第41話 魅惑の悪魔、サキュバス 3
サキュバスに足止めをくらいながらもピヨが水晶の近くまでたどり着いた
思い切り地面へと叩きつけられた水晶玉は高い音を立て砕けた。中央には大きなヒビが入り、粉々になった欠片がきらきらと宙を舞う。
眼前まで迫っていたサキュバスが祭壇のほうを見る。
「くっあと少しだったのに!」
「いいのか、早くしないと地獄に戻れなくなってしまうぞ」
意識を取り戻したシャリンがサキュバスに声をかける。
エネルギー源を失った扉はどんどんと小さくなってゆく。
「覚えてなさい!」
そういい残すと閉じかけた穴に体を滑り込ませ帰って行った。ぼやけていた視界が晴れ、周囲の音がはっきりと聞こえてきた。
「ほら、さっさと立てこの呪術師め!」
「あああぁ、そんなあと少しだったのにぃ」
マントをかぶった不気味な老人は衛兵に連れて行かれ、後から来たであろう援軍にオークたちは拘束された。
「ピヨ、お前やるじゃないか!」
「えへへ、やったー」
俺は祭壇のそばにいるピヨに駆け寄った。
「だがアリスガワ、水晶玉は砕けてしまった。お前の希望だっただろ?」
シャリンは申し訳なさそうに欠片を拾う。
「まあ確かにな、でもこれで帰れる希望は見えた。なにも一つだけじゃないだろ?」
異世界への扉を開けるためのアイテムはほかにもあるはずだ。今は騒動を抑えるのが先決だった。
残った悪魔は一部が討伐されその他は町から去っていった。囚われていた人々も開放され、かくして町に再び平和が戻った。
「いやーありがとう勇者よ、そなたのおかげで町は救われた」
「はぁい、さすが勇者様。わたしは始めからやってくれる方だと思っていましたよー」
領主とその側近は手のひらを返したように調子のいいことを言っている。俺たちはお礼として金貨や宝石、そして剣とマントを授かった。