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第4話 休憩中です

「疲れたよー」


 ブラーナの夕飯の支度をしてから、シップに帰ってきたララは、リビングのソファにダイブした。船の生活スペースはキッチンにリビングダイニング、バストイレに寝室が三つあるファミリー仕様になっている。中だけ見れば一般的な家と勘違いしてしまいそうな、家庭的な雰囲気にあふれていた。


「ララ、お風呂の用意ができているから、休むのはその後にしなさいね」

 マミがモニターに現れ、ララはメッと叱られてしまう。

 それに「はーい」と間延びした返事をして、ララは素直にバスルームに向かった。


 さっぱりしてリビングに戻ると、夕食の準備がすっかり整っている。

 ララは、マミの映るモニターの正面に座り、マミの作った料理に舌鼓を打つ。

 料理は作るのも好きだが、作ってもらうのも大好きだ。

 宇宙船(マミ)の内部は色々なアームがあり、マミは家事も器用にこなす。


「悪いもの、思った以上にいたね」

「ええ」

 チョーカーを目のかわりにし、ララと同じものを見ていたマミが悲しげに同意する。


 物でごちゃついた屋敷の中は、ブラーナの心の重石になるような小さな魔物や弱い霊が、思った以上に棲み着いていた。ララが箒ではらうと消える程度の小物だったが、それでも数が多い。


「魔物があれだけいたら、健全に暮らしていけという方が無理よね」


 人とは関わらなくとも仕事は精力的にこなしているため、ブラーナがあんなに嫌な気を纏わせているとは思っていなかったのだ。

 彼に気付かれないよう悪いものを祓うのには、少々骨が折れた。


「でも水回りがきれいだったのはさすが、かな?」

 ララは屋敷内の水回りがすべてきちんとしていたことを思いだし、ニッコリと笑った。部屋の状態から、水回りはどれだけの状態なのだろうと内心戦々恐々としていたのだが、ピカピカとは言えないまでも、十分に清潔できれいだったのだ。


 そのことを褒めるララに、ブラーナはボソリと、

「妻が、『水回りをきれいにするのは、生活の基本です!』と口うるさかったからだ」

 と言っていた。

 それでも、これだけの魔窟を作り上げながらも、それを実行し続けたのは天晴(あっぱれ)というほかはないと手放しでほめるララに、ブラーナは少しだけ照れくさそうな顔をしたのだった。


「水回りはきれいにって、マミもよく言うもんね」

 ニコニコしながらララが言うと、マミはニコッと笑って頷いた。

「もちろん。大切なことよ」


 そしてララは、今度は反対側のモニターを見る。

「おじさんがブラーナさんの友達でいてくれたのは、幸いだったね」

 自分も報告を聞きたいと、モニター越しに晩餐(ばんさん)に飛び入り参加してきたロジャーに、ララは微笑みかけた。

 今回の依頼人であるロジャーは、ララの後見人でもあり、普段は彼をおじさんと呼んでいるのだ。


  ★ 


 ララは孤児だ。

 宇宙を漂っていたこの宇宙船に、生まれて間もないララが一人乗っていたという。それを保護してくれたのがロジャー。

 船には識別番号や航行記録はなく、船が誰のものかどころか、どの星から来たのかさえ分からなかった。


 ロジャーから報告を受けた管理局は混乱し、総力を挙げて調査したがわからぬままだった。その間にロジャーはララと船に名前を与え、自分が後見することを申し出た。当時のロジャーはまだ二十歳だったが、大学を卒業してすでに十年がたっていた。社会的な地位もあった。何よりペリエ家では、代々なんらかの支援活動をしていたため、管理局もララの身元が判明するまでの後見人を、ロジャーに任せたのだった。身内からは、仲の良かった姉を亡くした悲しみを癒せるならば、との思惑もあったようだ。


 そのペリエ家では、暗黙の了解で、十代、できれば十五歳までに大学で博士号をとることになっている。ララは血縁ではないものの後見者(ペリエ)の恥にならないよう努力を続け、大学を卒業したのはつい先月のことだ。

 ブラーナにも伝えた通り優秀な成績を修めて卒業したが、実はまだ未成年で、仕事の経験は浅いのであった。


  ★


「とりあえず計画は順調! 明後日まで、しっかり頑張るよ」

ララ、意外と複雑な生い立ちのようです。


次は「残すものを選びましょう」です。

いらないものを処分ではなく、いるものだけを残すのです。

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