第79話 知の聖獣、スフィンクス族 2
負傷している中、顔が人で体がライオンのような生き物に出会った
俺たちは人面猫の後ろに続きゆっくりと森の中を歩き続ける。すると草木が生い茂った場所の前で突然歩みを止めた。とてもじゃないがこんな場所は進めない。太い木や長いツタ、硬い葉の藪がまるで厚い壁のように立ちふさがっている。
しばらくすると茂みが風も無いのにざわめき始めサッと道をあけた。まるで秘密の通路を隠しているようだ。
「さあこっちよ気をつけて狭いから」
道が開けたといっても獣道のようで姿勢を低くしてやっと通れるという具合だ。俺はみんなを先に行かせ、負傷しているフィリアナのため葉を押しのけながら進んだ。
しばらく進むと開けた場所へと出た。そこには葉や布で作られたテントのような建物がいくつも並んでいる。
「ここが私の住んでいる村。本当は外部の人は連れてきてはいけないの。だけど命を助けてもらったから特別よ」
日はすっかり落ち夜になったためか外には誰もいない。
俺たちは数あるテントのうち一つに連れて行かれた。
「さあ入って」
彼女に促されるまま俺とシャリンは中へと入った。内部はオレンジ色の火の明かりに照らされ、お香の香りが漂っている。
端に積み上げられたクッションの山の上から一回り小さな男の人面猫が降りてきた。手足は短く丸顔でマンチカンという種類の猫を思わせる。
「なんだよこんな夜に、え?人間だと、またなんてものを連れてきたんだ」
「まあ落ち着いてまずは彼らを治療してあげて欲しいの」
一回り小さな人面猫はこちらを見ると眉間にしわを寄せあからさまに嫌な顔をした。どうやら彼がここの村の医者らしい。
まずは重症なピヨから治療してもらうことにした。そのあいだ俺は助けてくれた人面猫の家へ案内してもらいそこで休んだ。