第384話 密林の征服者、ロビスオーメン族 2
ロビスオーメンのボスと対峙した
この人面犬たちは自らをロビスオーメンと名乗った。彼らのボスとエレナーゼの間に緊張感が漂う。女好きというのは一目承前だがまさかエレナーゼに目を向けるとは。これはややこしいことになった。
「なにを言っているのかわからないわ。もういいかしら時間の無駄なの」
引き返そうとする彼女を囲うようにロビスオーメンたちが退路を塞ぐ。
「逃がすつもりは無いのね、傲慢な王。こんなやつについて行くあなたたちも馬鹿。わからない?こんなに勢力を広げて人間たちが黙ってない。いつか破滅する」
彼女の言うとおりだ。今まで隠れて暮らしていたのはきっとそのためだろう。残念ながら人間という種族は自分たちと違うものを嫌う。この先どんな目に合うかわからない。それかその前にアマゾネスたちにやられてしまうか。なににせよ平和は望めないだろう。
ようやくボスは岩から降りてきた。体は他のやつと比べ少し大きいように見えるがまだ若く血気盛んと言った様子だ。
「ハハハ、面白い女だ。今まで俺にそんな口を利いたのは母親ぐらいかな。いいぞ俺は強気な女が大好きだ、屈服しがいがある」
「なにを言っているの……。こっちへこないで」
エレナーゼへ悠々と歩みを進めるロビスオーメンのボス。そこへセシリアが立ちはだかる。
「さがりなさい、気味の悪い人面犬。勘違いしてるようだから教えてあげるけど彼女はスフィンクス、あんたに尻尾を振ってる馬鹿犬とは違うの」
「ほーう、この群れの女はみんな強気だな。だが俺は女とは戦わないんだ。お前たちだって嫌だろう。そうだそこの男、お前が俺と戦え。そして俺が勝ったら群れごといただこう」
突然なにを言い出すかと思えばまた無茶なことを。こいつはそうやってハーレムを築いたのか?彼らの習性はわからないが素直にうなずくことなどできるわけがない。なんというか以前出会ったハンターハーピーの長、キーガに似ている気がする。だが彼は同種族でさえ愛さなかった。こいつもそうなのだろうか。
「どうやらここで一線交えるしかないようですね」
「本気で言ってるの?仕方ない、退路を切り開くわよ!」
フィリアナとニーナの会話が聞こえる。戦いの空気を察したのか、周囲を取り囲んでいたロビスオーメンたちも殺気立っている。
「まさか逃げられると思っているのか、残念だ。おいあの猫女は殺すなよ」
ボスは隣で待機していた部下にそうささやく。どうやらエレナーゼのことは手放す気がないようだ。戦いが始まろうとしたそのとき彼女が一人、前へでた。
「上等じゃない、みんなは下がってて。要するにこの馬鹿をどうにかすればいいんでしょ。もう二度と尾を高くして歩けないようにしてやる」
「ちょっと待てエレナーゼそいつは」
俺がすべて言葉を言い終わる前に、エレナーゼはフィールドの中央へと歩いていってしまった。
「わかってる、邪魔はさせないで。一生消えない灸をすえてあげる」
「まさか自分から来るなんて、やはりお前は面白い女だ。いいぞ受けて立つ。心配するな手加減はするさ」
まあこうなったほうが好都合かもしれない。敵は彼女が魔法を使えることを知らないのだ。俺は火の粉が降りかからないよう後ろへ下がった。