第58話 幻の糸、アラクネ族 3
戦いで脚を痛めてしまったフィリアナを連れ、アラクネの村で休憩をとることにした
俺たちはなんとか一息つくことができた。フィリアナの怪我も一日休めば良くなりそうだ。この間に食料や物資を補給することにした。
「そういえばまだ名前聞いてなかったな、俺は亜李須川弘明、こっちはシャリンとピオーネ、ニーナとポリーン、フィリアナだ」
「わ、わたしはローレン」
一通り紹介を終えたところで俺はこの小屋に入ったときから感じているあることについてたずねた。
「なあ、この小屋なんだかちょっと臭うんだが……」
女の子には聞きにくい質問だが皆顔をしかめて賛同している。
「あ、ああこの臭いね、うふふ、ふ、言ったでしょ私ネクロマンサーを目指しているの、と、当然死体がある、ってわけ」
ローレンの言葉に全員背筋に寒気が走ったように肩をすくめた。
「ネクロマンサーってなんだ?」
俺の質問にローレンはうれしそうに答える。
「ふふふ、死霊術士のことよ、死体をあやつる黒魔術、わ、私は指に糸を巻いて死体に魔力を送るの。そしてまるで操り人形のように、し、死体を操るのよ」
そう言うと彼女は手にはめてる鉄の爪がついた手袋を見せてくれた。
「と、ところであなたたちは、な、なんの集まり?」
俺たちはそれぞれの目的を話した。
「まあ俺の話は信じてもらえないと思うけど」
「いーーえ、信じるわなんてすばらしいの!そんな話があるなんて!わ、私も行きたいわその旅、だめかしら?」
ローレンは興奮した様子で俺にぐいぐいと迫ってくる。
「でも親はだめって言うんじゃないのか?」
その言葉に彼女はしばらく考え込み、相談してくると言って去って行った。
「なんか、強烈な子ですね」
「そうだなその、個性的だ」
フィリアナとシャリンは少し参ってる様子だ。ポリーンは死体という言葉に怯えている。
「とりあえず外へ出よう、俺たちは物資の補給をしてくる。フィリアナは悪いが少し待っててくれ」
「ピヨがいい香りのお花つんできてあげる」
俺たちはフィリアナを残しアラクネ族の村へと出た。