第73話 エルフ族の森 1
町では特別な指令が貴族から出されたおかげでお祭り騒ぎだった
俺はシャリンとフィリアナと急いで買い物を済ませるとエルフが住んでいるという森に向かった。回り道をしても良いのだが無駄な労力を使うのは得策ではないという意見で一致した。
森はやわらかな光が差し込み空気も澄んで穏やかだ。木の葉が適度に日差しを遮ってくれているおかげで涼しく快適だ。
「なあ俺たちは今どこら辺にいるんだ?」
俺の言葉にフィリアナは地図を広げる。
「うーん私たちがスタートしたのはギ・クーバイァ、今はクーバイアの朝露の森というところにいます」
どうやらこの大きな大陸はクーバイアというらしい。全く土地勘は無いが一応知っておいたほうが良いだろう。俺たちはどんどんと歩みを進めていく。
そろそろ休憩をしようか、そう言おうとしたそのとき静かな森に聞きなれない男の声が響いた。
「お前たちここで何をしている、すぐに立ち去れ」
ふと声のほうを見ると馬に跨った騎士がこちらを見下ろしている。傷一つない鎧にマントをまとい腰には長い剣を差している。
よく見ると耳がとがっているのでこれがエルフ族なのだろう。
「俺たちは旅をしているんです、ここを通してもらえませんか?この先の国に行きたいんです」
「だめだ引き返せここは通さない」
だがこちらもここで引き下がるわけにはいかない。
「ダークエルフを追っているんです。やつらは何かを企んでいる、速く行かないともっと被害がでるかもしれないんです」
俺は必死に今までの出来事を説明した。
だがエルフ族の男は顔色一つ変えることなかった。
「ダークエルフだと?それは昔からいる。特に問題ではないすぐに立ち去れさもなくば」
男は剣を鞘から抜き放った。鉄とも違う素材で作られたようなピカピカの刃が光を反射し輝いている。
「アリスガワ、これはまずいかもしれない辺りを見回してみろ」
シャリンに言われたとおり周囲に目をやると数人のエルフ族が武器を構えてこちらを狙っている。
再び目の前の男に視線を戻すと男は馬から降り、薄い笑みを浮かべた。
「まあよい、面倒のかかる害獣どもだとりあえず始末してしまおう」