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ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます  作者: 五珠
ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
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着替えたドレス

 カインは薬を飲ませ眠らせたシャーロットを抱き抱え、皆が音楽に合わせて踊る間をスルリと抜けホールを出た。

部屋の横にある細い通路へと入って行くと、その先にある地下へと続く階段を、足音を立てずに降りて行く。


 その様子を帰り損ねていたソフィアが偶然見ていた。こっそりと後を尾けて行ったが、二人が地下に降りた所で見失ってしまった。

 どんなに見回しても何処にもいない。

地下は備蓄倉庫の様で、木箱が二つと埃にまみれた椅子が数脚置いてあるだけだった。


 ソフィアは急いで地上に戻ると、今度こそお茶会を抜け出し、ドルモア伯爵家へと帰った。


 すぐレオンにシャーロットが見知らぬ男に連れ去られたと伝える。


「……それ、本当?」

「本当よ、私はシャーロットを見間違えないわ、何年も一緒に住んでいたもの(メイドにしていたけど……) 」


 レオンは頭を抱えた。招待状が届いた時、あまりに急でおかしいと思っていたが、結婚してから一度も外に出していなかったソフィアが、可愛い顔をして行きたがっていたから出したのだ。

それがまさか仮面舞踏会で、本当の目的はエスターの『花』を誘き出す為だったとは……。


「はー、どうする? いや、すぐにレイナルド公爵に伝えるけど……しかし、彼女はエスターから貰ったドレスを着ていなかったのか? 外に出すなら着せるだろう?」


「そのドレスは着ていたわ、でも向こうで決まった物に変えさせられたの、ほらコレよ。皆同じドレスに着替えるように言われたの」


ソフィアが広げて見せた真紅のドレスに、レオンは目を顰める。


「そうか、それで変な匂いがするのか……」

彼はソフィアのドレスに手を掛けるとひと息に引き裂いた。


「…………!」

 下着姿になったソフィアは驚いたが、ドレスを破られた事は不思議と怖いとは思わなかった。

何故ならレオンが心痛な面持ちをしていたからだ。


レオンは自分の着ていた上着を脱ぎ、彼女に羽織らせると一度抱きしめて、それから顎を持ち上げた。


「レオン?」


 彼はソフィアに優しく口づける。


「やっぱり行かせるんじゃなかった。ねぇソフィア、尾行をもし誰かに見つかっていたら只では済まなかったかもしれない。危ないから、こんな事は二度としないでくれ」


「レオン、ごめんなさい」

「……君が無事でよかった」


 レオンはソフィアをもう一度抱きしめ、柔らかな笑顔を向ける。

それから、妻たちに彼女を任せレイナルド公爵家へと急いだ。







ーーーーーー*






 突然訪問して来たレオン・ドルモア伯爵から、シャーロットが連れ去られたと聞いたローズは青ざめた。


急なお茶会の招待におかしいと思ってはいたが、まさかそんな事になるとは考えていなかったのだ。


「でも、どうしてその男はシャーロットちゃんを触れたの? 彼女には古代文字のドレスを着せていたのよ⁈」


「それが、ドレスは着替えさせられたらしいのです」

レオンの一言に、ローズとカミラはおもわず止まった。


「着替えた?」


「ドレスは会場で準備されていたらしく、一人で着替えをしなければならなかったと」


「そんなお茶会なんてある?」


「多分、最初から彼女を捕らえる事が目的だったかと思われます」


「なぜ?」


「彼女がいなければエスターを手に入れられると思っているのではないでしょうか」


「王妃様から、息子達の事は諦めたと聞いたのよ?」


「王女様達は……よく言えば粘り強く、何事もやり遂げる方達ですから」

「……それは……」


幼い頃から知っているが、このレオンという青年は女性の事を悪くは言わない紳士だ。

でも、その表現は違うんじゃないの? とローズは思った。



「ローズ様、ドレスが無くてもまだ大丈夫です。さすがに全て着替えた訳ではないでしょう」

「そ、そうね!」


 ローズとカミラは、ドレスだけでは心許ないと下着にも防御魔法が施されている物を着けさせていた。

しかしあれはドレスを着ていては何も起きない。魔法が発動するには下着姿になる必要がある。

それでは遅くないだろうか……触れなくても見られてしまう。危害は加えられなくなるが、それで安全かと云われたら……。


「カミラ……」

「ローズ様、すぐにヴィクトール様とエスター様にご連絡致します」


「ええ……しかし……家から出してしまったのは私よね……」

「ローズ様」

「やはりこうしてはいられない! カミラ、私が今から城に行くわ。一秒でも早くシャーロットを取り返さないと!」


「いや、それは危険です」

レオンが止めに入るがローズは聞かない。


 このまま待っているだけでは、シャーロットに何かあれば必ず後悔する。

それに……

せめてヴィクトール様が戻るまで待つ様に、と止めるカミラとレオンを振り切り、ローズは玄関へと向かった。

彼女の為に作られた庭を急ぎ足で抜ける。



「…………はっ!」


そこには、腕を組み仁王立ちする息子(エスター)がいた。



普段は冷静で思慮深い( 最近は変わったけれど ) エスターが……

( 黙っていれば ) 誰もが見惚れると云われる息子が……

恐ろしいほどの怒気を孕んでこっちを見ている……

怖っ……。



「 母上 」


一切目が笑っていないエスターが、口角を上げ優しい口調でローズに聞く。



「シャーロットは今、何処にいますか?」


「…………あ……」



「 母上 」


「お茶会に……行きました」

「お茶会? 誰のですか?」

「王女様達の……」

「王女⁈ 」


 自分と同じ青い目が向けられている、それだけなのに背筋が凍り付く様だわ……。


「急な招待だったのよ、行かなければ罰金だと書いてあって、私は払うと言ったのだけれど……シャーロットちゃんが、これ以上自分に無駄なお金を使って欲しくないって言ってね、それで……」




「……また王女か……」


エスターはそう言うとすぐに邸を出て行った。

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