第54話 行く手を阻む森 1
ゴブリンに荷物を盗られ、慌てて道を急ぐニーナ
道からはずれればはずれるほど森は密度を増し、足元は太く曲がった木の根に覆われとても不安定だ。
後ろのほうでポリーンとピヨが足を取られ転んでしまった。
「おい、大丈夫か?」
そうしている間にもニーナはどんどんと先へ行ってしまう。
「仕方ない、フィリアナ悪いがこの二人を背に乗せてくれないか?俺が前の草を切って道を作る」
「ええ、わかりました。二人とも落ちないでくださいね」
俺は短剣を取り出しニーナのように草を切りながら進んだ。隣にいたシャリンも手伝ってくれている。
それでも地面が見えないほど生い茂った草と不安定な足場のせいで背の高いフィリアナは進みにくそうだ。何度かバランスを崩しそうになっている。
俺のほうも硬い草が果てしなく体にまとわりつき剣を振るう腕もつらくなってきた。
途中ニーナを呼んだが返事は返ってこなかった。
しばらく進んでいくと少し開けた場所にでた。しかし木に阻まれ日光が届ないせいか不気味に肌寒く薄暗い。
俺はニーナに歩み寄った。
「おい、ちょっと待てってそんなに急いでどうする。怪我でもしたら大変だろ?」
「さっきも言ったでしょあたしたちに時間はないの?それともみじめに野垂れ死にたい?」
彼女の言うこともわかるが慣れない場所を歩いたせいかフィリアナは相当体力を消耗しているようだった。
「大丈夫か?」
「ええ今まで町の中にいたので体がなまっているんですよ」
シャリンの声がけにフィリアナは笑って答えた。だが荷物の疲労も合わさって足取りは重い。
ふと開けた場所の中央に二体の動物の死体が転がっているのを見つけた。体つきは二足歩行の恐竜のようで一方は短い毛が生え、もう一方は一回り大きくとかげのような皮膚に覆われている。
「一つ目のほうはワンアイガルルガ、手が鉈のようになっているのはデスハチェットといいます」
フィリアナの説明どおり毛の生えているほうには顔の真ん中に大きな目が一つ付いており、体の大きなほうは手が無く刃物のようになっている。
「どうやら相打ちになったようですね」
俺たちは二体の死体を避け再び森へ歩みを進めた。