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第395話 深緑のささやき、アルラウネ 3 ♥

助けに来たシャリンが木の根に捕らわれてしまった(このエピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)

 振りかぶった剣は女の肩をかすめ後ろにあった木に突き刺さった。女がにんまりと笑う。


「ふふふやっぱり無理みたいね、一人では何もできない臆病者。そのくせ一人の男であることを主張する。でも私好きよ、あんたみたいな軟弱なやつが一生懸命腰振ってるのを見るの。滑稽で笑えるわー」


 なんとでも言ってくれ。自分でだってわかっている。俺は情けない男だ。いつも女の子に守られて、自分が先陣を切ることは無い。剣の腕も無ければなにか特別な力があるわけでもない。そんな俺にできることは仲間を信じることだけだ。こうして時間を稼いでいる間にもきっとシャリンの後から追いかけてきているだろう。


 背後で俺とシャリンを呼ぶ声が聞こえた。それと同時に目の前の女の顔色が変わる。


「ぐあああ、きさまあぁぁ!!」


 血相を変え牙をむき出しにして襲い掛かってきた。俺は刺さっていた剣を抜き女の首へ滑らせた。考えたわけではない。咄嗟(とっさ)に手が動いたのだ。刃は皮膚裂き樹液のような青い血がながれだす。振り返ると木の根が赤く燃え上がっていた。エレナーゼが俺を呼んでいる。


「なにしてるの早くそいつから離れて!」

「逃がすかあぁ!」


 女はさきほどの美貌など嘘のように鬼の形相へと変わり飛び掛ってきた。そこへ横からロビスオーメンの女が奇襲を仕掛け押し倒す。


「さあ早くズボンをはいて逃げましょう」


 もう一人の男が俺のズボンをこちらへ放り投げてくれた。すぐに服を着て剣をしまう。断末魔のような金切り声を聞きながらその場を後にした。


 キャンプへと戻り息を整える。とりあえずシャリンが無事そうなのでよかった。


「みんなありがとう、あと少しで殺されるところだった」

「まったくよ、なんで一人で行ったの?!」


 怒るニーナに俺は事情を説明した。


「ふーん、あんたを呼ぶ声ね。ってかあの女みたいな草はなんだったの?」


 彼女の問いにロビスオーメンの男が答える。


「あれはアルラウネ。男を誘っては食らう恐ろしい化け物だ。木の根を操って攻撃してくるゆえ討伐は容易ではない。俺も何度か出くわしたが危険な戦いだった」


 そんな危険なものがまだ潜んでいたなんて。触手の花に男を誘う花、正直動物より恐ろしいのではないだろうか。ふとシャリンと目が合った。あんな格好を見られてなんだか気まずい。


「えーっとありがとうな、その、ごめんななんか変なことになっていて」

「あっああ、お前が無事ならそれでいい」


 嫌な沈黙……。まさか花と交わろうとしていたところを見られるなんて。思い出しても恥ずかしすぎる。節操の無いやつだと思われているに違いない。


「おっお前はその……よく変なのに絡まれるな」


 俺が声をかける前に彼女は笑ってそう言った。


「でも俺の痴態を見たのはシャリンだけでよかった、なんてな、ハハハ」


 恥ずかしくなってそう答えると彼女も照れくさそうに目線をそらした。

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