第60話 幻の糸、アラクネ族 5
服屋の店員に店を教えてもらい物資を補給しに行く五人
教えてもらったとおり市場へ向かう途中だが、俺には気がかりになることが一つあった。それはいつもはうるさいぐらいのニーナがやけに静かなのだ。
「おいニーナ大丈夫か?」
俺の呼びかけにハッとしたように顔を上げた。
「な、なんでもないわよ」
「どうもそうは見えないけどな。なんだフィリアナのこと気にしてるのか?」
ニーナはまるで図星です、というような表情を浮かべる。
「違う、そんなんじゃないわよ!ただ、ちょっと心配なだけよ……」
自分が無理をさせたせいで怪我をさせてしまったことを悔いているようだ。彼女の性格上悪いことをしたのはわかっているが素直に謝れないのだろう。
「なによ、わかってるわよあたしのせいでしょ!私がわがまま言ったからでしょ!ちゃんと見張りもできないなんて幻滅したでしょうね」
「そうとは言ってないだろ」
俺の言葉を遮るようにニーナは続けた。
「あーもういつもこうなっちゃうのよ、いつも、言いたいことはわかってるのにどうしてなの!あたしがこんなせいでいつも周りが迷惑しちゃうのよ!」
彼女がすべて言い終わるのを待ち、俺は落ち着いて返答をした。
「言いたいことがわかっているならそう言えばいいんだ」
「だから、それが言えたらなにも苦労しないわよ!それにフィリアナだってあたしのこと嫌なやつだって思ってるに決まってる」
「ごめんねと一言いえばいいんですよ」
俺の後ろからポリーンが笑顔で答える。
「うむ、ポリーンの言うとおりだ。こんなことでフィリアナは人を嫌いになったりなどしない」
シャリンもうなずきながら賛成する。
「……本当にそう思う?」
「ああ、今彼女は小屋で一人きりだ行って来い」
ニーナは心細そうに一人で小屋に引き返して行った。
「ヒロ、ニーナ大丈夫かな?」
「根はいいやつなんだ、大丈夫だろう」
俺たちは再び市場へと向かい歩き出した。