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僕の彼女はパワハラ上司  作者: 香村雪
15/18

15.里帰り

舞奈はどうして眼鏡をかけると性格が正反対に変貌するのだろうか?

俊輔はどうしてもそれが知りたくなった。


もしかして生い立ちに関係するのだろうか?

そうだ。舞奈の実家に行けば何か分かるかもしれない。

俊輔はそう思った。


舞奈は茨城の山間部の出身だった。

お父さんは舞奈が高校の時に病気で亡くなっており、今はお母さんが農業をこじんまりと営みながらひとりで暮らしているらしい。


土曜日、家のリビングで二人で夕食を食べている時にその話を切り出した。


「あの、舞ちゃん。今度、舞ちゃんの実家に行ってみたいんだけど」

「え?」

舞奈はその言葉にかなり驚いた様子だった。

「ちゃんと舞ちゃんの親御さんに会ってご挨拶したいんだ」

三十近くなった男女が親のところに行くことの意味は分かっていた。


「あの、もしかしてそれって・・・・・?」

舞奈は目を潤ませながら俊輔を見つめた。

俊輔は黙って頷いた。


「俊くん、嬉しい!」

舞奈は俊輔に勢いよく抱き着いた。

「ちょっと、ご飯がこぼれちゃうよ」


「ねえねえ、いつ行く? 今から行く?」

舞奈はよほど嬉しかったのか子供のようにはしゃぎ始めた。


「さすがに今からは無理でしょ。もう時間遅いし」

「じゃあ、明日にしよう。日曜日だし、天気も良さそうだよ」

「急に明日じゃ、向こうのお母さんに迷惑じゃないの?」

「大丈夫だよ! 私、今からお母さんに電話するね!」


舞奈はすぐにケータイを取り実家のお母さんへ連絡を入れる。

しばらく会話をしたあとに俊輔に向かってマルのポーズをした。

どうやらお母さんのオーケーが出たようだ。


―え? 本当に?

俊輔は自分から言い出したことながら、正直この急な展開に戸惑った。

 

舞奈の実家は東京から特急で水戸まで行き、そこからローカル線で一時間余りかかる山の中にあった。

電化もしていない単線の山合いを縫うように二両編成のディーゼルカーが走り抜けていく。


線路の横を流れる川に沿いながら列車はどんどんと川上へと向かう。

田んぼが広がるのどかな風景は東京生まれの俊輔にも不思議な懐かしさを感じさせた。


「いいところだね」

俊輔は半分空いた窓から外を眺めながら囁いた。

「でしょ!」


降りたのは駅員もいない静かな無人駅だった。

切符を車掌に渡し、無人の改札を抜けると駅からなだらかに登り坂になった道を歩き始める。


のんびりと歩いて二十分ほどで舞奈の実家に着いた。

茅葺屋根ではないものの、典型的な田舎の家という感じの家だ。


「お母さん、ただいま!」

ガラガラと音を立てながら玄関の戸を開ける。

俊輔から忘れていた緊張感が急激に沸き上がる。


「ああ、舞奈、おかえり」

家の中ではなく、玄関の外からその声は聞こえた。

畑から帰ってきたのであろう、農作業着でお母さんは二人を出迎えた。



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