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≪5章:再会≫

15歳になるある日。

アイシャは"影"を使って公爵に呼び戻されていた。


あれからすっかり”ヴァイア”の活動は鳴りを潜めている。だが、ある1つの手がかりを公爵の”影”が入手した。どうやら南西にある魔法の国ヴェルダリオンにて獣人の怪盗が現れたらしい。

しかもどうやら宝物庫から鍵のかけらを奪って逃げたらしい。放っておけば一銭にもならないそんな鍵、欲しがるのは"ヴァイア"の一員だけである。


「"影"がいきなり接触してきて、3人掛りで私に帰る様に必死に説得してきた理由は、わかりました。その獣人を捕らえれば宜しいのですね?」

「違わないが...その前に初夜会にも出なさい。」

「あらまあ、もうそんな時期ですの?パートナーは?」

「一ヶ月後だ。一応婚約者である、王太子様が馬車で迎えに来る。粗相のない様にな。」




「本日は宜しくお願い致しますわ。今日の服装も似合っておりますね。」

「こちらこそ、見惚れてしまいそうだ。」


レオンとアイシャはお互いの色を、身につけていた。レオンは紺色のレオタードに銀糸の刺繍。アイシャは紺色のAラインドレスに金糸の刺繍。

2人はにっこり笑い、馬車へのるのであった。



ザワザワ...


「皆のもの、本日はよくぞ参った。これが初夜会となる者もおるだろう。今夜はゆったりと楽しまれよ。」


だが。国王陛下のお言葉は、これだけでは収まらなかった。


「ちなみにこの場を借りて、紹介しよう。レオン・フィオーレとアイシャ・スターランドじゃ。この2名の婚約を認める!皆のもの、フィオレ王国の未来に乾杯っ!!」


威厳のある国王様の演説。

そして楽しい夜となるはずがーー


何故、こうなった。

私は王様に挨拶したあと、一曲だけ王太子と踊り、初夜会の会場から抜け出て庭を散歩していただけなのに。


私は風と水の精霊術で、氷剣を創り出す。

黒ずくめの男たちは一斉に私を狙ってくる。

私は男たちのクナイをかわしつつ、真空波を放つ。


(シャルルとグレン、その業火を以って旋風となれ!)


ゴオオッ


男たちは炎に包まれた。

逃げ出した者には、氷剣を一振り二振りして、戦闘不能にさせる。


ドタドタドタッ


「何があった!?大丈夫か?」


炎旋風が目立ったのか、慌てた様子の警備兵たちとレオン王子が駆け付けた。

警備兵たちは黒ずくめの男たちを縄で縛り上げていく。

レオン王子は私の肩にジャケットを掛けてくれた。


「怪我はないか?」

「大丈夫です。ご配慮、ありがとうございます。」




後日。


「夜会に攻め込んできたのは、闇ギルドに依頼された敵だった様だ。何か、心当たりはないか?」

国王様に問われる。


ありまくります。ジーザレス国で作ったからくり仕掛けの箱。その中には魔王の鍵が組み合わさったキューブが眠っている。

これは良い機会か。


「国王様、その件についてお話するのには人が多過ぎます。人払いをお願い致します。」

「良かろう。」

「風よ、防音。水よ、ウォール。」


自分の周りを流水で囲った。

私はいそいそとドレス下のポーチからキューブ(箱入り)を取り出した。


「水よ、やめ。」


流水が止まり、残されたのは私とキューブ(箱入り)。

そして、私は精霊たちから聞いた魔王の話と、ヴァイアについて、魔法の国ヴェルダリオンにて獣人の怪盗が現れ鍵を盗んだらしいという話をした。

私はこうして仕様が無いから、手元の鍵を一定期間王宮に保管してヴェルダリオンへと出向くことにしたのだった。



====


「ここ暫く長雨が続いてたからねぇ。」


そんな言葉と共に、馬車は止まった。

フィオレ王国から6日。後半日でヴェルダリオンに着くところだった。

目の前にはーー壮大な崖崩れ。

樹の幹も共に雪崩れている。


「こりゃあ、引き返すしかないかねぇ。」

「そんなぁっ!」


悲鳴をあげる私。

どうにかならないかと雪崩に近づく。


「あんまり長居すると危ないよ。もう雨は止んでるからこれ以上雪崩はしないと思うけど。」

「はーい。...うん?」


樹の幹に何かチラッと見えた気がする。

あっまただ。


そっと覗き込んでみるとーー茶色い半透明の小指大の小さな人型精霊がいた。


「こんにちは、地精霊さん。」

「こんにちは。こんなところで何してるの?」

「道を通りたかったんだけど...通れないね。」

「じゃあ、通らせてあげようか。」

「えっ!?そんなことできるのっ!?」

「君が契約してくれるならね。君の魂、綺麗だし。もう既に火と水と風の精霊が付いてるなんて、面白そうじゃないか。それに、僕の家壊れちゃったし...。」


地精霊はペシペシと自分の座る倒木をつまらなさそうに、少し悲しげに叩く。


「わかった。私はアイシャ・スターランド。」

「僕はテューリ。」


チュッ...




「ここが魔法の国、ヴェルダリオン!」


夕闇迫る中見たのは、王都を煌々と照らす街灯のライトアップだった。


その後は適当な宿を取り、ひとまず寝た。

なんせ、昼間は土砂崩れに土精霊が出て、雪崩を掻き分け、倒木も地精霊術で横に追いやりと、なかなか大変だったのだ。

しかし、これでらいよいよ全種類の精霊と契約してしまった。所謂、精霊王となる。


「託宣は真実だったわね...。いえ、どちらかというと託宣が真実にした、と言うべきかしら。...120年ぶりだったかしら、この世に精霊王が現れるのは...はふぅ。」




「んーっ。よく寝たっ!」


"影"からの情報によると、貧民街があるらしい。

そこに怪盗の根城がある、とのこと。

そして、どうやら怪盗はヴァイアと手を組んでいた様だということまでは分かった。


「じゃあ早速聞き込みね。」


光あるところに闇あり。

この都市は、孤児院はしっかりと機能してなさそうだ。

道端にはやる気のなさそうな大人に混じって、子供たちが座り込んでいた。

子供たちは蒸した芋を差し出されると、こぞって手に取って食べ始めた。



「あっちの家だよ、おねーちゃん。」

「ありがとう、ここまでで良いわ。」

「にいちゃん、この前も僕たちにご飯くれたんだ。おねーちゃんいい人だから、特別に教えてあげるんだからね?」


子供たちから教えてもらったあばら屋に近付くと、中に人の気配があった。


ギィッ...


「こんにちはー。」

「ああ?なんだ??」


中には積まれた藁と、その上に鎮座する痩せぎすな獣人の男がいた。


「貴方が最近巷を噂させてる、怪盗さん?」

「......」

「"ヴァイア"。この組織に覚えは?」


男はビクッと反応した。


「あなたは、"ヴァイア"に頼まれて鍵を盗んだわね。"ヴァイア"は何処。」

「言えねーな。」


キンッ


鋭い一閃は、怪盗の剣によって阻まれた。


「じゃあ、言えるようにしてあげるだけ。」

「風よ、飛び足を。」


風精霊術!?

一瞬の動揺の間に、あばら屋の窓から逃げられた。


(シャルル、飛び足を!)


すぐに外に出て追いかける。

しかし後少しのところで路地裏にあった小麦粉を投げつけられて見失いかける。


くそっ、後少しだったのに!と思いつつこれを機に三角飛びし、屋根から気配を消して再度近付く。

すると、ある寂れた居酒屋に入っていく後ろ姿を、捉えた。


(ミーケ、蜃気楼。シャルル、ドアが開くくらいの風を起こして。)


ビュウウッ


風がドアを押し開けた時、私はスッと居酒屋に潜り込んだ。



====


「んで、今日は何の用だい。」


狼耳を生やした獣人が問い掛ける。

怪盗は指をカウンターにトントンしながら答える。


「お前..."ヴァイア"を探してるやつがいる。」

「んだとぉ!?なら俺らの敵ってことか。」

「俺らじゃねぇ。お前のだ。」

「いや、世界各地に広がっている"ヴァイア"構成員全員の敵だ。」


そう言いつつ、魔王の鍵を右手にひらひらさせる。


「そう、あなたたちの敵。」


グサッ


「グアアッ!」


背中をグッサリと刺された獣人は声をあげた。私は同時にサッと右手から鍵を奪い取る。

怪盗が鍵に手を伸ばすも、時既に遅し。


「チッ、つけてたのか。」


蜃気楼で私の姿が見えない怪盗は、キョロキョロと周囲を警戒する。


「あなたが貧民街の人たちに、施しをする存在である限りは私はあなたに危害を加えないわ。ただし、今後一切"ヴァイア"には関わらないことね。」


(テューリ、家の木から蔓を出して彼らを拘束して。)


家の木から蔓が何処からともなく生えてきて、彼らの四肢を縛った。


「じゃあね、怪盗さん。」 



====


カチッ


「全部揃ったわね。」

「壊してしまおう、こんな物。」

「にしても、普通の攻撃じゃあ壊れないわよ?」


フィオレ王国。

そこには魔王の鍵がある。ただし、無理に箱を開けると爆発するスグレモノだ。



いま、厳戒態勢の中庭で小さなキューブが破壊されようとしている。キューブが完成してから2ヶ月。

今日は国王様の生誕祭。


「精霊王として命ずる!シャルル、ミーケ、グレン、テューリ、力を合わせてこのキューブを破壊せよっ!!」


小川の水が空一面に広がり、無数の炎の竜巻が起き、木々の根がドリルのように捻れていきーー


ズガーンッガガガガガガガガガガシャンッ


シューーッ


収まった。その先にはーー金銀の原型を留めない金属塊があった。


「やったぁあああ!!!壊れたぁあ!!グレン、打ち上げて!」


ヒュー...パーーンッ、バラバラバラ...

ヒュー...パーーンッ、バラバラバラ...


「綺麗。次は...結婚式かぁ。」

「これでようやく僕の婚約者さんは、世界を駆け回る大仕事を終えたのかな?」

「そうみたいね。」

「じゃあ今夜は逃がさないよ。」

「もう...愛し過ぎもどうかと思うなぁ。」


その夜は次々と、10発もの神秘的な火の華が華の国に咲いたのだったーー。



〜終わり〜


ここまでご一読、ありがとうございました。

これが私の一次創作の処女作品になりますので、

至らない点も多かったと思いますが、

なんとか最後まで走り抜けられたので良かったです。

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