第57話 幻の糸、アラクネ族 2
襲撃の犯人を知ったみんなはお詫びに村へと案内してもらうことにした
アラクネ族の村へ行くことにニーナは乗り気ではない。自分たちを襲ってきた相手を信用できないのだろう。
だが食料も少なく疲労している今それが最善策だ。
「こ、こっちですよ」
俺たちがアラクネの女について行こうとしたとき後ろでフィリアナが立ち止まった。どうやら先ほどの戦いで足首を痛めてしまったようだ。
「ごめんなさい、わたくしみなさんの足を引っ張ってばかりで」
「いえフィリアナさんは私とピヨちゃんを守ってくれたんです」
ピヨとポリーンが心配そうに見守る中、俺とシャリンでフィリアナを支えるように進むことにした。
女の人とはいえ下半身は大きな馬のため体を支えるのは二人がかりでも大変だ。
「ねえ、ピヨも手伝おうか?荷物もとうか?」
「いや大丈夫だ、それにピヨはさっき犯人を見つけてくれたしな」
それでもやはり不安そうな顔をしている。
しばらく進むと薄暗い森を抜け日の光が適度に差し込み、そよ風が心地よい明るい場所へとでた。
太くて高い木を囲むようにツリーハウスのような建物がいくつも建てられており、そこに蜘蛛の巣のような複雑な釣り橋が幾重にもかかっている。
そのつり橋の上や高低差のある小屋の間を器用にアラクネたちが行き来している。
「か、体のちいさな人ほど木のぼりがじ、上手なのよ。なんたって体重が、軽いから。さあこっち」
俺たちは村から少しはずれた場所にある小屋へと案内された。
「こ、ここは、私の、仕事、というか趣味のへ、部屋」
小屋の中には本や見たことも無い怪しい薬瓶、魔術の道具などがところせましと置かれている。二階の屋根裏部屋へと通された。かなりほこりっぽいが休むのには十分だろう。
俺とシャリンはフィリアナを古びたソファーの上に横たわらせ痛めた足を冷やした。