第52話 姑息なゴブリン 1
新たな仲間を加え旅を続ける一行
一人仲間の増えた俺たちはその後も旅を続けていた。今のところキラービー以外特に猛獣に会うことも無くもくもくと歩みを進めている。
「次の町まで結構距離があるみたいですね」
フィリアナは地図を見ながらつぶやいた。また二、三日は野宿だろう。まあ前回の町で手に入れた食料も十分にあるし特段困ることは無い。
「あんたの服結構かわいいじゃない」
「えへへ、そうですか」
ニーナはポリーンの着ている花柄の刺繍が施された茶色のスカートを褒めている。どうやら落ちいてたきれいな布をそのまま身にまとったらしい。
そんな話をしながらしばらく歩き、昼食をとることにした。
荷物の番をニーナにまかせフィリアナとシャリンは水を汲みに行き、俺とピヨ、ポリーンは近くの森を散策することにした。
俺は大きな木の近くに腰を下ろし買ってきたパンと魚の燻製を取り出した。
「おいピヨ、お前も食べるだろ」
「ねーこっち来て」
ピヨに呼ばれ後ろを振り返る。視線の先にはもぞもぞと動くきのこの生えた苔がいた。よく目を凝らすとそれは動物の背でまるでナマケモノのような姿をしている。
長い爪と尾をもつその生き物は近くの木の根元を掘りそこへ体をうずめた。
「あれはコケセという生き物です、ああやってじっとして隠れているんですよ」
「ふーん」
俺はポリーンの言葉にゆっくりうなずきながらパンをかじった。
そのとき静かな森をつんざくようなニーナの悲鳴が聞こえた。食べかけていたパンをしまい急いで荷物のもとに戻る。
そこには大量の緑色の皮膚をした小鬼がところせましと走り回り荷物を物色している。
「この!くそったれゴブリンめ、さっさとどこか行きなさいよ!」
ニーナは多くのゴブリンたちに翻弄され両手に持った剣をぶんぶんと振っている。そこへ水を汲みに行っていた二人が帰ってきた。
「まあ、なんてことなの!」
ポリーンとピヨは一生懸命に荷物を取り返そうと追い回している。俺も剣を抜き荷物にたかるゴブリンを虫のように追い払った。
その後全力で追い払ったもののいくつかは盗まれてしまったようだ。