第78話 知の聖獣、スフィンクス族 1
暗くなっていく森の中、同じように弱っている不思議な動物を見つけた
俺はその奇妙な姿に釘付けになった。何度見直しても女の頭がついている。毛皮はオレンジががった色をしており、黒い長髪が特徴的だ。
なかなか戻ってこない俺を心配してかみんなが近寄ってきた。
「アリスガワ何をしている?なっ、なんだこの生き物は?」
後ろから覗き込んだシャリンが驚きの声をあげる。それに続き皆、口々に同じような言葉を発する。どうやらだれも見たことの無い、全くの新種族のようだ。俺は目の前に倒れている人面猫の肩を揺さぶった。
「おい大丈夫か?」
すると周囲の喧騒を察したのかゆっくりと体を起こした。こちらの存在に気づくとハッと目を見開き後ろへと距離をとる。
「あっよかった元気そうだな」
すると人面猫はこちらを睨み低い声で話し始めた。
「あなたたちはだれ?冒険者ギルドのやつらね」
姿勢を低くし毛を逆立て今にも飛び掛ってきそうな勢いだ。
「いや違う違う、俺たちはただの旅人だ。別に戦うつもりはない、ほらこんなだしな」
彼女は俺たちをじろりと見回すと警戒を解きその場に座った。
「どうやらそうみたいね、というかあなたたち満身創痍じゃない?なにがあったの?」
俺はエルフ族と出会ったことを伝えた。もちろん一応こちらが悪かったとういことにしておいた。
「あらそれは不幸だったわね、最近は森に侵入しようとする不届き者が増えてね」
人面猫は言葉を続ける。
「私たちは滅多に人のいる場所には行かないの。だけど私たちの存在がどこからか漏れて貴族の耳に入ったみたいで、高額の賞金が掛けられてしまってね」
おそらく町の冒険者たちをにぎわせていた原因はこの人面猫だろう。
「それで追いかけられてたってわけか」
「そう、べつにそこらへんの冒険者なら適当に追い払えるんだけど貴族が雇った専属のケンタウロスがいてね、それが手ごわくて。だってずっと追いかけてくるのよ」
ということはまだここらへんにその手ごわいケンタウロスがうろついている可能性がある。
「なあこの近くに安全に休める場所を知らないか?俺たちはこのとおり怪我をしてるんだ」
「それなら私の村に行きましょう。こっちよ」
本当に信じてよいのかわからないが今はこの人面猫の助けを借りるしかない。