それでも
「好きです。付き合って下さい。」
そう俺は彼女に告白した。
最初は一目惚れで、それから彼女の事を見ている内に更に好きになっていって。
そして今日、この高2の春に告白しようと決めた。
ありきたり、と言われるかも知れないが、校内で一番綺麗な桜の木の下に彼女を呼び出し、告白した。
「ありがとう。とっても嬉しい。」
彼女はそう言って微笑んだ。
「じゃ、じゃあ…!」
「けど、見てほしいモノがあるの。」
「見てほしいモノ?」
一体彼女は何を見てほしいのか。
さっぱり訳が判らないまま、俺はああ、と答えた。
すると彼女は、
「ちょっと目を瞑ってて。私がいいよって言ったら目を開けていいから。」
と言った。
仕方なく目を瞑った。その間聞こえるのは鳥の鳴き声や遠くで聞こえる人の声。それに混じって何かゴソゴソという音が聞こえる。
それからしばらくして、もういいよ、と彼女が言った。
俺が目を開けると、上半身が裸になった彼女がいた。
しかし、それより驚いたのは、彼女の左胸に機械が取り付けてあったという事だった。
「驚いた?これ、表面に出てるのはこれだけなんだけど、体の中にはもっとあるの。」
俺は、あまりの衝撃に声も出なかった。
「やっぱり驚くよね…。…ねぇ、“ロストチルドレン"って知ってる?」
ロストチルドレン―――通称LC―――
死後一時間以内の死体にある特殊な機械を埋め込み、疑似的に蘇生した15歳未満の人の事を指す言葉。
死体といえども死臭等は出ないようになっており、生前と何ら変わらぬ生活を送る事が出来る。勿論記憶も生前と変わらない。
しかし、体が耐えきれないのかある程度時が経つとまた“死んで"しまう。個人で差は出るが、早い人で3ヶ月、遅い人で5年。死ぬとまた機械を埋め込んでも生き返らない―――
「ま…まさか…。」
「そう、そのまさかよ…。私は約4年前、事故で死んだの…。今まで結構もってきたけど、もういつ死ぬか分からない…。まだ生きられるかもしれないし、明日死ぬかもしれない。もしかしたら今日かもしれない。」
「……………。」
「そんな私だけど…。それを聞いて、まだ付き合いたいって思う?」
彼女は一体何と言って欲しいのだろうか。
こんな時、上手く言えない自分が嫌になる。
しかし、俺が彼女の事を好きだという気持ちは変わらないし、その事を聞いても付き合いたいと思う。
俺は、彼女を抱きしめた。
死んでいるのに、何ら変わらない体温や呼吸、更にはどういう仕組みか分からないが鼓動まで聴こえてきて、少し悲しくなった。
俺は、彼女の耳元で、俺の気持ちを囁いた―――