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≪初章:精霊の愛子?2≫


ーーー王宮。

そこには荘厳で煌びやかな空間が広がっている。


そんな空間の中私は、見た目よりも重いドレスを着て、謁見の間にいる。


「ジル・スターランドが娘、アイシャ・スターランド登城致しました。」

「うむ、顔を上げるがよい。」


許可の声と共に、頭を上げる。

すると、そこには椅子に座る王と王妃、そしてそばに控える第一王子がいた。


「ふむ、スターランド公爵の娘は見目麗しいな。」

「その様なお言葉、光栄でございます。」

「今回召喚したのは、教会からそなたが聖霊の愛子だと託宣があったからじゃ。単刀直入に尋ねるが、そなたは聖霊の愛子なのかな?」


国王様はご自身の髭を撫でつつ、その威厳を以ってして私に尋ねられた。


この世界には4種類の精霊がいる。風、火、水、地の4種類である。彼らはごく稀に人間の前に指先くらいのサイズの小人型となって現れ、気に入った人族、または獣人族と契約することがある。1種類とでも契約できれば、その契約者は自分の魔力を使わずに精霊魔法を使って自然を操ることが出来る。大体1国に数人は何かしらの精霊と契約した契約者がいるが、2種類、3種類となると歴史に残る。そして4種類全てと契約した契約者のことを聖霊の愛子と呼ぶ。

つまり、いま私は全種類の精霊と契約しているのか、と国王様に尋ねられているのだ。

私が契約しているのは、お父様にも告げた通り風の精霊だけ。しかしこの問いを率直に否定してはならない。


「それはーーわかりかねます。」

「どういうことだ?」

「私は現在風の精霊と契約しております。しかし、他の3種類との契約はしておりません。今後もしかしたら契約するかも知れませんが、いまは分かりません。」

「ふむ、1種類か。ならば託宣はーー間違いであったと?」


国王様の重々しい声が、重圧となって私に降り注ぐ。


「いえ、唯一神に間違いなどあり得ません。恐らく、私には4種類全てと契約する定めがあるのかもしれませんわ。ただ、今はその時でないと言うことでしょう。ヴィルタミナ神に幸あれ。」


両手を胸の前で組み、信心深い敬虔者を装う。

実際のところ、全種類と契約するのかどうかは問題ではない。唯一神からの託宣を疑うのが問題なのだ。


「ふむ、そうだな。ヴィルタミナ神に幸あれ。」


国王様も納得して下さった様子。ならば辞去のセリフを述べるかとら思ったとき、動きの無かった王妃様が唐突に口を開いた。


「ならば、問題ありませんね。家格も問題ないことですし、あの話を進めましょう。」


あの話?


「おぉ、そうであったな。アイシャ嬢、こちらがわしの息子である、レオン・フィオレじゃ。」


国王様の紹介と共に、第一王子のレオン様が会釈をされた。レオン様は国王様の血を濃く受け継いだのか、金髪碧眼である。その身に纏っているのは漆黒の軍服。中肉中背で身長は180cmくらいだろうか。控えめに言って、美人さんである。

何故、レオン様の紹介が入ったのかと疑問に思いつつも、にっこりと笑って挨拶する。


「精霊の愛子はこの国に豊穣を齎す者。アイシャ嬢はいま12歳であったか。わしの息子は15歳じゃ。どうじゃ、年のころも近いし、わしの息子と婚約せぬか?」


おうめい!?王命なのか、それは!?

この国としては、貴重な精霊士を国に囲いたいのだろう。たしか、最後に精霊の愛子が現れたのは100年以上前の事だったはず。


私は、急に乾燥してきた口内をなんとか開く。


「それは...お父様に打診はされたのでしょうか。」

「まだじゃが、この後しようと思う。」


この国の貴族の序列は、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、騎士である。

家格はスターランド公爵の長女として、問題ない。年齢もあちらが3歳上というだけ。

このまま将来嫁げば私は王太子妃である。

もちろん、王妃となれるだけの教育はされている。しかし、いざ目の前になると、事の大きさに躊躇する。

この国では15歳が成人。初夜会も15歳からだが、幼いうちの婚約は珍しくはない。とは言ってもあと私には3年、自由時間が残っている...はずだった。


「光栄な話でございますわ。」

「では、スターランド公爵に話そう。」



お父様に話が行ったら、この話必ず受けるーー



何食わぬ顔で1日掛けて帰宅した私は、まず机に向かい時節の句から始まる長々しい置き手紙を書いた。

不甲斐ない娘で申し訳ないこと、暫く旅に出るので探さないで欲しいこと。更に月始めの夜に風精霊術通信で、一方的には連絡するので、書斎にいて欲しいことを記した。


風精霊術通信は、世界の反対側でもノータイムラグで話せるが、契約者から一方向通信な上、予定地点に誰もいないと送り損になる。つまり、手紙の様なものだ。


まぁお父様が本気を出したら、世界の裏側であろうと風精霊の力で見つけ出してまで返答を送り返してきそうで怖いものがあるが。


次に、ネグリジェではなく旅装束に着替えて布団に潜り込んだ。

そして夜中、私は窓をこっそり開け、忍び足でベランダに出て、ベランダから一番近い木に飛び移り馬にも乗らずに逃げた。

大丈夫、私には飛び足の術がある。



アイシャ、旅に出ます。



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