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僕の彼女はパワハラ上司  作者: 香村雪
5/18

5.人事異動

月曜日の朝。

俊輔も今日から営業部だ。


俊輔が寝ぼけた目で寝室の時計を見ると起きる時間をとうに過ぎていた。

「やばい。もう起きなきゃ!」


リビングに入るとエプロン姿の舞奈が朝食の準備をしていた。

「あ、おはようしゅんくん」

「おはよう。ごめんね。ちょっと寝坊しちゃった」


朝食はいつも二人で一緒に作っていた。

「大丈夫だよ。夕食はいつも俊くんに作ってもらってるからね」


俊輔はテーブルに座るとイチゴジャムが塗られたトーストを一口かじった。

「ごめんね。私もう行かなきゃ。今日朝ミーティングがあって早く行かなきゃいけないの。俊くんはゆっくりでいいからね」

同じ会社でもいつも舞奈のほうが出社が早い。


「うん。分かった」

「俊くん、今日から営業部うちに来るんだよね。これからは一日中ずっと一緒にいられるね」

舞奈はそう言いながら嬉しそうに笑った。


「うん。僕も楽しみだ」

「じゃあ、先に出るね。行ってきまーす!」

舞奈はさっと手を挙げながら足早に出掛けて行った。


俊輔は出社すると第一営業部のある八階へと向かった。

これからずっと舞奈と同じフロアにいられると思うだけで楽しくなった。


営業部のフロアへと入る。

ものものしい社員の声と鳴り響く電話の呼び出し音に俊輔は圧倒された。

入社して六年、ずっと静かな総務畑にいた俊輔にとって最前線の営業は未知の世界だったので無理もない。


フロアの奥のほうでは何やら上司が部下を叱っている姿が目に入った。

俊輔はその雰囲気にいきなり気後れした。

「うわあ、なんか凄いな……」


俊輔は舞奈の姿を捜した。

「第一営業部だから、この辺りだよな……」

天井から下がっている表示ボードで部署名を確認する。

しかし視界に入る女子社員の中には舞奈の姿はなかった。

「あれ? 舞ちゃん、いないな……」


俊輔は一番手前の机に座っていた女子社員に声を掛けた。

「あのう、すいません。第一営業部ってここですか?」

「はい。そうですが」

俊輔はちょっとホッとした。


「あの、今日からここでお世話になる高城です」

「ああ、高城さんですね。伺ってます。私、同じ第一営業部の桐山優衣きりやまゆいです。よろしくお願いします」

優衣は俊輔の顔を見てニコっと微笑んだ。


「あのう、藍澤さんはいますか?」

俊輔は遠慮がちに小さな声で尋ねた。


「あ、課長でしたら向こうに・・・・・」

「あ、いえ。課長さんではなく女性の藍澤さんです」

それを聞いた優衣はちょっと怪訝そうな顔をする。


「あのう、藍澤というのはここには課長ひとりしかいませんが。それに藍澤課長は女性ですよ」

「は?」


どういうことだ? 来る部署を間違えた?

俊輔の頭が混乱する。


「あの、藍澤……課長はどちらに?」

「ああ、あの奥に立っている人です」

ーん?


フロアの奥に目をやると、さきほどから部下を怒鳴りつけている女性が立っていた。

「え???」


眼鏡をかけているので分からなかったが、よくよく見ると、それは紛れもなく彼女の舞奈だった。


「ま、まさか舞奈が課長???」


俊輔は二度ほど自分の目をこすったあと、冷酷な顔をして部下を叱咤し続ける舞奈を茫然と見つめた。



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