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それでも

作者: Dial3495





「好きです。付き合って下さい。」







そう俺は彼女に告白した。


最初は一目惚れで、それから彼女の事を見ている内に更に好きになっていって。


そして今日、この高2の春に告白しようと決めた。



ありきたり、と言われるかも知れないが、校内で一番綺麗な桜の木の下に彼女を呼び出し、告白した。



「ありがとう。とっても嬉しい。」



彼女はそう言って微笑んだ。



「じゃ、じゃあ…!」



「けど、見てほしいモノがあるの。」



「見てほしいモノ?」



一体彼女は何を見てほしいのか。



さっぱり訳が判らないまま、俺はああ、と答えた。



すると彼女は、



「ちょっと目を瞑ってて。私がいいよって言ったら目を開けていいから。」



と言った。



仕方なく目を瞑った。その間聞こえるのは鳥の鳴き声や遠くで聞こえる人の声。それに混じって何かゴソゴソという音が聞こえる。



それからしばらくして、もういいよ、と彼女が言った。



俺が目を開けると、上半身が裸になった彼女がいた。


しかし、それより驚いたのは、彼女の左胸に機械が取り付けてあったという事だった。



「驚いた?これ、表面に出てるのはこれだけなんだけど、体の中にはもっとあるの。」



俺は、あまりの衝撃に声も出なかった。



「やっぱり驚くよね…。…ねぇ、“ロストチルドレン"って知ってる?」



ロストチルドレン―――通称LC―――



死後一時間以内の死体にある特殊な機械を埋め込み、疑似的に蘇生した15歳未満の人の事を指す言葉。



死体といえども死臭等は出ないようになっており、生前と何ら変わらぬ生活を送る事が出来る。勿論記憶も生前と変わらない。



しかし、体が耐えきれないのかある程度時が経つとまた“死んで"しまう。個人で差は出るが、早い人で3ヶ月、遅い人で5年。死ぬとまた機械を埋め込んでも生き返らない―――



「ま…まさか…。」



「そう、そのまさかよ…。私は約4年前、事故で死んだの…。今まで結構もってきたけど、もういつ死ぬか分からない…。まだ生きられるかもしれないし、明日死ぬかもしれない。もしかしたら今日かもしれない。」



「……………。」



「そんな私だけど…。それを聞いて、まだ付き合いたいって思う?」



彼女は一体何と言って欲しいのだろうか。



こんな時、上手く言えない自分が嫌になる。



しかし、俺が彼女の事を好きだという気持ちは変わらないし、その事を聞いても付き合いたいと思う。



俺は、彼女を抱きしめた。


死んでいるのに、何ら変わらない体温や呼吸、更にはどういう仕組みか分からないが鼓動まで聴こえてきて、少し悲しくなった。



俺は、彼女の耳元で、俺の気持ちを囁いた―――

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