第74話 エルフ族の森 2
道中でエルフ族に会ったが協力どころか逆に襲われてしまう
目の前の男は剣を抜きこちらに近づいてくる。
「ちょっと待ってくれ、俺たちは冒険者では……」
言葉を言いかけている俺にどんどんと距離を詰め、刃を軽く振り上げた。仕方なく腰の短剣に手をかける。
そのときポリーンが横から走ってきた。
「だめっやめて!」
ポリーンは男の足元にしがみつこうと近寄っていく。だが彼女の姿を横目で確認すると顔色一つ変えることなく、まるで何千回と行われた作業のように片手で軽く剣を振り下ろす。
このままでは文字通りポリーンは真っ二つになってしまう。俺はすぐに駆け寄り抱きつくようにかばった。
だが剣を振り下ろす速度に果たして追いつけただろうか。ふとそう思ったとき、音も無く顔のすぐ横を日光を反射しながら銀色の刃が通り過ぎていく。
剣はスッと、まとっていたマントを切り裂くとそのまま俺の肩に食い込んだ。薄く冷たい刃が肉を切り裂き筋肉の繊維を滑っていく感触に寒気が走る。
それはまるでスローモーションのようで斬りつけられている感覚が永遠のように感じた。
刃が肩から抜け我に返った数秒後、傷口から真っ赤な血が流れマントを濡らしていることに気づく。
俺はすぐに傷口を手で押さえた。それと同時にとてつもない痛みが走る。
次第に周囲の音がはっきりと聞こえてきた。どうやら俺への攻撃を皮切りに取り囲んでいたエルフたちが仲間に一斉に襲い掛かったようだ。
エルフの戦士たちは今までの敵とは比べ物にならない強さだ。戦うための訓練を徹底的に受けているように見える。動作に全く無駄が無くニーナを翻弄し、シャリンよりもすばやく動いている。フィリアナは姿勢を低くされ目線の届きにくい死角から一方的に攻撃を受けている。
俺は腕の中にいるポリーンに小声で話しかけた。
「速くピヨと一緒にここから逃げるんだ、今はそれしかない」
しかしポリーンはぶるぶると震えたままじっと固まり動こうとしない。
辺りを見渡すと木の上にピヨが隠れているのを発見した。だがピヨはその場所からこちらに来ようとしている。
「ピヨ、こっちに来ちゃだめだ!ポリーンと一緒ににげ……」
そう叫ぼうとしたとき木の上から飛び出したピヨの翼を長い矢が貫いた。