第392話 出口への案内人
ロビスオーメンが立ち去った後、今まで出会った男たちについて雑談した
密林から姿を現したのはカルベネを崖から突き落とした女とその小隊をまとめていたリーダーの男だ。一瞬にして場に緊張が走る。俺より先に男が口を開いた。
「夜分遅くにすまない。俺たちは戦いに来たのではない。なにかあなたたちの役に立てばと思い来たのだ」
そういうことか。ならば一緒に密林を抜ける手伝いをしてもらおう。和解した後だ、もう騙すなど卑劣なことはしないだろう。それに彼らのほうが道に詳しいはずだ。俺は二人に自分たちが旅人であることを伝えた。
「ふむなるほど密林を抜けるのか。それならばたやすい。護衛にあたろう」
「あの、ところでなんで来てくれたんだ?ボスの命令か?」
「そうだな、それもある。だが俺たちからも恩がある。こいつもそうだ」
そう言って男は一緒に来た女を指した。
「私は崖に落ちたときそこの女に助けてもらった」
そこの女というのはカルベネだろう。当の本人はなんだか嫌そうな顔をしている。ふとカルベネが崖から落ちたときのセシリアを思い出した。まさか彼女があそこまで取り乱すとは思っていなかった。
「セシリアが心配してたっけな、カルベネが落ちた……」
「うるさい!そこまで、もう話は終わり!さっさと寝るわよ」
思い出して恥ずかしくなったのかセシリアは俺の話を遮ると寝る支度を始めた。
「え?私がなに?もしかして心配してくれていたの?ええーうれピー」
ふざけているカルベネの肩ほ小突くとセシリアは少しうれしそうにしながら横になった。初めは堅苦しかった彼女も旅をしていくうちに冗談を楽しむことができるようになったみたいだ。正反対の二人だからこそお互いに与える影響は大きいのだろう。
翌朝、俺たちは二人のロビスオーメンに連れられ出発した。エレナーゼの体調が気がかりだったが、彼女が大丈夫だと言ったので進むことにした。地理に詳しいものがガイドにつけばもう道に迷うことも無いだろう。あとは全員が乗れる船を見つけるだけだ。しかしこれが一番大変なのだ。
「ここらへんに大きな船がある町か村はないか?」
俺の質問に一歩先を歩いていたリーダーの男が振り返る。
「残念だがここいらにそういう町はない。俺が見た限りではな」
まあ予想はできていた、仕方がないことだ。人里があるだけでもありがたい場所なのだ。しかしここまで来てあきらめるわけにはいかない。どこかに解決策はあるはずだ。
「そういえばここより先、密林を抜けたところに村があったはずだ。俺たちは行けないがあなたたちなら行って話を聞けるだろう」
それを聞いて少し希望がでてきた。そうだそこの住人に話を聞いていけばどこかに見つかるはずだ。直通でなくとも島を渡りながらもう一つの大陸へ行ければよいのだ。まだ道のりは長そうだが二分されたもう一つの世界とはどのような場所なのか、今から楽しみだ。今までは必死すぎて感じなかったが、だんだんとこの旅に好奇心というものを見出だせるようになってきた。