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第93話 黒い風 2

ついにエレナーゼを追う黒いケンタウロスと対峙することになった

 横に引かれた短剣はまるでバターを切るかのように静かにケンタウロスの首を切り裂いた。


 一瞬の出来事だった。


 裂かれた傷口から赤い血がにじんだかと思うとブシュッとしぶきを上げ、男は声を発することなくその場にどさりと倒れた。


 そのあまりにも衝撃的な出来事に皆、石像のように体を硬直させる。セシリアは何事も無かったかのように馬の上から飛び降りると、布で剣の血をぬぐった。


 一拍してから横で狩人の男の叫び声が聞こえ、倒れているもう一人の男を引きずりながら逃げていった。


 シャリンがゆっくりと黒いケンタウロスへ近寄る。


「……完全に死んでいる」


 いつもはうるさいぐらい元気なピヨも状況が飲み込めず唖然としている。とりあえず俺たちはもう追いかけられることはなさそうだ。


 すると隣でカランという鈍い音が聞こえた。横を向くとフィリアナが剣を落とし両手を顔の近くで小刻みに震わせている。


 みるみる顔が青ざめていったかと思えばガクッとひざを折りその場に座りこんでしまった。


「大丈夫か?しっかりしろ」


 俺とニーナが慌てて横から支える。


「あ、あのすいません、わたくし……」


 同族が目の前で悲惨な死を遂げたショックだろう。浅い呼吸を不規則に繰り返している。


 するとセシリアは彼女の前に近づき冷たい視線を送る。


「あなた人を殺したことがないの?まさか同じ種族だから?その騎士みたいな格好はいわば仮装ってところね」


 そう吐き捨てるとまたすたすたと歩きだした。それに続きローレンもなにかぶつぶつとつぶやいている。


「フッい、いきがってたわりには、た、たいしたことないのね」


 俺は持っていた水をフィリアナに手渡した。


「大丈夫ですか?立てますか?」


 エルデンがそっと近づいてきた。彼はとりあえずここを離れましょうと言った。


 俺は黒いケンタウロスの顔に持っていたタオルをかけ、その場を後にした。


 しばらくすると森を抜け開けた草原へとたどり着いた。


「あそこの村が見えますか?あなたたちが目指しているところはまだもう少し遠くにあります。今日はあの村へ行き休ませてもらうといいでしょう」


 草原の向こうのほうに小さな家がいくつか建っているのが見える。


 俺たちは彼に礼を言うとその村を目指し歩き始めた。


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