4.運命 ~(3)
俊輔と舞奈はそのまま付き合うようになった。
俊輔にとって、舞奈は理想の女性だった。
顔の可愛さもあるが、何よりも大人しくていじらしい性格が好みだった。
気が弱く引っ込み思案で、俊輔はそんな舞奈をずっと守ってあげたいと思っていた。
俊輔と舞奈は決まって会社帰りにカフェで待ち合わせをした。
「ごめんなさい。待った」
舞奈が先に来て待っていた俊輔に声を掛ける。
「ううん。大丈夫だよ」
遅れてくるのはいつも舞奈のほうだった。
「ごめんね俊くん。いつも遅くなって」
「ううん。舞ちゃんの営業部はいつも忙しそうで大変だね」
二人はもう名前で呼び合う仲になっていた。
「そう言えば、僕たちって同じ会社なのに会社の中で会ったことないよね?」
「そうだね。まあ俊くんのいる総務部とはフロアも違うし、人も多いからね」
舞奈はそう言いながらパフェに乘ったクリームを美味しそうにぱくっと口に入れた。
そんな仕草が俊輔にはとても愛おしかった。
でも、どうして会社では一度も会ったことがないのだろうか?
舞奈ほど可愛い子なら気付くと思うのだが。
俊輔の中に得体の知れない違和感が膨らんでいく。
その後も俊輔と舞奈の交際は続き、半年後には舞奈のマンションで一緒に暮らすようになっていた。
二人暮らしでの食事の決まりは、早く帰ったほうが夕食の支度をすることになっていた。
帰宅は営業部の舞奈よりも総務部の俊輔のほうが大体早かったので、夕食の支度は俊輔がすることが多くなった。
いつものように俊輔が夕食の支度をしていると玄関の扉が開く音がする。
「ただいま! ごめんね俊くん、今日も遅くなっちゃった」
「舞ちゃん、おかえり!」
「ごめんね。着替えてすぐ手伝うから」
舞奈が手早く着替えてエプロン姿で台所に入ってくる。
「わあ、今日はシチューだね。美味しそー」
「舞ちゃん、あのさ・・・・・」
俊輔は思わせぶりに話を切り出す。
「何?」
「今日、会社から内示があってね。僕の異動が決まったんだ」
舞奈は驚いて目を大きく開けた。
「異動って・・・・・何処へ?」
「驚かないでよ。第一営業部だって」
「えええええーっ!!!」
舞奈が驚いたのは無理もない。
第一営業部。
それは舞奈がいる部署だった。
「じゃあ、私たち、同じ部署で働けるの?」
「そうだよ。来週からだって」
「うわあ、素敵。これからは会社にいる時もずっと俊くんと一緒にいられるんだね」
まさに運命!
俊輔は運命の神様を信じきっていた。
しかし、運命の神様はどうやら意地悪だったようだ。




