第396話 密林の果て
アルラウネに絡まれるも仲間の助けでなんとか逃げだすことができた
アルラウネという女の形をした動く植物に襲われるもなんとか危機を脱することができた。今回のことと言い、触手の花や花の咲いたトカゲなどさすが密林なだけあってまるで植物の王国だ。動物は大きな緑の檻に閉じ込められているようにも受け取れる。俺たちは再び道に戻り密林の出口を目指した。
黙々と歩いていく中、ニーナがちらりとロビスオーメンの女のほうを見た。
「あんたはさ、ボスと一緒にいなくていいわけ?」
「……はっ私のことか。大丈夫だ、私は戦闘員の一人なのだからな」
女をはべらせていたループが戦闘員として認めるなんてかなりの腕なのだろう。まあ確かに見た目も背が高く手足が長い。かわいらしく座っているというよりスポーツに向いていそうな体形だ。この会話にリーダーの男が笑った。
「はは、俺も言ったのだけどな。こんな危ない部隊にいなくともいいのにと。それにお前ほどの女、きっとボスなら近くに置いてくれる」
「私にループ様はもったいなすぎます。それに自分は戦いに身を置いているほうが性に合っていますから」
俺なら危ないことをするよりかわいい顔して食べ物だけ安全にもらいたいと思ってしまうが。戦いの好きなループに彼女はぴったりではないだろうか。
「俺はボスに合っていると思うけどな」
そうつぶやくとニーナにひじでつつかれた。なにか悪いことを言ったのか?意味がわからない俺に彼女はリーダーの男へ意味ありげに目線を送った。でも一体どういうことなのか?やはり意図が汲み取れ……ああなるほど。あの女はきっとリーダーのことを気に入っているのだ。憧れと恋心が混ざったような気持ちなのだろう。だが相手はそれに気づいていない、なんとも歯がゆい関係だ。
そんな雑談をしながら俺たちは密林を進み続けた。道無き道を行き二日間、ついに生い茂っていた高い木が姿を消し始めた。開かれた場所、遠くに見える海、透き通るような風。俺は肺一杯に海風を吸い込んだ。少し生臭い潮独特の匂い、だがそれが心地いい。日も落ち始めた砂浜はとても静かで心がスッと落ち着いていくのがわかる。
「ここまで送ってくれて本当にありがとう。二人の手助けがなかったら今頃道に迷っていたよ」
「いえ、お礼を言うのはこちらです。あなたがたと出会ってループ様は大人になることができた」
ロビスオーメンの二人は頭を下げると再び密林へと帰っていった。彼らにも幸運が訪れることを願い後姿を見送った。みんなもひさびさの開けた場所に背伸びをしている。しかし問題はここからだ、どこかにあるという村を探さなくてはならない。彼らの話では近くにあるという話だったが。
辺りを見渡しているといつの間にか空を飛んでいたピヨが降りてきた。
「ねえねえ、あっちのほうにおうちがたくさん見えたよ」
早速の朗報だ。俺たちはピヨに案内され村を目指し歩き出した。