第53話 姑息なゴブリン 2
町を出発した矢先、ゴブリンたちに荷物を盗まれてしまった
あわてる俺たちをあざ笑うかのようにゴブリンは去っていった。
「はあ、くそっなんなんだよあいつら。おいみんな大丈夫か?」
幸いにも疲れただけで怪我はしていないようだ。
「なんていうことなの、ゴブリンたちは私たちが荷物を置いていなくなるのを待っていたのね」
「あいつらは小さいがずる賢く、ああやって集団で行動している。単体では大したこと無いが集まると厄介な連中だ」
俺はシャリンの説明にがっくりとうなずいた。
ずる賢いというのは本当のようであいつらは食料が入った荷物だけを器用に盗み出した。
「えーんピヨのおやつ全部なくなっちゃったよー」
「とりあえず今は落ち着いて残っている食料で腹ごしらえをして、それから考えよう」
俺の言葉に皆賛成した、だがニーナだけはそうではないようだ。
「はあ?なに言ってんの?この食料じゃ一日だって持たないわよ!ここから次の町まであと最低でも二日はかかるのに!」
するとニーナは乱暴に荷物をまとめ始めた。
「休憩はおしまい、さっさといくよ」
そしてそのまま足早に先へと進み始めた。仕方がないので黙ってついていくことにした。
「ちょっと地図貸して」
ニーナはフィリアナから地図を受け取ると道からはずれ茂みの中へと入っていった。
「ニーナさんそっちは危ないですよ」
後ろからポリーンが心配そうに声を掛ける。その声を無視し、ニーナはどんどんと硬い草の生い茂る森の中へと進んでいく。
「彼女、この森を突っ切るつもりですわ。確かに近道ですがなにが潜んでいるかわからないので用心しましょう」
ニーナはこちらを振り返ることなく周りの草を切りながら先へ急ぐ。周囲は密度の濃い草や木に囲まれさながらジャングルのようだ。
俺たちははぐれないよう草を押しのけ進んだ。