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僕の彼女はパワハラ上司  作者: 香村雪
13/18

13.ライバル出現 ~(1)

俊輔にライバルが現れた。

しかし仕事のライバルではない。


その日、ひとりの男が営業部に転任してきた。

「大阪支店から今日、転任してきた喜多嶋きたじま課長だ」

営業部長が朝礼でみんなに紹介された喜多嶋課長は若手のホープでかなりのキレものらしい。

それでさらにイケメンときた。


喜多嶋課長は評判通り仕事ができ、面倒見も良いため女子社員からも人気があった。

そんなある日、俊輔にある噂が耳に入る。


喜多嶋課長が藍澤課長まいなのところへやって来て何やら親しそうに話しているのをよく見掛けるようになった。


「あれ、喜多嶋課長、また藍澤課長の所に来てるぜ。いつも何の用だろ?」

拝原係長がパソコンの陰からこっそり覗き込む。

「別に仕事の話じゃないスか?」

北山がキーボードをブラインドで叩きながら答える。

「いやいや、最近多すぎるよ。実は喜多嶋課長が藍澤課長を狙ってるっていう噂があるんだ」


「え?」

横で聞いていた俊輔の手が止まった。


「ええ、本当スか? 喜多嶋課長もいい趣味してますね。まあ藍澤課長は可愛いっていやあ可愛いスけど」

「あの堅くて難攻不落的な藍澤課長の雰囲気がプレイボーイの敏腕を疼かせるんじゃないのか?」


そんな・・・・・。舞ちゃん、大丈夫かな?

俊輔の心を猛烈な不安感が襲う。


「でも、あのセラミック級にガードが硬そうな藍澤課長が簡単に落ちますかね?」

「よし北山、賭けようぜ。俺、落ちるほうでいいや」

拝原係長が先手を取る。

「えーっ、待って下さいよ。俺も落ちるほうに一票なんスけど」

「なんだ。それじゃ賭けになんねえな。藍澤課長って堅いだけに男に免疫が無さそうだからな。喜多嶋課長の恋愛テクニックにかかったらコロッていっちゃうかもよ」


ーえ?

二人の会話を聞きながら俊輔は蒼ざめていた。


「高城さん、大丈夫ですか? 顔色があまりよくないみたいですけど」

隣の優衣が心配して声を掛ける。

「あ、ごめん。大丈夫」

そう言いながら俊輔は藍澤課長まいなのほうに目をやった。

喜多嶋課長と藍澤課長まいなが親しげに話をしている。


実は俊輔も気になっていた。

最近、確かに二人が一緒にいることが多過ぎると感じていたのだ。


まさか、舞ちゃんも喜多嶋課長に……。


すると、二人はそのまま一緒に外へ出て行ってしまった。

ーえ?

俊輔は一気に不安になった。


いや、仕事だよ、仕事……。

俊輔はその不安を拭うように自分に言い聞かせた。


「最近、夕方になると喜多嶋課長と藍澤課長、二人で出掛けるんだよ。怪しいよな」

拝原課長が疑うような顔で言った。


拭ったばかりの不安がまた俊輔に降りかかった。

喜多嶋課長相手じゃ僕が敵う相手じゃない。

仕事でも、男としても……。


俊輔が家に帰ると、まだ舞奈は帰ってなかった。

これはいつものことだが、気持ちは同じではなかった。

舞奈のことを疑っちゃいけないと思いながらも、不安になる。


夕食をほぼ作り終わり、テーブルに並べ始めた時に優菜が帰ってきた。

「ただいま!」

「おかえり……」


いつもと変わらない会話のやりとりのあと、ちょっと変な間が空いた。


「遅かったね。仕事?」

俊輔はちょっと嫌味っぽく訊いた。

「当たり前じゃない……」

思わせぶりな言い方に不思議な顔で舞奈は答える。


「夕方に出掛けたみたいだけど喜多嶋課長と一緒だったの?」

今度はあからさまに核心をついた質問に舞奈の顔色が一瞬で変わる。


「どういう意味?」

「別に……」

俊輔は舞奈の顔を見ようとしなかった。


「一緒だよ。外のカフェで今度のプロジェクトの打合せをしてたの」

「どうして外のカフェに行くの?」

「仕事だよ!」

無機質な声で質問する俊輔に対し、舞奈の声は険しくなった。


「そうだよね。仕事だもんね」

やはり俊輔は舞奈の顔を見なかった。


「俊くん、何それ? 嫌な言い方……」

「別に……喜多嶋課長といつも楽しそうだなって……」

 

その言い方に舞奈の眉間にしわがよる。


「俊くんだって、この前、優衣さんと食事に行ったでしょ。知ってるんだからね!」


俊輔は思わず顔が引きつった。

どうして知ってるんだ?


言い訳はできなかった。

でも俊輔は喜多嶋課長のこともあり意地になる。


「いいじゃないか、食事くらい……」

その言葉に舞奈の表情がふっと緩んだ。

「食事くらいって……くらいって……」

舞奈の目に涙が潤んだ。


俊輔は猛烈に後悔した。

何を言ってるんだ、僕は……。

自分の言葉が舞奈を酷く傷付けてしまったことが分かった。


怒る―そう思った。

でも舞奈は怒らなかった。

ただ黙ったまま必死に涙が溢れるのを堪えていた。


「もう寝る」

舞奈はそう言ってそのままリビングを出て行った。


ここで舞奈が怒ったり、泣き叫んで俊輔にくってかかってきてくれたならば少しは罪悪感も解れただろう。


けれど舞奈は怒りもしなければ泣きもしなかった。

こうなると罪悪感は倍増だ。


舞奈とこんなふうに険悪になるのは初めてだった。

どうして素直に謝れなかったんだろう。

俊輔はそんな自分が情けなく自己嫌悪に陥った。


明日の朝、起きたら謝ろう……。



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