第95話 陽気なサテュロス族 2
サテュロス族の村で休憩させてもらうことになった
しばらくゆっくり休もうとしたがそれは叶わなかった。すぐに小屋の扉が開き男が半身をのぞかせる。
「ヒュー本当に女ばっかりだな」
「用がないなら出て行ってくれないか」
俺が男を追い出そうとすると彼は悪かったよと言った。
「ほらこれ食いもん持ってきてやったの、気分が悪いやつがいるって言うからさ」
手にしているかごにはパンや煮物、パイなどが入っている。無神経だが悪い人ではなさそうだ。
「あっあっちょっとここから先は別料金になりますお客さん」
サテュロスの女が立ちふさがる。
「なんだよいいじゃねえかちょっと見るだけ、ね?俺も食料を持ってきたんだし物々交換だろ?夜のおかず、なんちゃって」
そう言って男はげらげらと笑った。皆うんざりというような顔をしている。
ここで俺は少し不思議なことに気づいた。サテュロスの女は足の先の蹄が二つに割れているが男は馬のように割れていないのだ。フォーン族のエルデンとも違う。
「なに気になる?俺の足?」
男は俺の視線に気づいたようだ。
「いや蹄の形が違うと思ってな」
「あーそりゃそうだろ、俺はサテュロスじゃなくてシーレノスなんだから。ほら足が馬なんだ、尾も長いぞ」
男の言うとおり後ろからは馬のように長い毛が垂れている。
「アソコも馬並み、なんてな試して見る?」
俺はシーレノスの男を小屋から追い出した。
「悪いなうるさくして、あいついつも見栄を張るんだ本当は出来損ないのウインナーみたいなんだぜ」
ついでに女も無視した。
「とりあえず貰ったものは食べよう、フィリアナ食べられるか?」
俺はかごの中の食料をみんなに配った。セシリアは変わらず不服そうな顔をしている。
食事の後フィリアナやピヨ、ポリーンは昼寝を始めた。エレナーゼも干草の上に伏せて眼を瞑っている。俺たちはしばしの間休憩を取った。