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僕の彼女はパワハラ上司  作者: 香村雪
8/18

8.居残り残業 ~(1)

とある日に事件は起きた。


俊輔の慣れない確認ミスのせいで仕事に大きな穴を開けてしまった。


明日提出しなければならない企画書に致命的な間違いが見つかったのだ。


「どうするのこれ? 高城おまえが事前に確認しなかったせいだよ!」

藍澤課長が俊輔を怒鳴りつける声がオフィス内に響く。

俊輔は何も言えずにじっと立っていた。


まわりの人たちも息を潜めて様子を見守っている。


「あの、すいません・・・・・」

凍り付いた雰囲気の中で突然に声を上げたのは優衣だ。

「何? 桐山さん」

「それ、私がチェックするように高城さんから頼まれてたんです。ごめんなさい高城さん。私のミスです」

「え、いや、桐山さん?」


俊輔は優衣の思わぬ言動に戸惑った。

そんなこと頼んでないし、優衣は関係なかった。


しかし、その俊輔をかばう優衣の態度が課長まいなの感情に火を点けた。


「とにかく最終チェックは担当営業の高城のせいだよ。明日までに一人で全部作り直せ!」

「そんな課長、こんな量、一人じゃ無理ですっ!」

優衣は課長に食いつく。


「他の人は仕事があるでしょ。残業だってタダじゃないんだよ! 分かったね、高城」

「はい・・・・・分かりました」

俊輔は俯きながら返事をした。


優衣が心配そうに俊輔を見つめる。

「大丈夫ですか?」

「ごめんね。ありがとう。大丈夫だよ、これくらい」


そう言ったものの、俊輔の顔は蒼ざめていた。

こんな大量の資料の修正なんて一晩で終わるのだろうか?


でも、自分のミスが原因なので、文句も言えなかった。

俊輔はがっくり肩を落としながら席へ戻った。


夕刻の終業チャイムが鳴る。


「明日までにちゃんと仕上げておきなよ」

課長まいなが俊輔に強い口調で念押しするように言った。


「はい。分かりました」

俊輔は机でうなだれながら返事をした。


「じゃあ高城さん、すいません。お先に失礼します」

他の社員たちが同情しながらも申し訳なさそうに帰っていく。


俊輔は一人だけになったオフィスで黙々と作業を続けた。

一人きりになった静かなオフィスは急に寂しく感じられた。


「はああ、何時までかかるかな? これ・・・・・」


大きくため息をついたその時、オフィスの入口に人影が見えた。

「あの、お疲れ様……です」


びっくりして顔を上げると、そこに立っていたのは優衣だった。

俊輔を心配して戻ってきたのだった。


「あの、私、手伝います」

「あの、大丈夫だよ。けっこう遅くなりそうだし、それに課長から一人でやれって言われてるし」

「手伝わせて下さい!」


優衣の強い口調に俊輔はたじろいだ。


「え?」

「私が手伝いたいんです」

「あ、ありがとう」


本音では誰かに手伝ってもらいたかった。優衣のその優しい気持ちがとても心に染みた。




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