしい。
【極大爆炎】は威力に定評のある火属性魔法の中でも一番といってもいいほどの威力と効果範囲を併せ持つ魔法であるので、どんな相手でもくらえば即死だろう。
むしろそんな魔法が完成するまで時間を稼いだ他のPTメンバーをほめたいくらいだ。
そんなアイナさんたちのPTは現在63層が最高到達階層となっており、アイナさん曰く「未探索エリアは緊張感が全然違って楽しい!」とのこと。
おれも未探索エリアでダンジョン攻略できるように早くなりたいなあ。
そんな感じでアイナさんと話していると、思っていたよりもギルドに長居してしまったため、彼女と別れ、アストロ学園の学園寮に向かうことになった。
「寮って一人部屋か複数人一緒かどっちなんだろうな?」
ソラがそんなことを聞いてきた。
たしかにそれは気になるな。ここはアストロ学園卒業生の父さんに聞いてみるか。
「どうなの?父さん」
「父さんの時は4人部屋だったな。ルームメイトとPT組んだりして結構楽しかったぞ」
「じゃあ、誰が一緒になるか気になるなー。一緒の部屋に慣れたらいいな、リック」
「そうだな」
まあ、一人でも知り合いがいると助かるんだけどな。
性格いい人が集まったらいいけどなー。コミュ障ってほどではないと思うけど、前世では結構人見知りだって言われてたからな。
故郷の町にいた時は、人数も少なかったし、何よりソラといることが多かったから会話には困らなかったんだよな。
一人だと少し不安だなぁ。
●
学園寮の入り口に到着した。
ここがおれたちの住む場所かぁ。
何というか……思ったよりも綺麗?外観のみの話であるが。いや、築30年程度だとそこまでぼろくはならないか?でも、王都の建物は全体的にきれいな建物が多い気がする。単に新しい建物が多いというだけなのだろうか?
そんなことを考えていると、父さんが声を掛けてきた。
「じゃあ、俺はここまでだな。一年後に迎えに来るから、お前たちの成長を楽しみにしてるぞ」
「うん、それじゃあね」
「グラントさん、ここまでありがとうございました」
「おう、頑張れよ!」
父さんとはそんな感じであっさりと別れた。心配性な父さんにしては珍しいな。意識してそのようにふるまったのか、無意識におれたちをもう一人前に見てくれたのか……。
後者だと嬉しいが、おそらく前者だろうなぁ。出発前にかなり母さんにそのことを指摘されていたし。母さんは逆にかなりの放任主義だからな。
「おれたちも行くか!」
おれがソラを促して、早速学園寮の中に入る。
中に入るとすぐに受付に人がいたので、話を聞いてみることにする。
「すいません、おれたち今年この学園に入学する者なんですけど……」
「分かりました。じゃあ、入学証明書のカードを見せてくれますか?」
「あ、はい」
おれたちはリュックの中からそのカードを探す。本当はマジックバックも持っているのだが、マジックバックは高級品なのであからさまに持っていると盗難のリスクが高まる。だから、旅の途中やダンジョン攻略のとき以外はこうした普通のリュックを持ち歩いている。
そのカードを見せなければならないことは分かっていたので、直ぐに取り出せた。
「はい、これです」
「では、ここに差し込んでください。……はい、大丈夫です。リックさんにソラさんですね。部屋にご案内します」
カードから出る魔力で一致するものかどうか確かめたのか?電子カードみたいだな。
この世界の技術は前世に比べると劣ると考えていたが、そうでもないのかもしれないな。
階段を上がって、ある一つの部屋の前で案内をしてくれた人は止まった。
「この302号室がソラさんの部屋ですね。これがこの部屋の鍵です」
「ありがとうございます」
「鍵はできるだけ失くさないようにしてくださいね。この寮に関するパンフレットも一緒にお渡ししておきます。それと、4人部屋ですので中にもう生徒がいるかもしれません。部屋の変更はよほどのことがない限りありませんので、できるだけ仲良くしてくださいね。分からないことがあれば私は基本的に受付の場所にいるので何でも聞いてください」
「リックは一緒の部屋じゃないんですか?」
「リックさんは404号室ですね。次はリックさんの部屋にご案内します」
何だ、ソラと同じ部屋ではなかったのか。少し期待してたんだけんどなぁ。
「じゃあリック、また後で会おうぜ」
「オッケー。後でな」
「では、こちらです」
その後は部屋の前でもう一度ソラの時と同じようなやり取りを受付の人とし、鍵をもらって受付の人とは別れた。
そして鍵を開けて中に入ろうとしたのだが、鍵は閉まっていなかった。
誰か中にいるのだろうか?それとも単に閉め忘れ?
とにかく、鍵は開いているので中に入ることにした。
中に入ると両側に扉があり、正面にリビングがあるようだった。
とりあえず正面のリビングに行ってみたが、そこには誰もおらず、1つの机と4つの椅子があるだけの部屋であった。
これが勉強机になるのかな?と考えつつ、端に自分の荷物を置くことにした。
まずは全ての部屋を見てみようと思い、扉を開けると……
「わっ!」
「うわっ。びっくりした」
扉を開けた瞬間、誰かが待ち構えていておれをおどかそうとしてきたので、おれは少し後ずさりながらそんな声を上げた。
「あれ?反応薄い?本当にびっくりしてる?」
「まあ、驚きはしたよ」
「ふーん。ま、いいや。僕の名前はフォル。君は?」
「おれはリックだ」
「リック君、ルームメイトとしてこれからよろしくね。こっちおいでよ。色々聞きたいことあるし」
「こちらこそよろしく」
扉を開けた部屋の中にはベッドが二つあった。
ここが寝室なのかな?
「反対側の部屋にもベッドが二つあったよ。だから4人を二人ずつで分ける形になるんじゃないかな?リック君もこっちの部屋使わない?」
「全員がそろってから決めた方が良くないか?」
「いやいや、こういうのは先着順だって!それに、パンフレットに載ってるこの部屋のルームメイトの名前って見た?一人、すごい人がいるよ」
そう言われて、おれは荷物をこの部屋に持ってきた後、冊子になっているパンフレットを開く。
「ほら、ここ」
「えーと、404号室、ジャック=ヴィルシュタイン、フォル、リック、レナード=メイオール!?メイオールって王族の家名じゃなかったっけ?」
「そう、僕たちはこの国の第三王子とルームメイトなんだよ!」
うわあ。面倒くさいことになりそうだなぁ。




