第十一話 王都、クエーサー
あの後も何度か魔物と戦闘を行わせてもらった。
エンバさんからは「まさかすべての魔物から魔石が回収できるとは思いませんでした。優秀なんですね」と言ってくれたが、おれの場合はただ単におれの魔法の攻撃力が足りず、魔石を壊すまでには至らなかったというだけだ。
そりゃあ一応、できれば魔石を回収できるようにはしていたが、一番の理由はそれだった。
それに、魔石を壊す原因になりやすい火魔法が苦手ということもある。
火魔法ってすぐ拡散するから威力を出すには良いけど、魔力操作が難しいんだよな。魔力消費も大きいし。何より、フレンドリーファイアをしてしまいそうで使うのが怖い!
ソロで戦う分には問題ないが、おれは支援魔法使いだからな。PT戦闘が基本だ。
だから、他の属性で威力を出せないか色々試している。
また、もう一人の護衛にも魔力による索敵の方法について話を聞いてみた。名前はロハスさんというらしい。ロハスさんは普段は無口で淡々と仕事をこなすタイプっぽかったが、おれが教えて欲しいと言うと、快く教えてくれた。
ロハスさん曰く、索敵の方法は主に二つあるらしい。
まず、誰もが無意識に行っている第六感による索敵。これを無属性魔法の身体強化の応用で、意識的に行う方法だ。
父さんがおれたちよりも早く魔物を発見できるのは、これができているからだろうとロハスさんは言う。
この方法の利点の一つは、距離が関係ないことだ。要するに、直感によるものなので相手が攻撃しようと意思を見せればなんとなく分かるのである。また、魔力消費が少ない点も利点だ。鍛えれば相手の思考まで読めるようになるらしい。そのレベルにまで達しているのはロハスさんの知る限りでは一人しかいないようだが。
欠点は習得方法が分からないことだ。ロハスさんもいつの間にかできるようになっていたというし、父さんに至っては自覚すらないという。一応、自覚できれば意図的に索敵強度を強めることはできることが多いらしいが、父さんのように無意識にしかできない人もいる。そんなあいまいな方法だ。
二つ目の方法が魔力に感覚を付与するという方法だ。こっちの方法でおれは索敵の方法について教えてもらった
こっちの方法が主流で、おそらくシエルもこの方法を使っているのだろうという話である。
魔力はイメージを伝えることによって魔法へと変化させることができる。だが、この方法では魔力を魔力のままであるようにイメージし、その性質を変化させなければならないのである。
なぜなら、魔法に変化させてしまうと魔力が空気中に霧散してしまうからだ。
やってみるとこれがなかなか難しかった。性質の付与自体は一日でコツをつかめたのだが、油断するとすぐに魔法となってしまい、魔力がなくなるのだ。
ロハスさんはおれの魔力操作技術に驚いていたが。
ふつうは先にこちらで躓くらしい。
シエルにもっと詳しいやり方を聞いておくべきだったな。上手くなれば死角にいる敵の発見だけでなく、敵の強さの判別や死角にいる味方の支援にも活かせるらしいので、ぜひとも習得したい技術だ。
そんな感じで旅の後半ではおれはその練習をしていたので、魔物との戦闘には参加していない。魔力がない状態での戦闘は危険だからな。ソラはどんどん実践訓練を積んでいたが。おかげでミスリルの剣にもだいぶ慣れてきたようだった。
「着いた!」
「割とあっという間だったな」
そんな充実した旅を終え、おれたちはついに王都『クエーサー』の馬車駅に到着した。
「やっぱ人が多いなー」
「おれは人より馬の多さに驚いてるけどな」
さすがに『王都』というだけあってこれまで通ってきたどの町や村よりも人が多かった。だが、前世で日本の都会を経験したことがある身としてはそこまで人の多さは気にならなかった。むしろ馬の多さに圧倒されていた。
「そっちかよ!あ、もしかして前世でここに来たことがある感じなのか?」
「いや、覚えてる限りでは来たことはないよ。でも、前世でもっと人が多い場所を見たことはあるな」
「そっかー。じゃあ、後でその町がどんな感じだったか教えてくれよな!」
「分かったよ」
ソラにはおれの前世が異世界であることは伝えていないが、内容をぼかして話すことはある。あまり踏み込んで聞いてくることもないので、勘づかれることもないだろう。
一方で父さんたちはおれの前世について聞いてくることはほとんどない。なぜかは分からないが、おれにとっては都合がいいのでそのままにしている。
そんなことを話していると、父さんがおれたちを呼びに来た。
どうやら、最後に全員で集まるらしい。
「では、ここでお別れですね。道中、ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
エンバさんの言葉に父さんが代表してそう答える。
「お二人もお元気で。学園を卒業したらぜひ私のところに来てください。王都にはいくつかのコネがあるので、装備の援助などダンジョン攻略に関する色々な支援ができるかもしれません。良いPTメンバーを斡旋できるかもしれませんしね」
「はい!ありがとうございます」
おお?これはスカウトされたってことで良いのか?
「やったな、リック!俺たち認められたってことで良いんだよな?」
「うん、そうだね」
ソラが小声でそう聞いてきたので、おれも同意する。
そうだ、あの人にお礼言っとかないとな。
「ロハスさん、いろいろ教えて頂いてありがとうございました」
「……ああ。お前は筋が良くて教えがいがあった。将来を楽しみにしているぞ」
「はい!頑張ります」
ロハスさんはエンバさんのところの商会の専属護衛のような立場らしいので、もし本当に探索者としてエンバさんのところと契約するのならば、また会うこともあるだろう。そうでなくても王都にあるエンバさんの店に行けば会えるかもしれないな。
まあ、あまり先のことを考えても仕方ない。おれにできるのは次に何時会ったとしても成長したと思われるようにするだけだな。
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そんな感じでそれぞれの人と別れの挨拶をとした後、おれとソラと父さんの三人はこれからどうするか悩んでいた。
「どうする?いきなり学園寮に行ってもいいが、この時間なら王都観光してからでもいいぞ」
「先に王都観光しようぜ!」
「おれもそれで良いよ」
旅は予定よりも順調に進んできたので、まだ時間は太陽が昇り切っていない位だ。学園寮に行くのは後で良いだろう。父さんにもしばらく会えなくなるだろうしな。
「じゃあ、どこに行く?定番は王宮や闘技場だが……」
「ダンジョンを見てみたい!」
「あ、おれも」
「おいおい、お前たちはまだダンジョンカード持ってないからまだ入ることはできないぞ」
「ダンジョンカード?」
何だろう?それは。
「ああ、ダンジョンに入るために必要なカードで、国が発行しているものだな。それがないとダンジョンに入ることはできない」
「何でそんなものがあるの?」
「それは、誰がどんなものを手に入れたのか国が把握するためだな。ダンジョンは資源の宝庫みたいなもんだからな。未発見の魔道具が発見されることもあるし、そうでなくとも深層に潜ってる探索者が誰なのか位は把握しときたいってことだろ」
なるほど、ダンジョンカードは身分証明書みたいなものか。
「じゃあ、ダンジョンで手に入れた物は一旦全部回収されるってこと?」
「いや、回収されるのは珍しい魔道具くらいで、それもちゃんと探索者の元に戻ってくるぞ。ほとんどは検査だけだ」
「ふーん、そうなんだ」
「そんなわけでダンジョンに行ってもお前たちはまだ入れないぞ。ダンジョンカードの発行は数日かかるからな」
「それでも俺は最初に行ってみたい!入り口までで良いからさ。リックも良いよな?」
「まあ、良いよ」
「じゃあ、そうするか。ダンジョンならこっちだ」
そんな感じでおれたちは最初に、ダンジョンに行くことに決めた。




