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支援魔法使いの逆転!ダンジョン攻略記  作者: ウィロ
第二章 『アストロ学園入学』編
12/50

第十話 反省会

※商人・エンバ視点


 グラントさんから子供たちが戦闘で少し疲れたようなので、ここらで休憩を取ってあげて欲しいと頼まれました。

 丁度私も少し歩き疲れてきたところでしたので、その申し出を了承しました。

 それにしても数時間程度歩いただけで疲れを感じてしまうとは私も随分と衰えたものです。歳は取りたくないですね。来年からは馬車を使うべきでしょうか。しかし、馬車を通すために舗装された道ではほとんど魔物が出ないと聞きます。それでは私の楽しみの一つである魔物との戦闘を見ることができません。特に、グラントさんは非常に洗練された剣技を使うので見応えがあります。難点は速すぎて見逃してしまうことがある点でしょうか。

 その点、子供たち二人の戦いは一般人である私にも分かりやすく、新鮮味があった。戦いにドキドキがあったのは何時ぶりでしょうかね。安全な旅も良いものですがたまには刺激のある戦いも悪くないものです。

 しかもあの二人はアストロ学園生にありがちな才能によるごり押しではなかった。

 大きい方の子供は剣による戦いもなかなかのものでしたが、腕を負傷した際に素早く魔法戦に切り替えて一匹仕留めたのが特に良かった。あれができるのなら難しいと言われている魔法戦士として大成するかもしれない。

 小さい方の子供は魔導士というよりは支援魔法使いに近い動きでしたでしょうか。才能あるアストロ学園生としては大変珍しいですね。魔法の威力はそれほどでもありませんでしたが魔力操作はかなり上手でしたね。ダンジョン攻略では30層の問題があるので活躍するのは厳しいでしょうが、冒険者としてなら活躍するかもしれません。


 おっと、丁度話し合いを始めるようですね。少し悪い気もしますが聴力強化してどんなことを話しているか聞いてみますか。


「リック、今回の反省点は何だ?」

「ソラの回復が遅かったことかな」

「そうだな。お前は予想外の事態が起こった時動きが止まる癖があるからな。ダンジョンでも予想外の事態は絶対に起こるから何か対策考えておけよ」

「分かった」


 ふむふむ。結構真面目に反省会を行っているようですね。

 そしてグラントさんは答えを言わずに自分たちに考えさせる方針ですか。

 あの方法はやる気のある人相手には効果的ですからね。


「次に、ソラの反省点は?」

「俺は……2匹目を倒す時にちょっと油断したことかな。けど、あれは目が潰れてたからこっちが見えてないと思ったんですよ」

「あれはおれも不思議に思ってたんだよね。どうしてなの?父さん」


 おや?魔物の特性について知らなかったのですか。なら攻撃を受けてしまったのも仕方ないですかね。


「魔物の多くは目じゃなく魔力から相手の位置を把握しているんだ。だから相手から位置を把握させないようにするには目を潰したうえで、何か魔力を誤魔化す方法を考えるしかないな。そういうのができる装備もあった気がするが……あんまり覚えてねえな」

「魔力から相手の位置を把握って……シエルちゃんみたいな感じですか?」

「そうだな。おれたちもコツを掴めばできると思うぞ。あっちにいる護衛のやつもできるって言ってたな。索敵にも使えるらしいし、覚えると便利だぞ。父さんは練習してもできる気がしなかったからすぐに諦めちまったけどな」

「うーん。ならおれも覚えて方が良いかなぁ」

「そうかもな。でもソラ、ダンジョン攻略するつもりなら初見の魔物も対応しなければならないんだから思い切りの良さは大事だけど油断もするなよ。勇気と蛮勇は違うからな」

「はい!」


 グラントさんは厳しいですね。

 ですが、言っていることは的を射ているのでしょう。

 私がスカウトした探索者の中で良い取引相手となっているのは、実力以上にその違いが分かっている方の気がします。

 自信過剰なのはもちろん良くないのですが、慎重すぎてもいい結果はあまり生まれないというのは難しいものですね。

 若いうちからその感覚を身に着けることができればいいのですが、こういうことは経験でしか学べないことが多いですからね。やはり運が絡んできてしまう。

 その点、この2人は恵まれているのかもしれません。


「よーし!次は良かったところだな。まず、リックは【素早さ上昇(クイック)】を一度も切らさなかったのは良かったぞ!」

「あれはマジで助かったぜ!」

「まあ、2つまでなら同時発動にも大分慣れたからね」


 本来なら、支援魔法を維持するだけでも支援魔法使いとしての役割は十分に果たしていると言えますからね。今回は支援対象が1人だけであったのでそれだけでは不十分かもしれませんが。


「それと、最初の【泥沼マッドスワンプ】の発動位置と発動速度も良かったぞ」

「それはこのシューズのおかげだね」

「お前、靴替えたと思ってたらそれ、ちゃんとした装備だったのかよ!何で黙ってたんだよ」

「ちょっとソラを驚かせようと思っただけだよ」

「俺が新しい剣を買ったときはすぐに教えたのになー」

「あれはお前が一方的に教えてきたんだろ!見せびらかしたくてしょうがなかったくせに」


 あのシューズはやはり特別な物でしたか。聞くところによると、効果は魔力操作の簡略化と伝達速度上昇ですかね?

 しかし、シューズということは足元から魔力放出しなければ効果がないはず。

 もちろん、上級者ならば全身のどこからでも魔力放出と操作ができると聞いたことがありますが、大半の方は手からだけで事足りるので、それ以外の箇所からできる人は少ない。

 なかなかユニークな装備を使ってるようですねぇ。


「次はソラの良かったところだな。やっぱり、一番良かったのは腕を負傷した時に瞬時に剣から魔法攻撃に切り替えたところかな。あの切り替えの早さは本物の魔法戦士みたいで良かったぞ!」

「ああ、あれはおれも驚いたな。お前あんなことできてたっけ?」

「俺は本番に強いタイプだからな!とっさに身体が動いたぜ」

「お前、父さんの前だからってかっこつけるなよ。素直に昨日からのイメージトレーニングのおかげって言えよ。隠さなくてもいいだろ」

「『本番に強い』って勇者っぽいから言ってみたかったんだよ!」

「諦めろ。お前は『なんちゃって勇者』だからな」

「何だと!」

「おいおい、そこまでだ。それにソラ、イメージ通りに動けるっていうのはすごいことなんだぞ。イメージトレーニングも大事だしな。『本番に強い』なんていう不確かなものよりよっぽど役立つぞ!」

「そうだぞ!予想外の事態に弱いリック君?」


 ソラ君は陰で努力するタイプの人間のようですね。

 それにしても『なんちゃって勇者』とは何のことでしょう?もしかしてソラ君はうわさに聞く『勇者候補』の人間なのでしょうか。


「……そもそもかっこつけなくてもお前は十分に『本番に強い』タイプだろ。初めて魔物と戦った時も最初からいい動きできてたし」

「お前は最初ビビりまくってたな!まさかお前がゴブリンごときにビビるとは思はなかったぜ」

「いや、ソラのような奴の方が少数派だからな?父さんも初めて魔物と戦うときは怖かったもんだ」

「でもシエルちゃんは最初から魔法ぶっ放しまくってたような……しかも魔物の急所にばかり的確に。あれ見て『本番に強い』ってこういう人のことを言うんだなって思ったんだけど……」

「シエルは異常!」

「それは間違いない!」


 あの親子に異常って言われる人ってどんな人なんでしょうね……私からするとあの親子も異常だと思うのですが……。

 グラントさんの剣の強さはもちろん、その息子の方の魔力操作技術も年齢を加味すれば十分に異常だと思いますけどね。


 さて、そろそろ雑談に入ってきたようですし、盗み聞きは止めにしますか。

 グラントさんの教育方法や、あの二人の性格を知れるなど収穫も多かったですしね。

 正直言ってあまり期待していませんでしたが、アストロ学園卒業後には本気でスカウトしてみてもいいかもしれません。

 二人とも将来性はありそうですしね。


「あ、エンバ会長。盗み聞きは終わりました?」

「……何のことです?」

「それだけじっとしていれば、分かりますって。ばれてないのは当事者の三人くらいじゃないですか?」


 ふむ。私は観察力のある良い部下を持ったようです。

 それはともかく……


「そういうことは早く言いなさい。私の威厳のあるイメージが崩れるでしょう!」

「いや、ここにいるメンバーは会長にそんなイメージもう持っていませんよ。威厳があるのは外見だけじゃないですか。僕たちの会長に対するイメージは自由奔放な人ですよ」

「私、そんなに好き勝手してました?」

「してましたよ!自覚なかったんですか?ほとんど実績のない探索者を急にスカウトしてきたこともありましたし、見知らぬ魔道具が開発されたと報告があればいつの間にか旅に出ていたこともありましたし、どこからか魔石を大量に購入してきたこともありましたよね?色々噂になっていますよ、エンバ会長の奇行は!」

「そうでしたか……。これからはもう少し自重するようにしますね」

「お願いしますよ!本当に!」


 私は自分では威厳のある会長だと思っていましたし、周囲からもそう言ってくる人が多かったような気がするのですが……。外からと内からでは違うということですかね?

 何はともあれ部下たちにはかなり苦労を掛けていたようです。

 これはお礼を言っておかなければなりませんね。


「いつもありがとうございます」

「え?いや、お礼を言われるほどのことじゃ……エンバ会長の奇行のおかげでここまで発展したといってもいいくらいですし……つまり、フォローは任せてくださいってことです。これは従業員の総意です。な?みんな!」


 それに合わせて二人の部下も頷いてくれます。

 それならもっと思い切ったことをやってみるのもいいかもしれませんね。

 きっと部下たちが上手くフォローしてくれるでしょう。


「さて、休憩もそろそろいいでしょう。出発の準備をしますよ」

「分かりました」


 そして、私たちは王都に向けて再び歩き始めました。


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