第71話 港町 2
渋い顔をされながらも船に乗ることに成功した一行
しばらく波に揺られつつ俺たちは無事に対岸にたどり着くことができた。船乗りの男に礼を言うとこちらに目もあわせずにそそくさとどこかへ行ってしまった。
着いた先の新しい港町は来た町より船も人も多く、より規模が大きいことがうかがえる。
というかなんだか人が異様に多い気がする。しかもほとんどが武器や鎧をまとったいわゆる戦士たちである。
「むっこれはなんだ?なぜこんなにも冒険者が?」
「なあ冒険者って厳密にはなんなんだ?俺も何度か聞かれたけど、俺たちも一応冒険者なのか?」
シャリンの言葉に俺は今まで少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
「冒険者というのは冒険者ギルトという組織に所属していてそこで依頼を受けて生計を立てている者たちだ。依頼はいろいろな人からだされる。たとえば害獣の駆除だったりな」
この定義からすると俺たちはやはり冒険者ではないようだ。
「だがこの依頼、時にはピヨやニーナの仲間を討伐する、なんてものもある」
シャリンは二人に聞こえないよう耳元に顔を近づけそっと囁いた。討伐、ということは殺してしまうのだろうか。そうなるとどこまでが殺人かわからなくなってしまうのではないか。
物思いにふけっている俺にシャリンはいそいで皆を隠すように伝えてきた。
とりあえず俺たちは人目がつかないように町のはずれまでやってきた。
「ふう、新しい町についてからなんだか騒がしいですね、お祭りでもあるんでしょうか」
「ほんとよ、もう休みたかったのに!」
フィリアナの隣でニーナが不満を漏らしている。
「とりあえず何が起こっているのかあそこにいるサテュロスに聞いてみるわ」
ニーナの指差す先には家の後ろに積み上げられた木箱の上で寝そべっている人がいる。名前を知っているということは知り合いだろうか。
それを聞く前に彼女は寝そべっている人の元へさっさか向かってしまった。