第383話 密林の征服者、ロビスオーメン族 1
敵の誘いに乗りボスに会うことにしたエレナーゼ
俺たちは仕方なく人面犬たちのあとについて行くことにした。
「なあ一体なんの目的でこんなことしてるんだ。別に俺たちなんて会う必要ないだろう。それにお前たちの仲間はどれくらいいるんだ」
俺の質問に前を歩いていたリーダーの男は眉をひそめた。
「いろいろうるさいやつだ。ボスはここ一帯を自分たちの領地にするべく動いていらっしゃる」
「今の邪魔者はアマゾネスたちってことね。それで私たちからなにか情報を聞き出そうとしている。違う?」
エレナーゼがさらりと口を挟む。それに男は短くため息をついた。
「そうだ、邪魔者はすべて消し去ってきた。今の俺たちを止められる者はいない。以前俺たちは密林の奥地に引きこもりひっそりと暮らしてきた。だが世代が代わり今の新しいボスは隠れながらこそこそと生活するのを嫌った」
なるほど今まで彼らは人前に出ることなく身を隠して小規模で暮らしてきていた。だが新しくボスの座についたやつはそれを良しとせず傍若無人な振る舞いをしているということか。
「そんな人についているわけ?」
「そうだ、反対する者もいたがボスはだれよりも強い。恐ろしい方だが力はある」
エレナーゼの質問に彼はそう答えた。力による抑制か、それともその力で信仰を集めているのか。進むごとに手に汗がにじむ。
しばらく進むと密林の開けた場所へと出た。中央の大きな岩の上に鎮座している若い人面犬の男、彼がボスだろう。その周囲を何十人という仲間たちが囲っている。ボスは岩の上に若い女をはべらせいかにもといった様子だ。
「ボス、連れてまいりました。ここを通りかかった者たちです」
彼は岩の上からこちらをじろりと観察し、ニヤリと笑った。
「ふうん、なるほどなぁ。ご苦労、うわさどおり女ばかり、なるほどあの女獣人どもが見逃したわけだ。あいつらとはうまくやったのか?」
ボスからの質問に俺たちは黙った。もし仲良くしていた、ましてや恋心を抱いていたなど知られれば悪用されてしまうに決まっている。
「ふーんそうか、結構仲良くやっていたみたいだな。ん、違うか?お前たちを人質にしてもいいが……」
「待ってくれ俺たちは関係ない、取引したんだ。もう二度と戻ってこない代わりに見逃すと。ただそれだけだ。俺たちはだれの縄張りを侵略するつもりもないし、戦いたくも無い」
それを聞いてボスはなにやら考え事をしている。
「要するに見逃して欲しいというわけだ。うーむ、そうだなぁ」
ボスは品定めをするように視線を動かす。そしてそれはエレナーゼで止まった。
「聞いてはいたが、人面猫の女がいると。思ったよりきれいな顔をしているな、気に入ったぞ、たまには猫も悪くない。お前を俺の女にしてやろう、他のやつらは見逃してやる」
思わず聞き返しそうになってしまった。なんだって、エレナーゼを恋人にする?種族が違うのにいいのか?それとも別の種族でさえ征服するという傲慢さからか。言われた当の本人は豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「なんですって、私の聞き間違えかしら。犬の言葉はわからなくて」
「俺たちは犬ではないロビスオーメンだ」