二 葛藤のジャブー
目が覚めたら驚く朝
経験したことがありますね
見慣れた天井ではないだけで
驚いてしまう
「そうだ旅行していたんだった」
とか
「そうだ親戚の家に来てるんだった」
とか
モンキチの目には
木々の幹と青く茂る枝葉が広がっていた
モンキチは驚いて飛び起きた
海に居たはずだ
なぜ目が覚めたら森にいる
(チロル・・?)
チロルが居たはずだがいない
リードもなにもない
誰かに連れてこられたのか
学校の遠足中寝ていて
引越す夢でも見たのか
(ちがう
ちがう
ちがう)
知らない場所だ
見たこともない森だ
誰もいないじゃないか
(どこ・・なぜ・・)
モンキチの頭はおかしくなりそうだった
大きな苔むした木の根のベッド
そこから起き上がり
周囲を見回すが誰もいないのだ
(そもそも何時だ?)
モンキチは腕時計に目をやる
父親からもらった腕時計だ
オレンジのベルトのクォーツで
ストップウォッチ機能まである
(壊れてる?)
時計は止まっていた
秒針すら動いていない
でもストップウォッチは動くようだ
時間が分かろうが今はそこが問題じゃないのだ
モンキチはとにかく歩き出す決心をした
浜辺でチロルとある場所へ入ると
急に睡魔が襲ってきた
そして目が覚めたらここだ
少し歩くと木々の隙間から太陽が見えた
「遭難した時は動くな」
と学校で習ったが
実際そうなるとそうもいかない
待っていても誰も来そうにないのだから
10分ほど歩くと不安になった
ちゃんとまっすぐ進めているのか・・
モンキチは根っこがあちこち隆起し
獣道すらない森の中をひたすらに
まっすぐす進みたいが・・
同じ場所をループだけは避けたい
小学四年生でそう考えるのか
モンキチは川か海に出れるのを期待した
30分歩いただろうか
するとそこのは開けた草地が広がっていた
草地の真中に切り株があり
モンキチはそこに腰かけ小休止した
すると切り株のしたから
「誰ジャ!
どけ!」
と突然声がした
モンキチは思わず驚いて飛び跳ねた・・
すると切り株の切り口の年輪部分が
カパッと蓋となって開き
中から真っ黒のフクロウが
バサッ!
と飛び出てきて切り株の入り口に
フワリ
ととまった。
羽根を広げると2mはあっただろう
今は折りたたんで体に付けている
そのフクロウの瞳は鋭く光り
キッ!
と尻もちついて草の上に座ってる
モンキチを見下ろす
「キキー!!」
「?、、しゃべっ・・てない・・よね」
「貴様ぁ・・」
「!・・しゃべれるんですか!?」
「ロンメルか!貴様!」
フクロウが大声でそう言うと
モンキチは尻もちのまま
とたんに泣き出した・・・
「?・・おい!・・おい?
どうした?うるさいぞ?」
そんなフクロウに構わず
モンキチはワンワン泣いた・・
:
:
:
「・・・そういうことか
ロンメルの手先じゃなかったか」
「家に帰りたいんです
どうすればいいですか?」
「残念だな小僧
無理だな。。。
小僧の体力はほぼゼロ
とても帰れまい。。」
「町や誰か人間の家は」
「人間ねぇ」
「。。。わからないことばかりで。。」
「そうジャなぁ、、
お前がどうなってしまったのか、、
教えてやろうかの、、」
「。。。。はい。。」
ジャブーは泣き止んで落ち着きを取り戻した少年に
少年の境遇を教えてやった
・少年のいる世界は元の世界のはるか時間が別の世界
・時間壁という場所で区切られていて
・決壊穴という穴で行き来できる
・穴の位置は誰もわからない
・その穴に飛び込んで元の時間に戻れるか知らない
・ただし・・・
「ただし?」
「物知り婆さんなら何か知ってるかもしれない」
「どこに居るんですか
会いたいです」
「無理だ」
「なぜですか」
「あの婆さんは人間が好きだからだ」
「え。。」
「食うと美味いそうだ」
「そんな・・」
「それは噂ジャが
そもそも頼まれることが大嫌い
誰かの役に立つことが大嫌い
誰かが喜ぶことが大嫌い
そんな婆さんだからな
教えてくれといっても無理なんジャ」
「。。。。いい方じゃないですか」
「ハ?何ジャと?」
「要するに
誰かが困ったりするのが大好きなんでしょ?」
「よくわかったな・・そうジャ
ろくでもない婆さんジャ」
「なら大丈夫。教えてもらえます。
どこに行けば会えるんですか?」
「・・・変わった小僧ジャな。。
途中まで連れていってやる
この森は方向を失う迷いの森ジャ
婆さんの家は森の真ん中にある
しかし誰もたどり着けないように
方向感覚を失うよう魔法がかけられている」
「どうやっていくんですか・・」
「わしは空を飛んで行ける
森の上には迷わせる魔法はかかってない」
「!あぁ」
モンキチ少年の肩に乗って出発したフクロウの名は
ジャブーと言った
ジャブー頭上高く森の上に飛びあがり
婆の家の方角を確認して舞い降りる
そのジャブーを目指してモンキチは歩く
モンキチがジャブーのところまで歩いてくると
再び上空へ舞い上がり・・・
この繰り返しでモンキチが15kmは歩いただろうか
すると前方に高くそびえる巨木の幹が見えてきた
「あの巨木
あれが大魔法使い婆の家ジャ」
外周を回ると悠に学校のグラウンド周囲くらいはある大木
遥か上を見上げても鬱蒼と枝葉が茂り
空など見えなかった
「この巨木の中が婆の家ジャ
入口はどこか知らんが
どっかにあるジャろ
わしは婆に見つかりたくないから
もう引き上げる 達者でな」
「あぁ!ジャブーさん!」
モンキチが呼び止めてもジャブーは空高く飛び上がり
消えて見えなくなってしまった・・
モンキチは巨木の入り口を歩きながら探すことにした・・
+登場人物
・モンキチ 小4の少年(9歳)
・ジャブー フクロウ(4✕歳)




