五 招かざる者
マザーの巨木のマローンの部屋にある壁時計
モンキチは壁にかけてあったその時計を降ろし
どんな仕掛けで動いているのか調べてみた
人間界にある時計のように箱があり
その箱から
「チクタク・・」
と音が聞こえてくる
「中が見たいのか?」
「この針は
1日で1周するんですよね」
「そうだよ
2周したり
1周できなかったり
そんなことがあったら役に立たない」
「動力は何なんだろう」
「黒い箱開ければいいじゃないか」
「開けていいんですか」
「空っぽだよ」
「え?」
チクタクと音がしてるのに
中が空っぽなわけがない
しかしマローンの言う通り
黒い箱をモンキチは開けるが
中は空っぽだった
空っぽの目の前の箱から
チクタク
と音はずっとしているのだ
「マザーの魔法だよ」
「魔法?」
そう言えばモンキチは忘れていた
いや気づいていたのに
あまりにもとんでもないことが
起こりすぎていて気にすることを
後回しにしていたのだ
目の前のネズミは
眼鏡をかけていて
そして人間の言葉を話す
二本足で歩行し
料理も炊事も家事も
なんでもやっている
この巨木を案内したあのフクロウも
自分の名前をジャブーだと教え
姿はフクロウそのものだが
人間の言葉を話している
「魔法・・・・
摩訶不思議な法則・・・」
「難しいことを知ってるな
人間の子もバカにできん」
「マザーさんは
魔法使いなんですね・・
だからから・・」
「だから?」
「僕が人間の世界に
帰る方法を知ってる・・」
「厳しいことを言うようだけどね」
「・・・」
「期待しないほうがいい」
「どうしてですか」
「相手が”マザー”だからだよ」
「どういうことですか」
「逢えばわかる
そして絶望する」
「・・・まさか
僕を騙してるんですかマローンさん」
「え?」
「僕をマザーの食料に・・」
「あ!ははは!あ!ははは!」
「楽しそうですね
マザーに褒められるんでしょ」
「ははは ちがうよ
マザーはそりゃあ何でも食べるけど
僕は食べられてないだろ」
「マローンさんが食べるんですか」
「僕は肉魚は食べないよ
だから二足歩行し
そして言葉もしゃべる」
「ん?」
「とにかく君を食べる予定はない
そういう絶望じゃないよ」
「どういうことですか」
「だから逢えばわかるって
ん?」
マローンの木の床の一部から
土煙がわずかにしはじめる
「あれ?早いな」
「なんですか・・・この煙」
「招かざる客だよ」
すると床の一部がガッパリ!と
跳ね上がるように開き
そこから黒い者が頭を表した
(つづく)
+登場人物
・モンキチ 小4の少年(9歳)
・マザーベス 島の魔女(50歳)
・マローン 巨木の住人(22歳)
※年齢は人間界で想定した見込み齢です