第391話 ロクでもない男たち
エレナーゼが負けを認めたことにより自らも過ちを認めたループ
真摯に頭を下げるボスを仲間のロビスオーメンたちは心配そうに見つめている。なにがともあれだれも命を落とすことなく戦いが終わってよかった。だがエレナーゼはかなり深手を負ってしまった。先ほどまでしっかりと話をしていたが、それで限界だったようで今はぐったりとしている。傷から流れ出た血が痛々しく首筋を赤く染め上げている。顔も青白くとても大丈夫だとはいえない。
すぐさま仲間の元へ運びポリーンとセシリアに手当てをしてもらった。緊張が抜けたのかエレナーゼはそのまま眠ってしまった。一方、ループはというと何も言わず仲間を引き連れ密林の奥へと姿を消した。きっとこれで彼も目が覚めただろう。これからは友人や家族を大切に、しっかりと長としての責任を負って生きてほしい。
エレナーゼを取り囲む俺たちの元へレオナを先頭にアマゾネスたちがやってきた。
「すばらしい戦いだった。だが相当深い傷を負っているみたいだな。どうだ村に戻って休んでいくか?」
本当ならすぐにでもそうしたいがあいにく俺は戻りたくは無い。なるべく長居はしたくないのだ。シャリンも同じような顔をしている。
「ありがとうございます、でも大丈夫です。もしよければ薬を少し分けてもらえませんか?」
俺は丁寧に断り、物資だけ頂くことにした。レオナは残念だと眉をひそめたがそれ以上言うことはなかった。狼女はシャリンに戻ってこないかと再び口説いている。
その夜俺たちは開けた焼け野原で野宿をすることにした。ちょうど木も無く風通りが良いので居心地がいい。虫や蛇も寄ってこない。ひと段落したところでエレナーゼが目を覚ました。
「あっ大丈夫か?首はまだ痛いか?」
「うーん、あらもう夜になってる。人面犬たちは帰ったみたいねよかった。傷はまだ少し痛むわね、あいつ本気で噛みやがって」
彼女は首をさすりながら焚き火のそばにやってきた。その姿を見てフィリアナに笑顔が戻る。
「ああよかった、ぐったりされていたから心配していたのですよ。それにしてもいつも冷静なエレナーゼさんがあんなに怒るなんて、わたくしびっくりしました」
「だれだって怒るわよ、あんなむかつく態度とられたら」
隣でニーナが腕くみしながら答える。正直俺もびっくりした。まさか怒るとあんなに怖いなんて。それに魔法の恐ろしさも知った。ポリーンもうんうん、とうなずいている。
「はい、私もびっくりしました。ヴェロニカさんはいつもそんな感じなんで驚きませんでしたが、でもかっこよかったです」
ここでニーナがはぁとため息をついた。
「なーんでこう、ロクな男に出会わないんだろう。こんだけ長い間旅してるのに」
「あら、カルベネさんの彼は結構ハンサムでしたよねえ?それにラミアたちから救ってくれたナーガのおじさんも」
それを聞いてニーナが少し顔を赤くした。反対にカルベネは目を細め嫌そうな顔をする。
「ま、まあね、あいつはなかなかよかったわ。あの剣術、いつか習いたいと思うし」
「次私の彼なんて言ったら姉さんでも容赦しないからな」
俺としてはフィリアナに告白してきたケンタウロスの男もなかなか潔くてかっこいいと思ったが。すると寝る前の談笑を楽しむ俺たちの前に暗闇から二人のロビスオーメンが姿を現した。